第114話 何しに来たの?
「そういえば、今日の晩飯どうするの?」
スーパーにたどり着いた俺と陽葵は、とりあえずカゴにプリンを投入し、目的を達成していた。
いや、ほんとにこれだけ。まぁ、プリンを買うだけだったらコンビニでもいいのだが、コンビニのプリンは高ぇ。スーパーだと三つで二百円いかないくらいなのに、コンビニは一個二百円近くするやつがある。でも、コンビニのプリンって高いけど美味いんだよなぁ…。
という事で、目的のプリンを買ってミッションコンプリートしたから、マジで陽葵は何をしに来たんだ、と言う話になる。
しかし、晩飯の材料を買いに来たと言うならば納得はできる。
「んー…今日はお母さんたち帰ってくるから、お母さんが作るんじゃない?」
「マジで何しに来たんだよ…」
「いいじゃん!ついてきたかった年頃なの!」
「小学生かよ」
「お姉ちゃんです」
高校生の俺に小学生の姉ができた件。
…どこのラノベですか?というか字面が危ない。
「もう、しょうがないなぁ…適当にどこか寄る?」
「え、やだ。用がないなら帰るぞ」
「なんなのあんた」
なんなの、はこっちのセリフです。
「別に無理してどこかに寄る必要ないだろ?」
「えー」
「何さ?」
そう言うと、陽葵は何やら不貞腐れたような顔をする。
「だって…今年、旭とあんまり出かけてなかったから…」
「は?いやいや、遊びまわってただろ?」
というか、何その理由。
「夏祭りとかあっただろ?」
「他には?」
「他にはって…あれ?」
言われて気づいた。
よく考えると、夏祭り以外は今年、陽葵と出かけてないのか?
平日も休日も顔を見てるから、あんまり考えてなかったな。
「…いや、別に家でも遊んでるし、よくない?」
「違うんですよ。なんか…こう、姉弟っぽい事と言いますか…」
姉弟っぽい事ってなんだよ。
公園で砂遊びでもするか?おん?
「じゃあ、公園で砂遊びでもするのか?」
「うーん…ありだね」
「いや、冗談だから」
まさか採用されるとは思わなかった。
この歳で砂遊びはキツいだろ。
「…じゃあ、何がしたいの?」
「うーん…あ、ショッピングしようよ!」
「今したじゃん」
「これをショッピングと呼んで欲しくないんだけど」
何が違うんだよ。
ショッピングって買い物のことだろ?
「年末と正月に向けての準備とかあるし…面白い家電とかあるかもしれないし!」
「…まぁ、安売りとかしてるだろうしな」
「ね!そうしよう!どうせ旭、家に帰っても暇でしょ?」
「おい、勝手に暇人扱いするな」
「『ゲームのイベントで忙しい』とか言ったら怒るよ?」
「…」
べ、別にそんな事ないですよ?ほ、他にもやる事あるかもしれないですし?
だからそんな目で見ないで。
「はぁ…わかったわかった。でも、そんなに金あるのか?」
「ふっふっふっ…多少使いすぎても大丈夫だよ?」
「お前…最高」
こいつは今、我が家の生活費を使う事を宣言した。
姉ちゃん…あんた漢だよ。女だけど。
「でも、さすがに使いすぎはヤバいから抑えろよ。母さんが多分、めっちゃ怒るから」
「はいはーい!」
はしゃぎすぎだろ。
どっちが姉とか弟とか、もはやわからんな。
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