第67話 味と仕事
「よう旭!ポスター貼れそうなとこっ?!」
教室に戻ると、めちゃくちゃいい顔で高橋が待っていたため、真正面から顔面を掴んでやる。
「いでででで!俺が何したってんだよ!」
「とぼけんな、てめぇ…全部仕込んでやがったな」
おかしいと思ったんだよ。接客係の陽葵が校舎の外にいるわ、突然伊織が現れるわ、高橋が陰から見てるわで、何もかもおかしかった。
「何のことかなぁ…ちょ、力入れないで、マジで!なんか変な音聞こえるからぁ!」
ある程度痛い思いをしてもらったところで手を離してやる。
別に本気で怒ってるわけじゃないし、寧ろ感謝はしている。ただ、その相手が高橋なのがちょっと腹が立つだけだ。
「…ってぇな…それで、仲直りはできたのか?」
「した…んじゃないかな?」
「何で疑問系?」
「いやだって…」
そもそもの問題、あれは仲直りと言ってもいいのか?
「まぁ、前よりは良くなったのか」
「よかったじゃん」
「うるせ」
ほんとにムカつくやつだ。
「まぁでも…ありがとな…」
「うわぁ…やべ、夏なのに寒気が…」
「てめぇマジで」
ほんとにムカつく。
「手伝ってって…何を?」
高橋との話は終わり、広告を考えたり装飾を作っていたりしていた時、楓が話しかけて来た。
「その、当日に出す、お料理とかの事なんだけど…」
「いやいや、何で俺?」
「美波ちゃんが…その、暇そうだから連れてこいって…」
「あいつ俺の事なんだと思ってるんだよ」
最近、美波は俺に対して遠慮がなくなって来た。
まぁ、よそよそしいよりかは全然良いんだけどさぁ…。
「てか俺、料理なんてそんなにしないから知識ないよ?」
「あ…大丈夫!味見してもらうだけだから!」
「よし、行くか」
「…急にどうしたの?」
味見するだけで仕事してる事になるとか得でしかないじゃん。
「いや、食べるだけでいいんなら断る理由はないなって」
「正直だね」
そう言ってかわいらしく笑う楓。
「まぁ、今やってる仕事飽きてきたからな」
「大変なの?」
「全然?」
「えぇ…」
「お!来たね暇人!」
「黙れノータリン」
「誰がじゃ」
エプロン姿で美波が怒ってくる。
「お前…ちゃんとやってるのか?」
「え?やってるよ?」
「怪我してないか…?嫌になってないか…?」
「きゅ、急にどしたの?!」
心配そうに俺を見てくる美波。
「いや、お前が料理してるイメージが出来ないんだが…」
「私のハンバーグの味を忘れたか」
「おいしかったです」
「でしょ?」
「無駄話はそこまでだ」
「いやいや、君が言う?」
ほらぁ、楓ちゃんが話について行けなくて困ってるでしょ?そういうとこよ、美波ちゃん?
「んで、何作るの?」
「うーん、まぁ、簡単にホットケーキかなぁ」
「は?」
思わず声が出てしまう。
「え?どうかした?」
「…旭くん?」
「ホットケーキって…簡単なのか…?」
「「…」」
冷ややかな目で俺を見てくる二人。やめて!そんな目で見ないで!
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