第10話 彼女のショックの大きさ

俺は、七海ちゃんと友達のマリちゃんと別れて、クラスが違うので自分の教室に入った。


教室に入ると、もうタケシが来て自分の机の上に座っていた。


教室に入ると、みんなが俺の腫れている顔を見る。


「タケシ、早いなぁ」


「そーゆー、お前は、顔色悪いぞ、どこじゃないいくらい、その顔、どうしたんだ?」


「あー、これはな、妹に殴られた」


「なんだ、喧嘩でもしたのか」


「そうなんだ」


「兄ちゃんも大変だな」


「まぁな、いろいろあってな」


「お前、アザもひどいが、顔色もさえないぞ」


「いや、実は昨日寝ていなくて」


「なんだ夜通しゲームでもしていたのかよ」


「それとも、あれか?」

「なんだよ、アレって」


「もちろん決まっているだろ、アダルト系だよ」

「違うよ」


「なんだぁ残念」

「おまえ、何を期待してんだよ」

「そりゃわかってるだろ」


「全然、そんなことじゃないよ」


「そういえば、お前、今日、早く来たんだけど、ベランダで外を見ていたら七海ちゃんと、もう1人の女の子と歩いていたよな」


「あー、一緒に居たのは、七海ちゃんの友達」

「なんだ、そうか」


「俺が、二股しているのかと思ったよ」


「おまえなぁ、お前の想像力に呆れかえるよ。俺、今日は机に座っていると眠っているかもわからないからな、よろしく」



俺は今日1日は、頭がぼーっとして、授業に集中できなかったが、何とか居眠りしないで放課後を迎える。


ノートを見たら、時々、意味不明なことを書いていた。


放課後になったので、天文部の部室に顔を出すことにしたが、七海ちゃんは、もう部室に来ていた。


七海ちゃんは俺の顔を見るなり「今日は大丈夫だった?」


「眠くてたまらなかったよ」


「七海ちゃんは?」


「私も……でも寝なかったわよ」


「俺、今でも、ここで寝そう」と言って机に伏せた。


「もう、だらしないわね」と言って、机の下で見えないように手を握ってくれた。


「どう、これで、目が覚めた?」

「うん…」


俺は七海ちゃんが握ってくれた、手を握り返した。

今日は部活が早く終了すると言う事だったので、俺たちは2人して帰ることにした。


もう、今日はキツイ


彼女の家に向かって歩きながら、できるだけ長く一緒にいるために、ゆっくり時間が過ぎればいいと思う。


でも、そんな時間が終わりを告げようとしてくる。

それは、もう彼女の家についたから。


彼女は少しモジモジしながら、「ちょっと上がっていかない」と。


「そうだね、少し、お邪魔しようかな」


扉を開けて彼女が元気よく「ただいま」と言うと七海ちゃんのお母さんが、お帰りなさいと出迎えてくれた。


「悠くんもいらっしゃい」


「おばさん、こんにちは、お邪魔します」


「今日は2人とも大丈夫だった?」


「もう、眠くて眠くて大変だったわよ」


「居眠りしたんじゃないでしょうね?」


「わたし、何とか我慢したわよ、悠くんは眠ったそうだけど」


俺は、七海ちゃんのおばさんから笑われてしまった。


「でも、それだけ悠くんが大変だったと言う事よ、七海」


「…ほんと、悠くんには感謝してもしきれないくらい」


「悠くん、ちょっと顔見せてごらん」とおばさんが言うので、顔の腫れを見せた。


「少しおさまってきたけど、まだまだね、でも悠くん勲章だね」


「はい、自分でもそう思います。俺が、七海ちゃんを見つけることができて良かったと思います」


「本当ね」


「そして、その後、おじさんが来てくれたことにも」


「主人も言っていたけど、たまたま昔の悠くんが焦って走っていったから、何か起きたのかと思って追いかけたそうよ。

だから悠くんの姿を見つけることができてよかったって言ってたわ。 

主人も悠くんの姿を見つけることができなかったらと思うと怖いって言ってたわ」


「本当におじさんには、感謝してます」


「何をいうの、それを言うならこちらの方よ」


「あなたには、七海を助けてくれて本当にありがとうと何度も伝えたいわ」


七海ちゃんが俺の横に来て手を握ってくれた。


それを、おばさんが見ていたけど、俺も手を握り返した。


「あまり、仲が良いのはいいけど、節度が守るのよ」


「うん」

「はい」

   と2人して答えた


「じゃぁ私は買い物に行ってくるから、七海の部屋にでも行ったら」


「はい」


