第116話 真理か勘違い

 「いやぁ〜面白かったね!」


 色々な店を周り、晩飯の時間に近くなって来たので、俺たちは家路についていた。

 その道中も、陽葵はテンションが上がったままのようで、買ったものを大事そうに抱えながらも興奮を隠しきれていないようだった。


 「ま、たまにはありだな」


 そんな事を言っている俺も、だいぶ良い収穫があったのでホクホクである。

 クッションにイヤホンに、漫画にお菓子に…俺の冬休みは充実する事、間違いなしだな。


 「でも、やっぱ一番はソーダーメーカーかな?」


 「お前には絶対に買わせない」


 「えぇー!」


 何かの間違いで買ってしまったとしても、絶対に使わせない。


 「…そういえば、朝香とは最近どうなの?」


 「急だな」


 「だって聞いてなかったもん」


 「どうって…告白されてからは特に何も…」


 いやまぁ、何もないってわけではないんだが…なんか積極的になってきた気はする。


 「ふーん…は?告白?!」


 陽葵は、信じられないようなものを見るような目で俺を見ていた。


 「いつ?!いつされたの?!」


 「ちょ!うるさい!文化祭の時だよ!」


 ものすごい剣幕で俺に詰め寄ってくる陽葵。

 とにかくうるさいから声を抑えて欲しい。ここは道のど真ん中です。


 「朝香め…ずっと黙ってたなぁ…」


 「何?聞いてなかったの?」


 「聞いてないよ!」


 「わははー!」


 「ん?喧嘩する?」


 そう言って、陽葵はマカロン型のクッションを両手に持って臨戦態勢に入った。

 おい、それ俺のクッション。


 「…それで、付き合ったって事でいいの?」


 「いや、付き合ってはいない」


 「…ん?」


 理解できない、とでも言うような顔で俺を見る陽葵。


 「…え?旭、朝香の事、嫌いになったの…?」


 「いやいやまさか」


 「じゃあなんで?!」


 陽葵は、なぜか焦っているようだった。


 「いや、伊織は好きだよ。でも、この好きは、恋愛感情の好きじゃないと思う」


 「…」


 「前は好きだった。確実に。自信を持って、あいつを女の子として好きだって言えてたよ。でも…今はなんて言うか…自分でもよくわからないけど、違う気がするんだよな…」


 「…冷めちゃったって事…?」


 「うーん…多分、それに近いと思う」


 「はっきりしなよ」


 今度は呆れた顔で俺を見てため息を吐いてきた。


 「しょうがないだろ?!自分でもよくわかってないんだから!」


 「あはははー!」


 「何笑ってんだゴラ」


 さっきのお返しのつもりだろうか、わざとらしく笑って見せる陽葵。

 …むかつくな、こいつ。


 「…はぁ、ま、朝香だしね〜。旭が好きになるまで待ってる、みたいな事言ったんじゃないの?」


 「何お前、怖い」


 微妙に内容は違うが、大体合ってるのが逆にホラーなんだが…。


 「他に好きな人ができたとか?」


 「いや、別に」


 「じゃあ、気になる人は?」


 「んなもん伊織に決まってるだろ」


 「わはぁ〜!」


 伊織の顔が一瞬で出てきたわ。しかも、笑顔で。

 あれ?これって好きなんじゃないの?もう重症なんじゃ?

 そして、二番目に出てきたのが、我らが楓ちゃんだった。


 「…は?」


 さっきの思考の違和感に気づく。

 二番目に楓が出てきた?

 なんで楓が?

 確かに、最近関わる事が多かった気がしないでもないが…。


 「…旭…?どったの?ぼーっとして」


 「…え?あ、いや…」


 無意識のうちに足を止めていたらしく、陽葵に心配そうな顔で見られてしまった。


 「なんでもねぇよ。はやく行くぞ」


 「あっ、ちょっと待ってよ!」


 心の内を悟られないように、話題を無理矢理変えた。

 それを察したのか、陽葵はクッションで俺の頭をボスッボスッと殴りつけてくる。

 だからクッションは殴るものじゃないって…。

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