第56話 たかはしぃ…?
「さぁ、結果発表の時間だ!」
「めちゃくちゃテンション高いな」
あの後、葵さんは「そろそろ帰るね」と言ってゲーセンから出ていった。
ここには勉強の息抜きで来ただけのようで、高橋と会ったのは本当にただの偶然らしい。大学生って大変なんだなぁ…。
そんなこんなで一時間経ってしまったので、俺は十枚のメダルで勝負をしなければならなくなった。テンション上げねぇとやってらんねぇ!
「おらぁ!何枚稼いだんだよ!あぁ?!」
「何でキレてんのこの人」
「早く言えよ!」
「四十枚だよ…あーあ、しず姉がいなければもうちょっと稼げたんだけどなぁ…」
「うるせー!バーカー!」
「だからなに?!」
逆ギレする俺に困惑を隠せない高橋君。
四十枚だぁ?俺の四倍じゃん。
高橋のくせに生意気だぞ。
「お前は何枚なんだよ」
「十枚」
「は?」
「あ?」
「ちゃんとゲームした?」
「喧嘩売ってんのか?」
お?やるか?
「いや、増えてもねぇし減ってもねぇじゃん」
「増やして減らした結果がこれなんだよ」
「ざっこ」
「てめぇ」
戦争だこのやろう。
「いやぁ、あの店普通に美味かったなぁ」
ゲーセンから出て罰を執行されるために喫茶店で罰ゲーム兼昼食を取った。
ちなみに俺の財布からは昼食だけで千円札が三枚消えていった。喫茶店ってあんなに高いの?
「どうした旭、元気がないぞ?」
「うるせ」
「罰ゲームだから、そんなに怒るなって」
まぁ、罰ゲームですから?仕方ないと言えば仕方ないですけどね?
たださぁ…思ったより高かったんだよ。喫茶店舐めてたわ。
心なしか軽くなった財布をポケットに突っ込んでため息をつく。
「この後どうする?」
「解散しようぜ。これ以上、金を使いたくない」
「かわいそうに」
「ん?戦争か?」
「冗談だって…ごちそうさま」
「…ったくよ」
別に怒っているわけではない。ただ高橋に奢ってしまったことが気に食わないだけだ。決して怒っているわけではない。
「んじゃ、また夜、ちゃんとグル通こいよ」
「はいよ」
そう言って俺と高橋はここで解散となった。
「さて、帰って積みゲーでも消化すっかなぁ…」
小さく伸びをしてから家に帰る道を進む。
太陽は真上で止まり街をじわじわと炙っている。
「あっつ…」
電光掲示板が示している温度は三十四度。わぁお…。
ちょ、無理。溶ける溶ける。どっかで休憩しよ。
お金は使いたくないから店の中に入るのはダメだな。
まぁ、お金がなくても店の中に入ってもいいんだけど…なんか失礼じゃない?
そんなこんなでやって参りました、近場の公園。
近くの自販機でスポドリを買って、良さそうな木陰を見つけて木の根元に座る。
影に入ってもまだ、多少は暑いが風がいい感じに吹いているから問題ない。
遊具や広場のあたりには小学生くらいの子供たちがキャッキャキャッキャとはしゃいでいるのが見える。このクソ暑い中、元気あるなぁ。
しばらくその光景を見ながらぼうっとしていると、小学生よりは大人っぽい声が聞こえてきた。
「あれぇ?佐倉さんじゃないですか?」
「んぇ?」
チラッと横目で見ると、そこには暗めの茶髪のサイドテールがぴょこぴょこ跳ねているのが見えた。
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