「あっ、じゃあ、ちょっと待って悠くん、制服から着替えてくるわ」


七海ちゃんだけ二階に上がっていき、俺は、しばらく1階のリビングに座っていたけど、七海ちゃん、どんな服着てくるのかな?。


おばさんが俺に近づいてきて、「悠人くんが、いてくれなけれ七海が殺されていたこともあったかもわからないのよ」


とドキっとするようなことを言われてきた。


「七海を襲っていた男はね、刃物を二本、持っていたんだって、警察が言ってきたわ」


「えっ、そうなんですか」


おばさんは、うなずいている。


「多分、七海が襲われたときに、抵抗したら脅すために刺したかもわからないの」


「以前から、七海に交際を申し込んでいたんだけど、七海は断っていたの、七海が言う通りにしならなければ、刺そと思っていたと自供したわ」


「そうなんですか」俺は強いショックを受けていた。


「だから、もし現場に行った悠人くんが刺された可能性もあるの、本当によかったわ、この事は七海には言わないでね」


「はい、もちろん」


七海ちゃんが着替えて降りてきた。


七海ちゃんは白いワンピースを着ていた。


以前、LINEの写真で送ってもらったワンピースだと思う。


「どうぞ悠くん」


俺は七海ちゃんについていきながら階段を上っていく


部屋に入ったら、「お母さんと何を話していたの」と聞いてきたので、学校で本当に居眠りしたかどうか聞かれたと説明した。


「ふふっ、そうなんだ」


「でも、先生の話なんか子守唄みたいだから、ほんとに椅子に座っているだけで眠ってしまうよ」


「先生に言っておくわ」


「それだけは、マジやめて」


「ふふっ」

「あははは」

俺たちは笑いあった。


七海ちゃんの部屋に入るのは昨日の事件の後、以来だ。

1日しか経っていない七海ちゃんの部屋なのに違った感じがする。


おばさんも心配するので裏切らないように扉は開けておいた。


俺は椅子の上に座って、七海ちゃんはベッドに座った。


改めて入った七海ちゃんの部屋は、公園の方向に向いて大きく窓がある。


カーテンはピンク系で可愛いクマが置いてある。


七海ちゃんが座っているベッドにもぬいぐるみが置いてある。


部屋ばかり見ていて、しゃべらないのも何なので、ななみちゃんに「今日の宿題しようよ」と言うと、


「もう、せっかく2人だけなのに」


「学生の本分は勉強だよ」なんて1番、俺に似つかわしくない言葉なんだ。


「は〜い、分りました」


そして2人してベッドの前にテーブルを置いて向かい合わせて宿題をすることにした。


「そういえば七海ちゃん、そのワンピースって」


「あっ、やっと気づいてくれたぁ~」


「うん、この前、悠くんが褒めてくれたワンピース」七海ちゃんは立ってワンピースを俺に見せてくれた。


「いいでしょ、お気に入りなんだ」


そして、くるっと回って見せてくれた。


俺が床に座っていたせいもあり、ワンピースの裾がひらひらと回って、めくれあがると、見えた。


それを七海ちゃんに言うか、迷ったけど、俺は元来、スケベだから、七海ちゃんが、どんな顔をするか、期待してしまった。


「今日はストライプなんだね」


それを聞いた七海ちゃんは、一瞬、ぽかんとしていたが、すぐに顔を真っ赤にして「もう、悠くんのエッチ」と言って、すぐに座ってしまった。


「残念、もう少し見ていたかったな」俺が言うと、七海ちゃんは、こちらをチラッと見て、「また今度ね」と顔を赤くしていた。


「さぁ早く勉強してしまいましょう」


「もうすぐ定期テストがあるね」


「嫌なことを思い出させてくれるわね」

「七海ちゃん、成績は?」


「優くんこそ、どうなの」

「俺は最後のほう」


「へー、そうなんだ」

「七海ちゃんは?」


「教えてあげない」

「え〜、どうして教えてよ」

「だめ」


なんて会話を繰り返していると、七海ちゃんのお母さんが帰ってきた。


七海ちゃんとの楽しい話も終わり、俺は宿題も終えたので、時間も夕食の時間だったので帰ることにした。


おばさんから夕食を食べていったらと言われたが、昨日も家で食べていないのでと言って今日は断って帰った。


「じゃぁ、七海ちゃん、またね」

「うん、また‥」


名残をしそうにしていたる。


俺も、そうだが、今日は体を引かれる思いを振り切りながら帰った。

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