第37話 夏休み前の
「夏休みだぁ!」
期末テストも終業式も終わり、俺たちは明日から夏休みに入る。
部活に励むのもよし、勉強に励むのもよし。
ゴロゴロして暇な時間を過ごすのもよし。
与えられた課題をしっかりこなせば基本何をしようが学校側は何も言わない。あ、犯罪に関わることはダメだよ。
「テンション高いな」
そう言って高橋が近づいてくる。
「そりゃな、明日から学校来なくていいから」
逆にテンション上がらない理由を教えてほしい。
「でもしばらく会う機会が減るんだぜ」
「なんだお前、もしかして寂しいのかぁ〜?」
「なんだこいつうぜぇ」
どうしたの高橋くん。俺にしばらく会えないからって、テンション上がりきらないの?あらまぁ、お可愛いわねぇ。
「というか、連絡先あるんだし会おうと思えばいつでも会えるだろ」
「あー、そういえばそうか」
なんなら同じクラスで同じゲームしてる奴らとも交換してグループチャットも開設しちゃってるし。学校を気にしないで朝までゲームできるのか…。やべぇ、これからのことを考えるとすげぇワクワクして来た。もう眠れないかもしれない。
「明日から目覚まし時計とはしばらく会わなくて済むのか…」
「そういえば、昨日、副会長からなんて言われたんだ?というか何やらかしたんだ?」
「俺が何かした前提で話すのやめてくんない?」
「え?違うの?」
「てめぇ」
こいつ、俺のことをなんだと思ってるんだ。こんな純粋な男子高校生他にはいないだろうが。
「別に、夏休み中、生徒会の仕事手伝ってくれないかって言われただけだよ」
「…目覚まし時計と会わなくていいのか?」
「…あっ」
う、嘘だ。俺はまだ、あいつと顔を合わせる日々が続くのか?耳元で発狂され続けるのか?
「いやだぁぁぁぁぁぁ!!」
「そこまでなる?」
思わず頭を抱えてしまう。やばい、今から生徒会の手伝い断れないかな。
「あ、旭くん…どうしたの?」
「どうしたの旭君。とうとう頭逝っちゃった?」
楓と美波が絶望する俺に近づいて来た。
おい美波、とうとうってなんだ?俺がもともと頭おかしいやつみたいじゃんか。
「旭が夏休み中に生徒会の手伝いすることになったんだってさ」
「あらぁ、大変ねぇ〜」
「生徒会…って…もしかして…」
こいつら、他人の不幸を笑いやがって。
「そう言うお前らは部活とかないのか?」
というか、高橋は入っていないのはわかるが、こいつらは部活に入ってるのか?
「わたしは、入ってないよ」
楓は入っていないのか。このクラス帰宅部多くない?
「家庭部は文化祭の準備をちょっとするくらいかなぁ」
「家庭部…?」
「今似合わないって思ったでしょ」
美波が…家庭部?なんというか、そう言う細かいことできるのかこいつ。
「流歌君は夏休み中どうなの?」
「俺はみんなが仕事してる間、惰眠を貪るぜ」
「最低だ」
「お前の家のクーラー壊れちまえ」
「…そんなに言う?」
「あはは…」
夏休みに早起きしないといけない日があると思うと、上がっていたテンションもすっかり下がってしまっていた。
「でも、そんなに悲観することもないんじゃない?夏休みといったらイベントが盛り沢山だよ!」
「たしかに、ソシャゲも石配ったりするしな」
「いや、そっちじゃなくて」
美波はおそらく、夏祭りや海開きのようなことを言っているのだろう。まぁでも、行く予定も特にないし、こちらから誘う気もない。誘われたら行こうかな、ぐらいにしか思っていない。
「でもさ…しばらく会うことってないんだよね…」
「あ…」
「いや、さっきも高橋に言ったが、連絡先交換してるんだから会う約束とか通話とか適当にすればいいんじゃないの?」
「…いいの?」
「え?ダメなの?」
楓と美波はキョトンとした顔で俺を見てくる。え、なに?俺なんか言った?
「俺、お前のそういうとこ、すげぇなって思うわ」
「いや、だからなに?」
まじでなんなのこの人たち。
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