第139話 心配メッセージ

 時刻は十一時前。体温は三十七度七部。普通に体調不良という事で、学校は早退させてもらった。家まで帰ってくるのが非常にきつかった。

 自分の部屋のベッドに横になりながら、天井を見る。

 風邪なんて引いたのはいつぶりだろうか。

 基本的に元気に過ごしていたから覚えてないな。


 「あ〜…だりぃ…」


 ならば早く寝ろよ、という話なのだが、寝ろと言われてすぐ寝れるほど、人間は良くできていない。


 「…水…」


 とりあえず水分を取ろう。そして落ち着こう。何事にも順序が大切だ。一度二階から一階に降りるという軽い運動をする事によって眠れるかもしれない。眠れないかもしれない。

 そんな事を考えながら一階のリビングに行き、水道水をコップに注ぎ、一気に流し込む。まだ春になる前の気温に冷やされた水道水が内側から体を冷やしていくのがわかる。


 「…お…?」


 睡魔降臨。やはり水を飲みに来て正解だったかもしれない。さっさと部屋に戻って寝よう。


 「…」


 そう思ったのだが、風邪のせいか、部屋に戻るのすら面倒になってきた。

 

 「ソファーでいいや」


 エアコンの電源をつけ、ソファーに横になると、すぐに眠気が襲ってきた。


 「グッバイ世界…」


 もはやなんの理由があってそんな事を言ったのか、自分でもわからなかったが、その言葉を最後に、俺の意識は夢の世界へと消えていった。




 「…んぁ…?」


 目を覚ますと、最初に視界に映ったのは知らない天井…ではなく、ソファーの背もたれ部分だった。

 とりあえず体を起こして、固まった体を伸ばしていく。


 「ん〜!」


 少し寝た事によって、だるさが抜けてきた様な気がする。ついで頭痛も治まってきた。


 「…あれ、スマホがねぇ」


 時間を確認しようとスマホを探したが、見つからなかった。そういえば俺はここに水を飲みにきただけで、寝るつもりじゃなかったはずだ。ならばスマホは俺の部屋に放置されているのだろう。

 ならばとテレビの時計を確認する。十五時二十五分。は?


 「え、そんなに寝た?」


 どうやら昼飯すらスルーして眠っていたらしい。まぁ、昼くらい食べなくても平気だが。


 「ま、いいか。ソシャゲしよ〜」


 まだ少しだるい体を動かし、部屋に戻ろうとする。

 学校を早退したくせに何を言っているんだこいつは、などという指摘等は一切受け付けておりません。

 部屋に戻って、まず目に入ってきたのは、ベッドの上に放置されていたスマホだった。メッセージでも受信していたのか、画面が少しの間表示されていた。

 どうせ陽葵あたりからの煽りのメッセージだろう。

 そう思いながらスマホのロックを解除してメッセージアプリを開くと、驚くような光景が広がっていた。


 「わぉ…」


 思わず声を漏らしてしまう。

 俺が見たのは、みんなからの心配のメッセージだった。意外と心配されるもんなんだな。


 カエデ 「旭くん!大丈夫?!」


 一番最初に送られてきていたメッセージは楓からだった。時間を確認するに、体育の授業が終わってからすぐに送ってきてたのかな?なんて優しい子なんや…。そんな楓ちゃんには、何か面白い返しをしないとな。ふむ。


 旭 「人間ってよくできてるよな」


 カエデ 「ほんとに大丈夫?!」


 …なんか心配されてしまった。とりあえず「大丈夫」と送っておこう。

 楓にメッセージを送り終わって、次のメッセージを開こうとした時、新しくメッセージを受信した。高橋からだ。


 ルカ 「そろそろ起きたか?」


 おめぇ…よくわかってんじゃねぇか…。


 旭 「おはようございます」


 ルカ 「寝ろ」


 なんなんだ貴様は。

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