8話 嘘から出たピンチ

「ユリヤ嬢」

「また来たのですか?」

「ああ。今日も会いに来てやったぞ」

「ご苦労さまです」

「それで、明日は空いているか?」

「残念ながら、明日からはしばらく忙しいので会えませんわ」

「そうか。だが毎日来てやるぞ」

「来なくて結構ですよ」

「遠慮するな」

「してませんってば」

「それよりも今日は何をしていたのだ?」

「友達と遊んでいました」

「ほう、男か?」

「女の子です」

「そうか、安心した」

「は?」

「なんでもない。それより次はいつ会う?」

「しばらくは無理です」

「そうか。ならば手紙を書くから返事をくれ」

「手紙?」

「そうだ。直接会いに行けぬ代わりにな」

「面倒なのでいりません」

「なに? 俺の手紙が受け取れんというのか?」

「そうじゃ無くて純粋に面倒なだけです」

「俺のことが嫌いなのか?」

「好きとか嫌い以前に興味がないです」

「ぐっ……なかなか手強い相手だな」

「それでは私はもう行きますね」

「待ってくれ!」

「まだ何か?」

「最後に一つだけ教えてくれ」

「なんでしょうか?」

「お前の恋人というのは誰なんだ?」

「秘密と言ったはずですが?」

「頼む。これだけはどうしても知りたいんだ」

「……わかりました」

「誰なんだ?」

「……明日合わせてあげます」

「本当か!?」

「ただし、絶対誰にも言わないと約束してください」

「わかった。このキール・エンバニアの名にかけて誓おう」

「はい。それではまた明日」

「楽しみにしている」


こうしてキールはユリヤの元を去っていく。


 その後ユリヤは自室で非常に困っていた。


「どうしよう。恋人なんて出任せで私には恋人はいない。そもそも好きな人自体がキールを撒くための嘘だ。こうなったら友達に恋人のフリをしてもらうしか……しょうがない。リリーに頼もう」


私はリリーに男装して貰って恋人のフリをしてもらうことにした。


「リリーお願いがあるんだけど」

「はい。何でしょうか?」

「実は――」


私は事情を説明する。

するとリリーは


「任せてください。仮に嘘でもユリヤ様の恋人になれるなんて私幸せです」

「ありがとう。リリー」


 こうしてリリーに男装をしてもらって恋人のフリをしてもらう作戦が始まった。

あとは明日を待つばかりだ。

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