第106話 気づくのが遅かった?
会、と言っても、プレゼント交換や催し物などの、特別な事をするわけではない。
本当に、ただ仲が良いやつらで集まっただけだ。
だからみんな、それぞれ好きに喋ったり、くつろいだりしていた。
そんな中、俺はソーダをグラスに注ごうとペットボトルを持ち上げた時だった。
「…は?おい〜もうないじゃん〜」
「ん?ありゃりゃ」
俺の声にいち早く反応したのは陽葵だった。
「他の飲みなよ。まだあるし」
「え、やだ。今はソーダの気分」
「ワガママか」
俺はしゅわしゅわを求めてるんだよ。
しゅわしゅわをキメねぇと…早く…。
「じゃあ、自分で買って来たら?」
「…しゃーない、そうするか」
「あ、ついでにプリン買ってきて」
「じゃあ、お前も来い」
「え〜…寒いじゃん…」
「貴様」
ほんとは最初からそれが目的だったんだろ?おん?
…仕方がない。使われてやるよ。
ついでに他のみんなにも聞いておくか。
やだぁ〜、私ったら気遣い上手ぅ〜?
「はぁ…おーい、今からコンビニ行ってくるけど、何か欲しいものあるかー?」
「課金カード」
「締めるぞゴラ」
高橋、お前何に課金する気だよ…。
てか、それはただのパシリじゃねぇか。自分で行けよ。
え?陽葵のもパシリに入るんじゃないかって?
…あれ?
「特にないかな〜」
「私も〜」
「俺も」
「大丈夫、だよ」
他は特に欲しいものはないらしい。
まぁ、ジュースも料理もまだあるし、俺みたいなワガママを言わなければ、それで足りるのか。
「あっ、旭」
「ん?」
玄関に向かおうとしたら、伊織に止められた。
「私も、陽葵と同じやつ、お願いできる?」
「プリン?」
「う、うん」
少し、恥ずかしそうにしてそう言う伊織。
何それかわいいですか?
別に恥ずかしがる必要ないだろ?…あ、他にみんながいるから、ちょっと恥ずかしいのか。
そんな事を考えていると、陽葵が伊織に抱きついた。
「なぁに朝香ぁ〜。あたしのマネなの〜?」
「ち、違うから!そんなんじゃないから!というか離れて!」
「や〜」
「…もう…」
うぜぇ…。
酔っ払いのオッサンかよ…。
まぁでも、絡まれてる伊織も、満更でもなさそうだからいいんだけど。
「んじゃ、行ってくる」
「変な事はするなよ〜」
「うっせ」
全く、どいつもこいつも…。
いくら家の中があったかくて、暑く感じたからって外の気温が上がったわけではない。
「寒っ…」
現在、十二月。
家のぬくぬく具合で「上着はいらねぇか」とか思った自分を恨みたい。
バカじゃねぇの?寒いに決まってんじゃん。
コンビニまでは、そんなに遠くはない事がせめてもの救いか。
そんな事を考えている時だった。
「旭、くん…!」
後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきたため、振り返る。
「は?楓?」
見ると、さっきまで俺の家にいた楓が、小走りで近づいてきていた。
「…どったの?」
「あ…その、一緒に行っていい…?」
「何か買いたいの?」
「あ…うん!そうそう!ちょっと見ながら買いたいな…って…」
そう言う楓は、目を右往左往させて、落ち着きがなかった。
…何か他に理由があるのか?
「まぁ、んじゃ、行くか」
「う、うん」
楓が俺の隣に来た事を確認してから歩みを進める。
速度を合わせるために、隣を確認しながら歩いていると、楓の髪についている何かが、街灯の光を反射してキラッと光った。
よく見るとそれは、この前あげた、淡い青色の花のヘアピンだった。
「今気づいたんだけど、今日ヘアピン着けてたんだな」
「ん…?あ、うん。旭くんがくれたやつだよ」
そう言って楓は、ヘアピンを指でなぞった後、俺をジト目で見た。
え、何?その表情、珍しいですね。
「…」
「ど、どったの?」
「今…」
「え?」
「今、気づいたんだ…」
「え?あ、うん?」
「むぅ…」
楓はジト目をやめなかった。
かわいい。その表情、グッドです。
…いや、俺何かした?
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