第12話 誘っても
窓側席最前列、そこに位置しているとどうしても眠くなってきてしまう。
春な温かい日差し、心地の良い風、神は俺に『寝てもいいぜ』と言われているような気がしてならない。
もう、寝てもいいんじゃないか、俺の首が限界でカクンカクンと前後運動し始めている。
「聞いているのか?佐倉弟」
というか、今ってなんの授業だっけ。午前の最後の授業だから空腹で頭が回らん。
授業時間もそろそろ終わりだろう。だったらこのまま目を閉じて昼休みに誰かに起こしてもらおう。
どうせ残り数分だ。ばれやしないさ。
「さ、佐倉くん…お、起きて~」
かわいらしい声がさらに俺を夢の世界へと誘ってくる。
あばよみんな、また来世で会おうぜ。夢の世界へさぁ行こう。
夢の世界への準備を終えると急に椅子から衝撃がきて一気に頭が覚醒する。
なんだ?敵襲か?!
何事かと顔を上げる。すると目の前には三島先生が鋭い目つきでにらみつけてきていた。あらやだステータス下がっちゃいそう。
「遅刻だけではなく、居眠りもか…そんなに追加課題が欲しいのか」
「いえ、結構です」
「あ?」
だから怖いって。あんたかわいいのにどっからその怖さ出せるの?
「すみません。許してください」
なんでもしますから!何でもするとは言っていない。
「なら、チャンスをあげよう」
「チャンス?」
「この黒板にある問題の答えを言ってみろ。正解したら課題はなしだ」
「おぉ、神よ」
「ただし、解答権は一回のみだ」
そう言われて黒板の問題に目を通す。
ふむ、わからん。なにこれ、本当に今日の授業でやった?来年の範囲の間違いじゃないの?
すると隣の皇さんが先生にばれないように何か言ってきた。
「…5X」
教科書で口元を隠しながら上目遣いで何かを言ってきている。
「かわいい」
「よし、課題追加な」
おうふ。
無事に追加課題を手に入れることが出来た。テーテッテレー♪アサヒは課題を手に入れた!はぁ。
「おい旭、昼飯食おうぜ」
「おーいいぞー」
高橋が俺の席にやってきた。あの購買事変の後、俺たちは弁当を持ってくることを決意した。といっても俺は朝コンビニで買ってるだけなんだが。
「皇さん、一緒に食べよ!」
「わたしもー!」
皇さんのほうにも女の子が寄ってきている。その際、皇さんから視線が送られてくる。あれは「help!」の目ですね。
俺はそんな皇さんに親指を立ててスルーをした。
「そういえば朝香がいないな」
「朝香ならあそこにいるよ」
陽葵が奥の方を指さす。
見ると朝香は自分の席に座ってこっちを見ていた。前回、俺が昼飯断ったから遠慮しているのだろうか。だとしたら申しわけない。
「高橋…なんでお前一緒に来ないんだよ」
「いや、誘ったけど伊織さんが『机片付けるから先行ってて』って言ったからさ」
「んじゃ、もう大丈夫そうだな」
俺は席を立ち朝香の元へと向かう。
「朝香、一緒に昼飯食おうぜ」
「あ、旭…」
何故か困惑する朝香。どうしたんだろうか。
「ご、ごめんね、今日は私、用事があるから」
「そ、そうか」
朝香は弁当を持ち教室を出ていく。
この数十秒のやり取りの中、朝香は俺と目を合わせることはなかった。
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