第69話 告るの?
味見、もとい昼食を終えた俺は、教室の隅で高橋と話をしていた。
「そういえば当日のお前の仕事は午後だろ?午前中一緒に回ろうぜ」
「いや、お前忙しいだろ」
「は?何言ってんの?」
「いや、お前だよ」
ちょっと僕、高橋君が言ってる事よくわかんない。
「俺、宣伝係だぞ?接客より暇だわ」
「いやいや、実行委員だろ?見回りとか無いのか?」
「は?周りながら見てたら仕事になるんだよ。多分」
「お前は一回怒られた方がいいと思う」
「サボるわけじゃないんだからいいだろ」
細かい事は気にしちゃいけないよ。
「でも悪いな。俺の仕事は午前からになったんだ」
「へー、何かあったん?」
「しず姉が引っ越すらしくてさ…文化祭が終わる頃には出発するらしい。近所じゃなくなるし、関わることも少なくなると思うから最後にってことで、変えてもらった」
「ふーん」
葵さん、引っ越すのか。
「何で急に?」
「じいちゃんの家が大学に近いからだってさ」
「あーね」
若干の今更感はあるが納得したわ。
「告るのか?」
「はぁ?!何で!?」
顔を少し赤くしながら勢いよく振り返る高橋。おもしろ。
「だって好きなんじゃないの?」
「いやっ、ちがっ…まぁ、そうだけどよ…」
「あっさり認めちゃったよ」
「このままやってても、お前に揶揄われるだけだからな」
「つまんな」
「てめぇ」
憎たらしい感情がこもった目で睨みつけてくる高橋。俺はそんなの気にしない。
「んで、告るの?これから簡単に話したり出来なくなるんだろ?」
「考えてはいるんだが…このタイミングでしてもいいものかと…しかもあっちは俺の事気にしてなさそうだしなぁ…」
そう言って壁に寄りかかる。
「後悔しない事をすればいい」
「簡単に言うなぁ…」
「俺はお前にウジウジしていられるのは嫌だからな。自分で納得できる事をすればいい」
俺は高橋を親しい友人だと思っている。
言いたい事を言いあえる友人なんて多くはない。
だからそんな高橋がウジウジしているのは見たくない。
「時間はまだあるから、ゆっくり決めればいいじゃん」
「そだなぁ…」
そう言って天井を見上げる高橋。
あ、これはあまり言わないほうがいいかな?
「まぁ無理ってことはわかった。別の人誘ってみるわ」
「悪いな」
「別にいい」
しかし、高橋がだめなら誰を誘おうか。
このままだと、ぼっち文化祭が確定してしまう。
「しかし…誰を誘うか…九十九?佐藤?小鳥遊?」
「伊織を誘えばいいだろ。せっかく仲直りしたんだし」
「いや、ないだろ」
「何でだよ」
「だって女子だよ?」
「どうした幼馴染」
前までは普通に誘えてたんだが、一度距離を取り始めたら、グイグイ行くような度胸はどこかに行ってしまった。
「陽葵は?」
「陽葵かぁ…」
「何で嫌そうなんだよ」
だってあいつといると疲れるんだもん。元気があるのはいい事なんだが、ありすぎるのが問題だ。俺の体力がもたん。
ん…?今こいつなんて言った?
「陽葵…?」
「何で聞き返してんだよ」
「いや、名前」
「…あぁ、なんか『旭が名前ならあたしも名前でいいよ』ってお前が味見役引き受けてる間に言われたんだよ」
「へぇ」
「へぇって…お前が聞いてきたのになんで興味なさそうなんだよ」
「いや待てよ?伊織とは実行委員の仕事で一緒になるのでは?」
「話し聞けや」
怒り気味の高橋君。
「…それなら別に誘う必要ないじゃん」
「やったぜ」
「急に元気」
難しく考える必要なんて最初からなかったんだ!
…今までの会話は何だったんだろうか。
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