拒絶の幼馴染

第141話 だから言ったでしょ？

　「ね？だから言ったでしょ？寝てるだけだって」

　「う、うん…」

　しばらくすると、陽葵も帰ってきて、俺の部屋に入ってきた。

　そしてちょっと不機嫌そうな伊織を見て、なぜ俺が返信をしなかったのか、という話にまた戻り、現在に至る。

　「旭はゴキブリだから。生命力はずば抜けてるよ？」

　「おいてめ」

　お前それ、俺とお前は姉弟だから自分もゴキブリだって言ってる様なもんだぞ。てかゴキブリ言うな。

　「朝香ったら、休み時間なる度にメッセージ送るし、通知が来たら速攻で確認するからもう…かわいくって！」

　「ちょ？！陽葵？！」

　結構恥ずかしい事実を暴露されて、顔を赤くしながら陽葵に掴みかかる伊織。

　「それで旭じゃなくて、別の通知に気づいた瞬間、シュンとした顔するの！もうっ！」

　「ひ〜ま〜り〜！！」

　俺をよそに二人で盛り上がり始めてしまった。

　あのー…すみません。ここ病人の部屋なんですけど…。まぁ、いいんですけどね。

　にしても、伊織はそんなに心配してくれていたのか。

　「でも伊織って、帰る前の俺に会ってるよな？元気そうだっただろ？」

　「どこがよ！無理してる様にしか見えなかったわよ！」

　「おーまいがー」

　まじか。いや確かにキツかったって言われればキツかったけれどもさ。

　そんな事を考えていると、伊織が何やらいじけた様な顔をしてこんな事を言った。

　「…心配して何が悪いのよ…」

　「「ぐはっ！」」

　危ねぇ…意識が飛びかけたぜ…。これは摂取量を間違えると人を殺してしまうかもしれない…。

　「もうっ！なんなのよ二人とも！」

　おそらく、俺も伊織もライフはゼロだ。陽葵は知らん。

　「それで、旭は朝香の言う事を…なんでも！聞くと？」

　「言ってねぇよ…まぁ、心配かけたみたいだから、やれる事ならやるけど…」

　「ほ、ほんとっ？！」

　「what？！」

　「あ、ご、ごめん…」

　急に伊織の顔が目の前まで迫ってくる。

　あのね伊織ちゃん。私病人なのよ？そんなに近づいちゃダメよ？今だってかわいい顔が急に目の前に出てきて変な汗やら動悸やらが止まらないのよ。うん、風邪だな。よし。

　「てか何？そんなにして欲しい事あるの？」

　「へ？！えっと…いや、別にそう言う事じゃなくて…」

　「んじゃ、どーゆー事？」

　「そ、それは…」

　口籠る伊織は目を右往左往させる。そしてその目は俺とバッチリ合うと、なぜか顔を赤くさせた。

　…え？何？俺何されるの？

　「きゃー！朝香ったら何考えてるのー？！」

　「ち、ちがうからっ！陽葵は黙ってて！」

　「えー？あたしに言えない事なのー？」

　「う、うるさいっ！ばかっ！」

　そしてまた二人で言い合いを始めてしまった。だから病人の部屋だって。いいんだけどさ。

　そんな事を考えながらアイスを齧っていると、急に伊織が俺の方を向いてきた。

　「後で！後で言うから！わかった？！」

　「え、あ、はい」

　「じゃあ！私帰る！」

　ほら〜、陽葵が変な事言うから伊織怒っちゃったじゃん。

　「朝香ぁ〜、何怒ってるの〜？」

　「怒ってない！ばか陽葵！」

　「やっぱ怒ってるんじゃん」

　「ふんっ！」

　やっぱり怒っている様にしか見えない伊織は、鼻を鳴らして部屋を出て行ってしまい、陽葵と俺が残された。

　「…結局なんだったんだ？」

　「あんたはもうちょっと興味持ちなさいよ…」

　「いや、持ってるじゃん」

　「そう言う事じゃ…はぁ…」

　え？なんなの？