第105話 作ったやつや

 「ただいま戻りましたよーっと」


 「お、お邪魔します」


 あれから俺たちは、買い物を無事に終わらせて、真っ直ぐ家に帰った。


 「お帰り〜…おや?楓ちゃんじゃーん!」


 そう言って、リビングの扉から顔を出したのは美波だった。

 あなた、もう来てたのね。

 スマホを開いて時間を確認すると、時刻は午後三時時を過ぎていた。

 会は夕食頃に開かれるから、まぁ、妥当な時間か。


 「楓ちゃーん!」


 「わっ!美波ちゃん?!」


 美波は走って楓に近づき、勢いよく飛び付いた。


 「ギュー」


 「み、美波ちゃん?!


 「ギュー」


 「え、えと…」


 なんて神々しい光景なのだろう。

 うっ!眩しい!

 この光に当てられると、俺は溶けてしまう!


 「何してんの?」


 声がした方を見ると、陽葵が呆れた目で廊下に立っていた。


 「寒いから早く入りなよ」


 「あ、はい。ほら、行くぞ」


 「あぁ?!」


 楓から美波引き剥がし、リビングに引きずって入っていく。


 「お、旭だ。やっと帰ってきたか」


 「旭、お前も早くこっち来いよ」


 「佐倉ぁ〜!こいつら二人していじめてくるんだけどぉ!」


 リビングに入ると、高橋、九十九、佐藤がパーティゲームをしていた。

 佐藤は相変わらず集中攻撃を喰らっているようだ。


 「…てか、その美波どうしたの?」


 「ん?あぁ、これね。欲しい?」


 「「「いらん」」」


 「ちょっと?!酷くない?!」


 そう言うと、美波は、俺の背中を殴り始めた。

 ちょ、痛いんですけど、なんで俺?

 そんなやり取りをしていると、リビングに陽葵と楓が入ってきた。


 「旭、サンタ帽買ってきた?」


 「ん、ほらよ」


 「そうそうこれこれ!」


 俺からサンタ帽を奪い頭に付けると、ソファーに座って高橋たちのゲームを鑑賞し始めた。


 「楓ちゃんも!くつろいでいいよ〜」


 「あ、うん」


 「あ、私、楓ちゃんの隣〜」


 「それじゃあ、あたしも楓ちゃんの隣〜」


 「え?!え?!」


 そう聞こえて、ソファーを見ると、楓が陽葵と美波に挟まれているのが目に写った。

 これまた周りにお花が咲きそうな光景ですこと…。

 あれ?そういえば伊織がいない。


 「陽葵、伊織は?」


 「そろそろ来ると思うよ」


 ピンポーン。


 家の呼び出しベルが鳴った。


 「ほらね?」


 「お前、エスパーか何かなの?」


 「ふっふっふ…あたしは朝香の事ならなんでもわかるのだよ」


 なにそれ凄い。

 

 ピンポーン。


 「はいはーい、今行きますよー」


 そう大きな声を出しながら、陽葵は玄関の方に向かって行った。


 「ほらよ、旭」


 「ん?…っぶね!コントローラーなげんなよ!」


 「早く参加しろって」


 「頼む佐倉ぁ!援護してくれぇ!」


 クリスマス会が目的のはずなのだが…?

 なんで人の家で女子放ったらかしにしてゲームしてんだよ。

 …まぁでも、誘われちゃったらやるしかないよね?

 

 「ったくよ…おい佐藤。高橋潰すぞ」


 「オッケー!」


 「うっわだるっ!九十九!佐藤をやるぞ!」


 「さすがに可哀想になって来たんだが…」


 佐藤はどうあっても集中攻撃される運命にあるらしい。

 今日は久しぶりに賑やかになりそうだなぁ…。




 「はーい!メリークリスマース!」


 テーブルの上にはいろいろな料理が並べられている。

 そして、その前にサンタ帽を被った陽葵がテンション高めでそう言った。


 「んじゃ、かんぱーい!」


 「「「「「「「かんぱ〜い」」」」」」」


 各々、好きな飲み物をグラスに注いで掲げる。


 「これおいしい!ほんとに陽葵ちゃんが作ったの?!」


 「うん、ありがと!まぁ、買ってきたものもあるんだけどね…」


 えへへ、と照れ臭そうに陽葵は笑う。

 実際、陽葵の料理はうまい。

 ほんと…一生養ってくれねぇかなぁ…。


 「うまいな…ローストビーフって普通に作れるもんなんだな…」


 高橋がローストビーフを食べながら陽葵の方を見る。

 俺はその、ローストビーフに見覚えがあった。


 「あ、それ、昨日俺が買ってきたやつだわ」


 「…」


 流歌くん…そんな目で見ないでよ…。

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