第103話 クリスマスの現実
十二月二十五日。
サンタさんが今年もやってくる。
今頃、小さな子供たちは、聖なる夜にサンタさんなるものがプレゼントを持ってきてくれると夢を見続けているだろう。
「子供は純粋でいいよなぁ…」
「どうしたの…?」
クリスマスで賑わうスーパーの中。
俺の隣を歩く楓が、不思議そうに聞いてきた。
「いつか現実を見る時がくるのになぁ…」
「だめだよ、旭くん」
クリスマスにはしゃぐ子供たちを見て、毎年同じ事を考えてしまう。
はっ?!もしかして、これが大人になるって事なのか?!
「…それで、何買うように言われたの?」
「ちょっと待って、今メッセージ確認する」
今日はクリスマス。
俺たちは冬休みに入った事によって、連休を手に入れることができた。
その、冬休みに入る前に、母親からこんなメッセージが飛んできた。
母 「クリスマスに、お父さんと帰りに食事に行って、適当に泊まってくるから友達でも誘いな」
このメッセージが飛んできた時、は?と思ったね。
旭 「まぁいいけど…あんたらそんなオシャレな事するような人じゃないだろ?
母 「だって陽葵が、ゆっくりしてこいって言うから」
やつが原因だった。
最近、周りのやつらに予定を聞いていたのを見かけたのは、そういう事だった。
これから俺の家には、伊織、高橋、佐藤、美波、楓、九十九が集まる。
そして、陽葵と俺は、料理などの準備をしていたのだが、陽葵が何か買い忘れたらしく、俺は買い出しに行く事になった。
ちなみに、どうして楓が一緒にいるのかというと、家を出て数分くらいしたところでバッタリと出会ったからだ。
家で待ってて良いよ、と言ったのだが、楓は「手伝うよ」と言ってくれたため、一緒に行く事になった。
そして、「今、手が離せないから!」と言って、とりあえず家を出された俺は、さっき送られてきた陽葵からのメッセージを確認。
そして現在に至る。
「…お菓子とジュースと、サンタ帽?」
陽葵からのメッセージには、そう書かれていた。
お菓子とジュースはまだわかる。
サンタ帽欲しいか?
「サンタ帽って…サンタさんの帽子の事?」
「多分な。あいつ、こういうの好きだからなぁ」
「そうなんだ」
「前にハロウィンあっただろ?あの日の朝の登校前に、魔女かなんかわかんないけど、軽い仮装してたんだよ」
「あはは…陽葵ちゃんらしいね」
陽葵は高校生になって、ある程度お金が自由に使えるようになってから、よくわからないものを買うようになっていた。
まぁ、自分の小遣いの範囲内だから全然良いんだけどね。
この前はキャスケットと虫眼鏡を買ってきていた。
…あいつ、次は何をするつもりだ…?
そんなことを考えながら楓と雑談をしていると、お菓子のコーナーが見えてきた。
「楓も欲しいのあったら言っていいぞ」
「えっ、そんな、悪いよ」
「いいっていいって。どうせ親の金だし」
「そ、それっていいのかな…」
今日の朝、起きてリビングに行くと、テーブルの上に一万円札と書き置きが置いてあった。
書き置きには、「クリスマス会にでも使って、余った分はあんたたちのクリスマスプレゼントとして分け合いなさい」と書かれていた。
だから、無駄遣いを気にする必要なんてない。
お父さん、お母さん、ありがとう。
僕、たくさん使うよ!
「クリスマスの会費だから遠慮しなくていいよ」
「う、うん、じゃあ、あったら言うね?」
それ、言わないやつじゃない?
楓は結構、遠慮するタイプだからなぁ…前に高橋に同じ事言ったら、カゴ持ってきたぞ?
まぁ、駄菓子とか安いやつを何個か買って、みんなで食えるようにって言ってたから、それなりに気を遣ってはいるんだろうけど。
「おーけーおーけー、ゆるくいこうよ」
「ゆ、ゆるく?」
「そ、気楽に気楽に、常識の範囲内なら遠慮なんかしなくていいから」
「う、うん…うん…?」
「金ならある!」
「い、言い方が…」
せっかくのクリスマス会だ。楽しまなきゃ損だろ?
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