第11話 彼女の想い

俺が家に帰宅すると、母ちゃんと妹がリビングにいた。


「ただいま」と俺が言うと、お母さんが「そういえば、向こうのお母さんが今日、電話してくれたわよ」


「あんたも、危ないところだったみたいじゃない」


「聞いたんだ」


「事件が事件だけに、黙っておくわけにはいかなくなったからと言って電話をもらったわ」


「そう…なんだ」


「ちょっと、座ってコーヒーでも飲まない」


「うん、わかった」


俺がイスに腰かけると、すぐに温かいコーヒーが出てきた。


「七海ちゃん、大丈夫なの」


「うん、今日も学校、行けたし」


「そう…」


「お母さんも知っておく必要があるから、話してくれる?」


妹をチラッと見たが、動く様子はなかったので諦めて話すことにした。


「最近、俺たちは2人で帰ることにしていたんだけど、他の日は七海ちゃんが校門で待っていたら、しつこく交際を申し込んでいた男に手を引っ張られて連れて行かれたみたい。


そこで俺が一生懸命に探しまくって、やっと七海ちゃんを見つけたんだ。


そして男と格闘することになったんだけど、殴られたんだけど、七海ちゃんのお父さんが俺を見つけて駆けつけて助けてくれたんだ。


そして警察を呼んだから、遅くなったんだ 」


「その男が、ナイフを持っていたって聞いたけど」


「うん、それは今日、聞いた、その時にはナイフは出していなかったから、わからなかった」


「その男に殴られて顔が腫れ上がっちゃった」


「そう、七海ちゃんを守ったナイトだね」


「でも自分の命も大切にしなさいよ」


「うん」


「でも、お兄ちゃんて、すごいんだね」


「そうだね、昔から悠人は、七海ちゃんの事となると一生懸命だったから、七海ちゃんが引っ越していったから忘れてたわ。 

本当に、あんたって言う人は七海ちゃんのことになったら周りが見えなくなるんだから」


「あんたが小さい頃、七海ちゃんが足を滑らせて川に落ちて、溺れそうになったときに、あんたが飛び込んで、七海ちゃんを助けようとしたけど、あんたの方が溺れたと聞いて、びっくりしたと言うよりも大笑いしたわ」


