第9話 彼女の事件のあと

俺は家に帰る途中、無性に腹が立ってきた。


七海ちゃんがショックなことが起きてしまったのが、自分のせいに感じてしまう。


態度をはっきりさせなかったからだと思い、あの時に、七海ちゃんに交際を申し込むことを突然思いついて、勢いで言ってしまった。


俺がもう少し、しっかりしていれば防げたかもわからないことだ。


七海ちゃんとは両親公認で付き合う宣言をしたが、逆に、その方が彼女が忘れてくれるかも知れない。


俺は七海ちゃんのことを幼馴染としてとらえていなかったが、会うまで忘れていたくらいだから。


七海ちゃんは引っ越してから、俺のことを、ずっと忘れていなかったみたい。


それを知っていて、俺も七海ちゃんと会ってから、こんな彼女がいたらな、って思っていたから。


これで俺たちは七海ちゃんの両親からは、付き合う宣言をして了承してもらったので、堂々?と付き合いができるようになったけど、七海ちゃんの恐怖心は消えちゃいない。


でも俺って女性と言えば小さい頃の七海ちゃんと家族しか話したことがない。


妹や姉ちゃんは、ほとんど話なんて最近はしていない。


だから、久しぶりに会うことになった七海ちゃんに、何を話したら良いのか、彼女の笑顔を見るために、芸能人の話やアイドル、ゲームの話や漫画の話だけじゃだめだと思う。


女性どうしだったら芸能人のな話も良いけど。


俺、基本的に、ゲームしたり、マンガ読んだりばかりしている。


彼女を楽しませるって言うのは、難しいことなんだなって、いまさら思ってしまう。


でもあのとき、登校途中に彼女を見てから、俺の中で変化してきているのがわかる。




彼女の家から夜遅く帰ってから、自分で鍵を開けて入ったんだけど、その時には誰もいなかったのは、七海ちゃんのお父さんが電話してくれていたから。


なんだか、昔の記憶で隣に七海ちゃんが住んでいたから、七海ちゃんのお父さんのことを、おじちゃんとか、お母さんのことを、おばちゃんって言っちゃうんだよね。



数時間の仮眠を取るようにしたけど、ほとんど眠れなかった、頭がボーとする。

なんだかフラフラしてしまう。


寝不足状態だ。


翌朝、俺が起きだして、俺の顔を見た家族は、ビックリしていた。


帰って来た時よりも、俺の顔が腫れあがっていたからだ。


「どうしたのよ、悠人」


「うん……」


「昨日、愛沢さんから連絡が来ていたけど…」


「うん」


そこで説明しないと、見逃してくれなかったので、簡単に説明した。


七海ちゃんが男に襲われそうになったこと


それを俺が助けにいったこと


その男に殴られたこと


そして、そこに七海ちゃんのお父さんが駆けつけてくれたこと


男を警察に突き出したこと


それから警察署にいったこと


そして七海ちゃんを慰めていたこと


を話して、家族には納得してもらったけど、学校に提出する用紙に書いてもらった。


顔が腫れているウソの理由が書いてある用紙を



また七海ちゃんを迎えに。


七海ちゃんの家に着いてから玄関のベルを鳴らして、おはようございます、七海ちゃんを迎えに行きました、と言ったで開けてもらった。


お母さんから、おはようと言われたけど、寝ていなかったみたいで顔色が悪い。


そして、昨日は本当にありがとうね、と、お礼を言ってくれた。


お父さんも、ななみちゃんも顔色は良くなかったけど、多分あれから3人とも寝ていないような状態だったと思うが普通通りを装うことにしたみたいだ。


他人の目と言うのは、批判的なものも多くあるので、普通通りに行動していれば、何もなかったようにしか思えないので。


俺も、いつも通り七海ちゃんと接するようにして、七海ちゃんも俺と普通通りに接してもらうことにした。


ただ違うのは、俺たちは恋人同士だ。やった〜。


不謹慎だけど事件があったことも忘れるようなウキウキ感がある。


しかし引き締めるところは引き締めなければ。


そして俺もできるだけ、努力をすることを、がんばらなければ、今までの俺が怠惰すぎている。


もうすぐ定期テストがあるので、部活が一斉に休みになった。


俺は必ず、七海の教室に迎えに行くようにした。


俺のクラスが遅く終われば、教室の前に必ず、七海の姿を確認する。


そしてななみには、噂になるようなことが嫌であれば言ってくれと話したが、

「友達には悠くんが彼氏だって言っているから、大丈夫だよ」

と説明してくれた。


「そういえば顔の腫れが昨日よりもひどくなっているけど、先生がみたら気が付くんじゃない、どうするの?」


「あっ、それは親に書いてもらったんだ、妹とケンカして、顔を殴られたって」


「え~そうなの? 陽菜ちゃん、かわいそうに」


「まぁ、しかたないよ、ここは犠牲になってもらわないと」



しばらくして今や俺たちの中は学校中で知らない人がいないくらいの中になっている。


今日も学校の帰り七海と2人で帰っているところ


「そういえば、悠くん覚えている?」


「ん、なんのこと」


