第142話 デートじゃないよ?
さぁ!元気になって参りました!どうも佐倉旭です!
俺が風邪という世界的脅威にやられてから数日後、伊織からあるメッセージが送られてきた。
あさか 「土曜日、一緒に出かけない?」
こんなメッセージ。
「デートですか?」
「ち、ちがう!」
土曜日の午前中。俺は伊織と商店街を適当に歩き回っていた。
顔を赤くしながら、デートである事を否定する伊織。うん、かわいい。危うく残機が消滅するところだったぜ。
だがしかし!だるさも眠さもかっこよさも男らしさも全て無くなった今の私は無敵だ!…あれ?無くしちゃダメなものまで無くなってない?
「違うの?」
「だ、だって…で、デートってその…付き合ってる人たちがする事…でしょ…?」
「…え?男女で出かければデートじゃないの…?」
「…え?」
なるほど、これは認識の問題である。
俺は男女が二人で出かける事を、デートと認識しているが、伊織は『付き合っている』男女が二人で出かける事を、デートと認識しているらしい。
そもそもの話、デートに確実な定義があるかと聞かれれば、微妙なところだ。俺と伊織みたいに認識は違うし、明確な線引きがされていない。と、いう事は…?
「まぁ、どっちでもいいか」
「へ?」
結局はそこに行き着くのである。
別にこれがデートだろうがデートじゃなかろうが、今日やる事の内容は変わらないだろう。あれ?そういえば今日、何するんだろう?
「なぁ、どっか行くところとか決めてるのか?」
「…旭は…その…デートだと、思ってくれてたの…?」
「へ?」
質問をしたら質問が返ってきたぞ。おかしいな、会話のキャッチボールが成立しないぞ?
「ね、ねぇ…」
俺が何も答えない事に焦りを感じたのか、不安そうな顔で服の袖を引っ張ってくる伊織。
「いや…俺はそういう認識だったけど…別に違うなら違うでいいよ」
「…じゃあ、今からデートって事で」
適当すぎるだろ。
「適当すぎない?」
「いいの!ほら、行くよ!」
そう言って伊織は俺の手を強引に引いた。
「だからどこにだよ?!」
「決めてないの!」
「決めてないのかよ」
まぁ、どこだろうと、このポンコツ伊織がいればおもしろく感じるんだろうからいいんですけどね。
そんな事を思っていると、伊織は俺の手を離して止まってしまった。
「…じゃあ…」
「ん?」
「旭は…どこ行きたいの?」
「どこでもいいよ」
「もうっ!結局そうなるんじゃん!」
「ふっ…なんで怒ってるんです?」
「なんで笑ってるの?!それに怒ってなんかない!」
いやなんと言うか、やっぱりそういう反応するんだなぁ、って思ったらなんか笑えてきちゃったんですよ。
そんな俺の考えを察したのか、伊織はプイッとそっぽを向いてしまった。
「ごめんて、あんまり怒らないで」
「怒ってない!」
怒ってますやん。
「…ほんとにないの…?」
急に落ち着いたかと思ったらそんな事を伊織は聞いてきた。
「うーん…特には。逆に伊織はどうなのさ?」
「私は…べ、別に…旭と遊びたかっただけだし…」
段々と声が小さくなっていっていたが、俺にはしっかり聞こえていた。
えぇ、何それすうっごぉいかわいい。
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