第18話 彼女が笑う

七海ちゃんの可愛い笑顔をみること。


それが、俺の唯一の救いになる。

今まで俺は、本当に目的もなく家で文句ばかり言って、妹とも仲がよくない、それは当然だと思う。

だって家族の顔を見たら、文句しか言わない、「うるぜー」とか「やかましい」とか、声をかけられても何も言わないこともあるから。

そんな俺が七海ちゃんと再会して、付き合うようになって恋人になってもらってなんて信じられない。


一番、家族が、その変化の影響を、受けていると思う。

特に母さんと妹だと思う。


どうしようもない息子が、最近は、良く話すことがあるからだ。

朝も、母親から声を掛けられる前に、起きてくるから。

宿題もしているし、学校の成績も、すごく上がっているんだから。


この前、妹から「兄ちゃん、最近、変わってときたね」言われたことだ。

妹から声を掛けられるなんて何年ぶりだろう。

俺が、話しかけても妹は「フンッ」って言うだけだったのに。


彼女の力は偉大だ

いや、七海ちゃんの力は絶大だ。


七海ちゃんのためなら頑張れる


七海ちゃんからラインが届いた

ラインには、今度の休みに俺の家に行って良いかということを書いてあった。

もちろん俺はオッケーと書いた。


日曜日に七海ちゃんが来るので、俺の部屋を掃除している。

ななみ姫を迎えるためにも、綺麗にしておかねば。


俺は朝から自分の部屋を掃除していたが、どうして当日に掃除をしたのかと言うと、日がたつと戻るからだ。

掃除が終わったら、ななみ姫の家に迎えに行く。

そして、また、戻ってきて、ななみ姫を俺の家に入ってもらう。

母親が「いらっししゃい、七海ちゃん」と出迎えてくれた。

「お邪魔します、おばちゃん」と俺の母親を子供のころのように呼ぶ。


俺たちは幼馴染でよく遊んでいたりしたので、もう呼び方を変えると呼びにくい。

以前、俺は七海ちゃんのことを、ななみと呼びたかったんだけど、なんだか呼びずらい。

七海ちゃんも、俺のことを小さいことから悠くんと呼んでいたので、いまさら悠とは言いにくいと言われてしまった。

俺は、悠でもいいと思ったんだけど。

理想としては呼び捨てが良いと思ったんだけど、しょうがない。


七海ちゃんを家にあがってもらい、リビングでコーヒーを飲んでいる。

そうすると母親が、「そういえば、この前、2人で海に行ったんだって」

七海ちゃん「はい、楽しかったです」

母親「その時に七海ちゃんの水着が可愛かったって悠が言っていたわよ」

七海ちゃんは、それを聞いて顔を赤くしながら隣に座る俺に「悠くん、おばちゃんにいったの?」

「うん、だって強引に聞きだされて」と本当のことを言った。

母親「それでね、七海ちゃん、胸が大きいから、どうだったって聞いたらね、すごくよかったって言っていたわよ、何が良かったの?」

「えー悠くん、そんなことまで行ったの?」

「いや、俺、そこまで行ってない、母ちゃんからカマかけられているんじゃない?」

七海ちゃん「えーそうなんですか」

なんだか、海で何かあったのか、少し理解できたみたいだ。


でも、母親が「よかった」

「えっ」と俺

「あんたたちが仲良くて…」


「この前ね、七海ちゃんのお母さんが遊びに来たんだよ」

七海ちゃん「そうなんですか…」

「お母さんは、七海ちゃんのことを、とても心配していたよ」

「そうですか…」

「お母さんはね、七海ちゃんは精神的に弱い部分があるから、とても心配だって」

七海ちゃん「…そうみたいです…… 子供のころ、お父さんの転勤で北海道に引っ越してから、悠くんがいないことに不安に駆られてしまって、泣いてばかりいたんです」

七海ちゃん、うつむいて膝を見ている

「だから、お父さんは罪悪感が悩まされるようになったんです。でもやっと、こちらに帰ってこれるようになって、早く悠くんに会いたかったんですけど、悠くんに彼女ができているかもしれないと考えたら、会うのが怖くなってしまって……