たまたま、近くに大人がいて助けてくれたけど、七海ちゃんは、私が悪いのって泣くばかりだから、あなた、そのあと、高熱だして寝込むし」


「えっ、そんなことがあったの」

「あったわよ」


「あの時、溺れて気絶してしまった、あんたを助けた大人の人が、いなかったら、どうなっていたやら…」


「だから今度のことで、少しは七海ちゃんに恩返しできたらいいね」


「兄ちゃん、でも、兄ちゃんが懸命に七海ちゃんを探してくれたから、七海ちゃん助かったんだし、私も、ほんとに嬉しい。 

七海ちゃんは、私にとっても、もう1人のお姉さんみたいなもんだから…

兄貴として尊敬するしてあげるよ」


と妹の陽菜が顔を少し赤らめながら背中を思いっきり叩いた。


「バシッ」凄い音がした。


そこに姉ちゃんが帰ってきた。


姉ちゃんも参加して今の話をもう一度、お母さんがが繰り返していたが、すごいぞ悠人と言ってくれた。


家族が俺を見る目が変わったような気がした。


俺は2階にある自分の部屋に上がって、今日はもう宿題を済ませてきたので、定期試験の勉強をすることにした。


今日の宿題の事でも変化がわかったんだけど、今までわからなかったことも、わかりだして勉強が楽しくなったというか、そんな気がするんだよね。


気のせいかもしれないけど


そして今日は定期試験の日だ。


いつも通りに家を出て、迎えに行くことにした。

家につくと、ちょっと早かったので公園のブランコに座って予習をすることにした。


どれぐらい経ったのかわからないけど、目の前にある本に集中していたら、本の先に靴が見えた。


顔を上げたら、七海ちゃんがいた。


「もう、迎えに来ないと思ったら」


「えっ、もうそんな時間」


「そうだよ」


俺は腕にはめている時計を見たら、約束の時間を5分を過ぎていた。


「ごめん、ごめん、ちょっと早く来すぎたから、今日のテストの予習をしていたんだ」


「凄い集中力だね、私が、ここまで来てやっと気づくなんて」


「いやー、たまたまだよ」


「これが本じゃなくて、七海ちゃんの水着写真だったら、もっと集中力がすごいよ」


「もう悠くんたらエッチなんだから、じゃぁ試験が終わったらプールか海に行かない」


「あっ、いいね」


「私の水着姿見て悩殺してあげるから」


七海ちゃんが、悩殺と思われるポーズをしたので


「ハハハ」


「そこ…笑うところじゃない」とポーズをとったのが恥ずかしかったのか顔を赤くしている。


「じゃぁ水着、見るために頑張らないと」


「うん、頑張って」


「そうしたら悩殺してあげる」と、今度はポーズをしなかったけど、また言ってきた。


「七海ちゃんは、オッパイが大きいからスタイルがいいから楽しみだ」と俺が言うと


「胸は、余計だよ」


それから俺たちは学校に行って、定期試験を受けた。


結果はすぐ出た。


放課後、二人で帰るときに、見せ合いっこした。


七海ちゃんの成績は、学年3位だった。


「七海ちゃん、すごい」と俺が言うと

「悠くんだって、すごいじゃない」


そう俺の成績は、俺たち1年生が、362人いるんだが、今までは361位だったが、198位まで上がっている。


「162人も抜いたんだね」


「七海ちゃんには、かなわないなぁ、今度、勉強、教えてよ」


「うん、もちろん私でよければ……七海先生と呼びなさい」と冗談を言って笑わせてくれた。


今日は定期試験で早く授業が終わったので、、「七海ちゃん、俺の家にくる?」と言ってみた。


そうしたら、「いいの?」


「もちろん」


「じぁ、行く、その前に私の家に寄ってバックを置いていくね」


「うん、そうしよう」


そして俺たちは、七海ちゃんの家によってバックを置いて、おばさんに断って俺の家に来た。


俺が家の鍵を開けて入っていくと、中にはお母さんががリビングにいた。


「おばちゃん、お邪魔します」


「七海ちゃん、いらっしゃい」


そして俺たちはリビングに並んで座って、お母さんがが出してくれたコーヒーをアイスコーヒーを飲んでいる。


母ちゃんがコーヒーを出してくれて、七海ちゃんは、お礼を言っている。


そうすると「あの…おばちゃん、この前は、悠人くんに本当にお世話になりました」


「この前の事かい?」


「はい、あの時に悠人くんが私を探してくれなければ……」


「全部、言わなくてもわかっているよ」


それを聞いた七海ちゃんは涙をポロポロ流し始めた。


「私のために本当にすいませんでした」


俺の母ちゃんは七海ちゃんの両手を握って「七海ちゃんが悪いわけじゃないよ、こんな、どうしようもない息子だけど、七海ちゃんの役に立てば」


なんだか、すごい言われようだけど


七海ちゃんはハンカチを出して涙を吹きながら、本当にありがとうございましたと、もう一度繰り返した。


「さぁ、悠人、あんたの部屋に連れて行っておあげ」


「あっ、七海ちゃん、これからも悠人をお願いね」


と母ちゃんが言ったので、七海ちゃんは余計に涙を流したて、こちらこそ、よろしくお願いします、と小さな声で。


俺たちは2階に上がっていった。


俺の部屋に入ってからも、おれはベッドに座って、七海ちゃんは床に腰を下ろして、しばらく涙を流していた。


もちろん俺も七海ちゃんの横に移動して肩を抱いている。


「七海ちゃん、本当に勇気が要ることだったね」


「ううん、悠くんのお母さんだもの、しっかり話しておかなくちゃと思ったの」


「ありがと、七海ちゃん」


七海ちゃんは、やっと涙が止まった。


2人で床に座っていたが、体を寄せ合って、なんとなく雰囲気が盛り上がってきたので、七海ちゃんが俺に口にキスしてくれた。


そこで音もなく扉が開いた


「あ〜お兄ちゃんたら、いやらしいんだ」と陽菜に見られてしまった。


俺たちは顔を真っ赤にした。


陽菜は、あまり気にすることもなく、中に入ってきて、七海ちゃん、大変だったね、言って、俺を押しのけて横に座った。


七海ちゃんの反対側が開いているのに!!


やっぱり妹は…怖い

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