拒絶の幼馴染

第42話 頭大丈夫？

　「さ、佐倉君…？」

　「…うす、おはようござます」

　伊織と俺が別れてそれぞれの寝床に戻った後、俺は眠れないでいた。

　心を落ち着かせようとしたはずなのに、むしろモヤモヤとしてしまって逆に落ち着かなかった。

　好きな人と深夜に話すってのは世の男子高校生にとってはそれはそれはヤバイイベントだ。想像してみてほしい。好きな人が夜に、自分の家で、パジャマで、そして隣で一緒に夜空を見ながらお茶お飲む…やべぇ、ほんとに現実か？あれは幻だったんじゃ…？

　それに未だに伊織の真意が掴めないまま解散となってしまい、あーでもない、こーでもないと考えを巡らせてしまい一睡もできなかった。

　そしてそのまま学校に来たのだが開幕早々、雨宮先輩に会い、今に至る。

　「だ、大丈夫？目が死んでるよ？」

　「大丈夫っすよははは」

　「…寝てないの？」

　「いやー雨宮先輩に早く会いたいと思ってたら眠れませんでしたーあはは」

　「ねぇ、ほんとに大丈夫？！」

　雨宮先輩は本当に心配そうに聞いてくる。

　その「大丈夫」は何に対してですか？頭ですか？

　大丈夫。大丈夫ですからそんなに揺らさないでください気持ち悪いです。

　「…とりあえず、生徒会室に行きましょう」

　「う、うん…でも無理はしないでね？私が言うのもなんだけど」

　こんな可愛い先輩に心配されるなんて、オラは幸せもんだぁ…。

　「やあ旭。昨日はお楽しみだったね」

　「おい言い方」

　生徒会室に入ると皇先輩が楽しそうに言ってきた。

　この人、いつから俺を名前で呼ぶようになったんだ？やっぱイケメンだから？イケメンだからって何しても許されると思うなよ？別にいいけど。

　「てか、楓は昨日、陽葵の友達として来たんですよ。俺は関係ないです」

　「陽葵？」

　「あぁ、俺の姉です」

　「へぇ、そうなんだ。眠れてないみたいだからてっきり夜を一緒に楽しんだものかと」

　「だから言い方ァ！」

　あんた、ネタにしてるけど自分の妹だぞ？なんでそんなに笑っていられるの？どこぞの馬の骨と一つ屋根の下で一晩過ごしたんだぞ？何かあったらどうするんだ？！いや、何もする気は無いんだけどね？！

　「…さっきから何の話をしているんです？」

　「私たち、全然わかってないんだけど」

　蚊帳の外状態だった羽月先輩と雨宮先輩が聞いてくる。

　「あぁ、昨日俺の妹が旭の家に泊まりにいったんだよ」

　「いやだから俺じゃなくて姉の友達として！」

　「それで朝、酷い顔をしてたんだね」

　「あ、いや、それが理由で眠れなかった訳じゃないです」

　何か話の流れ的に俺が楓に欲情して眠れなかったみたいになってるけど全然違うからな。

　「もうこの話は終わり！さっさと仕事しますよ！」

　これ以上何か言われるのも嫌なので強引に話を変える。てかあんたら、仕事しろや。

　「そういえば、佐倉くんは好きな人がいるんだったよね」

　「いや、話し終わったんじゃ」

　雨宮先輩、あなた前々から思ってましたが多分、頭残念な人ですよね？

　というかそれ言っちゃいます？てか何で今言った？

　俺も言ってやろうか？あんたが皇先輩が好きだったんだって。

　空気が重くなる予感しかしないな。うん、やめよう。

　「皇君の妹さんのことなの？」

　「あ、話し変える気ないんですね…」

　そんなことを考えている間も、雨宮先輩の好奇心は止まらないようだ。

　「別に、楓じゃないですよ」

　「なに？どういことだ旭」

　「あんたがどういうことだよ」

　もうやだ、おうち帰りたい…。