第113話 寝ぼけた泥棒

 「あれれ〜?あさひく〜ん?」


 クリスマスも終わり、今年は残りの数日を過ごすだけとなった。

 いつも通り、お昼頃に目覚めた俺、はとりあえずリビングでゲームをしていた。

 昼頃に目覚めるのがいつも通り、と言う時点で生活習慣が狂ってきている事にそろそろ危うさを覚えなければならない。

 雨宮先輩にバレたらまた怒られるなぁ…。

 でもさぁ…年末っておいしいイベントめちゃくちゃあるくないですか?


 「あさひく〜ん?」


 「…何?」


 そんな年末に、我が家のうるさい担当陽葵ちゃんが、にこにこ笑顔で俺に詰め寄ってくる。


 「プリン…食べた?」


 「は?」


 「あたしのプリン」


 「…」


 そういえば、朝飯食ってないからって、さっき食ったな…。


 「知らない?」


 「…」


 「し・ら・な・い・?」


 「佐倉家の冷蔵庫に保管されていたんだ。だから、あれはお前の所有物ではなく、佐倉家のものだ。よって、俺が食べても問題はない!」


 「やっぱあんたじゃん!」


 「ごめんなさい」


 普通に考えて、佐倉家でプリンと言ったら陽葵しかいない。

 ちょっと考えれば出てくるはずなのに、俺はさっき起きたばっかりで、頭が回っていなかったから考えれなかった。

 そんな俺を陽葵は、ソファーのクッションでボスッボスッと叩いてくる。

 やめて、ちょっとだけ痛いから。


 「悪かったって、昼飯食ったら買ってくるから…」


 やだなぁ…この寒い中、出なきゃいけないのかぁ…。

 そう思いながら、俺は窓の外を見る。

 おいおいおいおい…雪降ってんじゃん…。


 「てか、最近プリン食いすぎじゃね?太るぞ?」


 「あたし、太りにくい体質だから」


 「なるほど、だからぺったんこなのか…」


 そう言った瞬間、俺の顔の真横をシャーペンが通り過ぎて行った。

 ひぇっ…。


 「いや、洒落にならんて…」


 「ほら、早く食べるよ。出かけるんでしょ?」


 「いや、何食うの?」


 「え?カップ麺で良くない?」


 「あ、そっすね」


 簡単で早い。そしてうまい!

 お湯を入れて、三分待つだけ!

 これ考えたやつは天才だわ…。ありがとう、俺はあなた方のおかげで生きていけてます。




 「なんか、久しぶりに旭と出かけるね」


 「ん?あぁ、そうだな」


 昼飯を食い終えて、簡単に着替えなどを済ませた俺たちは、いつものスーパーに向かっていた。


 「で、なんでついてきた?」


 「ん?」


 「ん?じゃねぇよ」


 なんだ、その腹立つ顔は。ほっぺ引っ張ってやろうか?


 「いいじゃん、旭だって、お姉ちゃんと久しぶりの買い物で嬉しいでしょ?」


 「何言ってんだこいつ」


 「おい」


 相変わらず意味がわからん。

 冬空の下、周りから見れば姉弟で楽しそうに会話しているように見えるのだろうが、そんな事はない。

 というか、そもそも会話が成り立っていない。


 「今日は雪が降ってるね」


 「家の周りも降ってただろ?」


 「寒くなってきましたね」


 「じゃあ、なんでそんな格好で来たんだよ…」


 俺は厚めの長袖長ズボン着ててもちょっと寒いのに、陽葵は青いパーカーに膝より少し上くらいの長さの黒のスカートときた。

 頭おかしいんか?


 「なんでって…動きやすいから?」


 「風邪引くなよ。俺はもう、面倒は見ないからな」


 「別に面倒見てもらわなくてもいいですー」


 「よく言うわ。前回甘えに甘えまくってたくせに」


 「あれは…仕方ないんですよ…そう!仕方がない!だから次回も宜しくお願いします!」


 「何言ってんだお前」


 何開き直ってんだこいつ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る