第100話 受験と散歩

 どうして暑いとか寒いとかいう概念を神様は創ってしまったのだろう。

 生物にとっては全部デバフでしかなくないか?

 全部ちょうど良いじゃだめだったのだろうか。


 「…さっむ…」


 アイスコーヒーを飲み終えてから寒空の下、水無瀬の要望通り、俺は水無瀬と外をブラブラと散歩していた。


 「佐倉さん、弱っちいですね」


 「お前がおかしいんだよ」


 「?」


 水無瀬は首を傾げて俺を見る。

 今日の水無瀬の服装は、上はパーカー、下はショートパンツと非常に防御力が低そうな格好をしている。

 しかも生脚。

 それ、寒くないの?嘘でしょ?


 「脚寒くないの?」


 「…脚フェチですか?」


 「あーもういいや」


 「冗談ですって〜」


 そう言って、クスクスと笑う水無瀬。

 せっかく人が心配してやってるのに。


 「まぁ、正直な事を言うと後悔してます」


 「は?」


 「寒いです」


 「馬鹿なんじゃない?」


 何言ってんだこいつ。


 「しょ、しょうがないじゃないですか!外に出るなんて思ってなかったんですもん!」


 「お前から出ようって言ったんだけどね」


 「ちょっと黙ってください」


 「バーカバーカ」


 「処しますよ?」


 そう言って拳で俺の脇腹に突いてきた。

 やめろ、痛いわ。


 「んで、どこ行くの?」


 「え?決まってませんけど?」


 「…」


 なんか…もう…面倒くさくなってきたな…。


 「別に用がないなら帰るって選択肢もあると思うんだが」


 「それはダメです」


 「なんで?」


 「家にいても暇だからです」


 「勉強しろ」


 受験生が暇とか言うな。


 「もう…うるさいですね…」


 「なんなんだよ」


 不機嫌そうにため息を吐く水無瀬。

 え、俺が悪いの?


 「じゃあ…あそこはどうですか?」


 そう言って水無瀬が指差した方向には、前回高橋と来たゲームセンターがあった。


 「…お前、ああいうところ行くのか?」


 「まぁ、たまにですけど」


 「ふーん」


 「そっちが聞いてきたのに、なんで興味なさそうなんですか…」


 まぁ、ゲーセンなら暇つぶしには打って付けの場所か。

 仕方ないな。

 受験生だからと言って勉強ばかりだと気が滅入るだろうし。

 キャッチャーの景品も新しくなってるかもしれないし、こいつの面倒を見るついでに見ていくか。


 「よし、行くか」


 「なんか急にやる気出てません?」


 「気のせい気のせい早く早く」


 「えぇ…」


 おら行くぞ。早くしろよ。




 ゲーセンに入ると、いい感じに暖房が効いていて、冷えていた身体が徐々に暖まってきた。

 ゲーセン自体は、前回と少しレイアウトが変わったくらいで、特別変わった様子は見られなかった。

 そして、ここに来たがっていた本人は出口付近の自販機を見て、そして俺を見た。


 「とりあえず、あったかいの飲みたいです」


 「何言ってんだお前」


 ここ、ゲームセンター。

 あーゆーおーけー?

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