「昔、悠くんの隣に住んでいるときに、近くにあった大きな木があったでしょう」

「あった、て言うよりも今でもあるよ」

「へー、今でもあるんだ」


「その家がどうしたの?」

「悠くんは、忘れているかもわからないけど、昔、私がその木に登って、落ちて怪我をしたことがあったのよね」


「えっ、あったっけ?」

「あったの! ! 怪我をした私がね、大泣きして泣いていると、悠くんがね、おんぶして家まで連れてってくれたんだ」


「あの時は、血がいっぱい出ていて痛くて歩けなかったんだよね。そしたら悠くんが何も言わずに私の前に座って、一言、おんぶ、て言ったんだよ」


「私はね、悠くんに、おんぶしてもらってる時に、好きになったんだ、この人のお嫁さんになりたいって。  そしてね、それが、あの時の傷」 


短いスカートだから、めくりあげなくても太ももの傷が見えてしまっている。


大きな傷は残っていないけど、よく見ないと見えないくらい傷跡が見える。


俺は近くで女性の足を見たのは家族以外では初めてだったので、ちょっとドギッした


「悠くんて、昔から、おてんばだった私を、守ってくれたり、助けてくれたりしていたよね。


「あのね、七海、きれいな足だけど人前で見せちゃだめ」


「は〜い、分りました〜」


と言って俺の腕に胸を押し付けて手を握ってきた。


「悠くんも、私が他人から変な目で見られるのは嫌でしょ」


「うん、当たり前だよ、好きな人だもん」


「…だったら、本当に、この前はごめんなさいね、強引にでも声をあげたり、手を引っ張られても引き離せばよかった」


「俺も、七海の大きな胸を俺以外の人が見たり、触ったりするのは、ちょっとショックだったけど」


「悠くん、大きな胸は余計だよ」と七海は笑っている。


その七海の笑った顔を見ながら、良かったと思って安心した。


俺たちは人通りが多くなるまでくっついたままでいたが、さすがに同じ学校の生徒たちが多くなってくると、必然的に俺たちは距離を置いた。


「七海、おはよう」と七海ちゃんの友達が挨拶してきた。


「おはよう、マリ」七海ちゃんが友達の名前を言ったので、友達はマリって言うんだと思った。


「今日は2人で仲良く登校なんだね」とマリ


そして俺の顔を見た瞬間に


「どうしたの、その顔」と聞いてくる。


「昨日、妹と喧嘩した」と俺は、嘘の説明をする。


「夜トイレに行こうとしたら、妹がたまたま風呂上がりでタオルを巻いたまま部屋に行こうとしていたみたいで、それを見たから喧嘩になって殴られた」と俺は言うことにした。


それを聞いていた友達のマリちゃんと七海ちゃんは大笑いした。


「ハァー、苦しいよ、君、面白すぎだよ」とマリ


大笑いして苦しそうにしていたが、通学路を歩いていた多くの生徒が2人が大笑いしているのを見て通り過ぎていく。


俺は2人が楽しそうに大笑いしているのを見て安心した。


自分では別に冗談を言うつもりはなかったんだけど、何とかごまかそうとしたら、以前、家庭内で起こったことを思い出したので、つい話してしまうと大笑いされてしまった。


俺たちはもう友達のように3人で学校に向かって歩いている。


「君、なんていう名前」


「羽沢悠人だよ」


「えーと、と言うことは、あなたが悠くん? 時々、七海が口を滑らせるんだけど‥よろしくね」


「えーっと、こちらこそ」


友達のまりちゃんは、吉田真理と言うそうだ。


七海ちゃんと同じように髪も長く、サラサラで綺麗だ、スタイルも良く七海ちゃんよりは胸は小さいが、でも大きい方だと思う。


ウエストも細く、七海ちゃんと同じようにスカートが短い。


「えーっと、ちょっと聞くけど、お二人さんを付き合っているの?」

ダイレクトに聞く子なんだなぁと思う


俺はなんていうか困っていたら七海ちゃんが、「そうだよ」とあっけなく答えてくれた。


「お二人さん熱いねー」


「でも、君、七海みたいな学園一、キレイでかわいくて優しい子を射止めるなんて、すごいね」


「どこで知り合ったの?」


「幼馴染なんだ」


「えっ、七海は最近、越してきたって言ったよね」


「以前も私、近くに住んでいたんだよ、マリ」


「今、住んでいる所とは違う家だけど」


「へー、そうなんだ」


「私が天文部に入っている事は知っているでしょう、その天文部で最近、入部してきたのが優くんなの」


「あの時は本当にびっくりしたわよ、私が部室に入ったら、知っている男の子がいるんだもの、だから私が先に声かけたの」


「へー、そうなの、七海ったら積極的ね」


そんなことを話しながら歩いていると学校の校門に着いた。


俺たち3人は、下駄箱に靴を直しながら、「じゃぁ、悠くん、またね」と七海ちゃん


俺は「またね」と言って別れた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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