この家にも何回も来たんですけど…… 呼び鈴を押すのが怖くて……

そんな時に部活に行くと悠くんらしき人がいたんです。もうそれが嬉しくて、嬉しくて、すぐに私から声をかけちゃたんです」


七海ちゃんの声が、少し沈んでいる。


「七海ちゃんのお母さんがね、お願いに来たの」

「えっ、お願い?」

「うちの悠人と七海ちゃんを先将来でいいんで、気持ちが変わらなかったら結婚させてもらうませんかって」

おれは、それを聞いて、嬉しいやら、困惑気味だ。

七海ちゃんは声がでない顔をしている、しばらくは唖然としていたが、急に目に涙があふれていき、あふれた涙が、目頭から落ち始めた。

大粒の涙が落ちていく。

七海ちゃんは出て顔を覆った。

しばらくは、七海ちゃんは顔から手を離すことができなかった。

俺は七海ちゃんにハンカチをポケットから取り出して、七海ちゃんに渡す。

渡したハンカチで涙を拭きながら、やっと顔を上げてくれた。

「それで、おばちゃんは、どうなんですか? 私なんかで良いんですか」


「息子がこれだけ、好いているんだよ、そんな2人を引き離すなんてできないよ。

わかるだろ? 最近は悠人も、頑張っているのは、家族全員が認めているよ、それはすべて七海ちゃんのおかげだよ。

今まで悠人と言ったらね、ぐーたらで文句ばかりで、朝は起きてこないし、やっと学校に行かせていたんだよ。悠人が学校にいくと、せいせいした気分だったね。

されが最近の変わりようったらないね。そこは七海ちゃん、わかっているだろ?」


「はい、私のために、朝も時間の前に迎えに来てくれます。帰りもクラスが違うのに待ってくれているんです。

そして面白いことを言って私を笑わせてくれるんです」

「へー、悠人がね~」俺の方が顔が赤くなった。

「でも、ちょっと最近、エッチですけど」と母親の前で言われてしまう。

「男は、それくらいがいいと思うよ。七海ちゃんさえ、嫌じゃなければ」と俺を母親は、怒ったような顔をしてにらむ。

「悠人、少しは自重しなさいよ、七海ちゃんに嫌われるよ」

「うん」

「あっ、私は全然、大丈夫です、だって悠くんは強引に迫ることはしませんから」

と七海ちゃん、暴露する。

七海ちゃん、言葉がちょっと……


何を強引以外にしたのか、怪しむじゃない

七海ちゃん、いまさら自分の言葉に気がついて顔を赤くする。


「こんな悠人でも、七海ちゃん、いいかい?」

おれは「………………」

七海ちゃんは「こんな私で良いですか?」逆に七海ちゃんが俺と母親の顔を見て聞き返す。


「悠人は、どうだい?」

「俺は七海ちゃんと先将来も一緒に歩みたい」

それを聞いた七海ちゃんは、目を大きく開けてパアーと明るい顔をしている。

「じゃ、今は何も正式には交わさないけど、内密に婚約と言うことにするよ。でもいいかい、2人に言っておくよ、まだ子供を作るのは早いからね」

それを聞いて七海ちゃんも俺も顔が赤くなった。

特に七海ちゃんは顔が真っ赤だ。

俺もそうだが…。


「そして学生なんだから、成績が落ちたり、変なことをしたら、婚約解消だよ」

七海ちゃん「はい、わかりました」

俺「うん、わかったよ」


まさか、こんなにも話が急展開するなんて


「七海ちゃんのお母さんにも電話しておくからね。2人とも頑張るんだよ、大学行くのも良いし、2人の生きていく道を見つける方法も色々あるんだからね」

「うん」

「はい」

「じゃ、2人とも悠人に部屋に行って勉強でもしておいて、変なことするんじゃないよ。

今は学生なんだから、勉強して社会に出ることを考えるんだよ

婚約は頑張れるように、あくまでも仮だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る