198.おかえり
「ん? 反応が一つ消えたぞ? 誰だ?」
艦載機一覧を表示させると一か所だけ赤い文字になっている場所があった。
「おいおい! あんな原始人に何やられちゃってんだよ! お前は帰ったら再訓練だからな!」
『ふむ、時間をかけすぎたかもしれんな。追い詰められた子犬は牙をむく、という奴だろう』
しかしアロハシャツの機嫌が直る事はない。
「お前ら! 次にやられる奴がいたら全員で銀河探索隊の施設で訓練プログラム一ヶ月だ!」
銀河探索隊というのが何かは知らないが、それを聞いた途端に人型艦載機の動きが良くなった。
余程恐ろしい施設なのだろう。
しかし動きが良くなってしまったため、ブルース達は二機目を破壊できずに苦戦していた。
「くっ! 遊びがなくなって船を一撃で破壊してくるし速度がさっきと全く違う!」
「あわわわ、レーダーで追うのが精いっぱいなんだよ、ダヨー!」
「長距離攻撃だけでなく接近戦でもレーザーブレードを使い始めましたわ!」
「きゃぁ! このっ、乙女の背後から忍び寄るなんてマナーがなってないわよ!」
「オレンジーナ、乙女というには年齢が行き過ぎて「おだまり!」わかりました」
周りの味方艦は次々に落とされていき、ブルース達も足を落ち着ける場所が無いため五人で固まって行動をしている。
今は何とか攻撃を避けているのだが、こうなってはブルース達の攻撃はもう当たらない。
「ブラウン! 回収した敵人型艦載機の解析にかかる時間は⁉」
『十三分二十六秒を予定しています』
「よし、みんなその間だけでも何とか凌ごう!」
それぞれから返事が返ってくるが、その声は悲鳴混じりだ。
何とか五分が過ぎた。
ブルース達は無事だが味方艦載機は残り二割、艦船は六割にまで減っていた。
九分が過ぎた時には艦載機は壊滅状態、艦船は残り二割となる。
十一分、まともに攻撃しているのはブルース達とブラウンのみになっていた。
ブラウンの周囲で何とか攻撃をしのいでいるが、やはりブルース達の攻撃はかすりもしない。
そして包囲網は徐々に狭まって来た。
「ごめんみんな……もうこれ以上なにをしたらいいのか……」
「仕方がないんだよ、相手が悪かったんだな、ダナ」
「お兄様が謝る必要はありませんわ。私達は精いっぱいやりましたもの」
「そうよブルー、私達でダメなら何をやっても無理よ」
「申し訳ありませんマスター、お役に立てず」
『解析完了まで一分八秒。申し訳ありません私の能力不足です』
敵人型艦載機の包囲が狭まり約十キロメートルの距離で動きを止める。
格闘戦をしていた敵人型艦載機も包囲網に戻った。
そして一斉に銃口をブルース達に向けると、チャージをしているのか銃口に光が集まり光球が大きくなっていく。
ブルース達は一か所に固まり、その時を来るのを待つだけだ。
そして光球がひと
ノイズとも悲鳴ともとれる信号があたり一帯に広がり、ブルース達はおろか敵人型艦載機も何が起きたのか理解できず、ただ爆発があった場所を眺めている。
「なに? 一体何があったんだ?」
「ひゃっほ~い! ブルー君! 私は帰って来たー!」
遠くから一筋の光がブラウン目がけて飛んでくると、ブラウンは重力緩衝エリアを指定、何かを受け止めた。
『お帰りなさいローザ』
ブラウンの前にはローザ艦が停まっていた。
どうやら体当たり攻撃が外れて彼方へと飛んでいってしまったが、何とか時間をかけて戻って来たようだ。
しかも加速距離がかなり長かったのか、亜光速で戻ってくるというオマケつきだ。
「「「「ローザ!」」」」
ローザが戻って来て一番驚いているのは敵だった。
「あんだよ今のは! 一体どっから来た! フィールドはどうなってんだ!!」
『ふむ、どうやら数光年先まで飛んでいったカミカゼ攻撃が、今になって帰って来たようだ。光速の九十一パーセントの速度で――』
「んなこたーどうでも良いんだよ! 落とされたんだぞ! 俺達の! ワッケイの船が!」
『そうだな。ここ千年は艦船が撃破された記録はないから、ワシ等は歴史的な場面に遭遇した事になる』
「くそっ! 空間湾曲フィールドを外すんじゃなかったぜ、まさかそんな速度で命中させるとは思わなかった」
『敵ながらあっぱれという奴だな』
「うるせぇ!! おいお前ら! そいつらを一瞬で消滅させろ!」
『む? 数が足りない様だが?』
「あん?」
ブルース達はすでにブラウンの中に入っており、改修作業に入っていた。
『艦長、全員分の改修を完了しました』
「よし、ブラウンのバージョンアップも急いで!」
『こちらのシステム改修には二十二秒かかります。その間は全機能が停止されます』
「わかった、じゃあ時間を稼いでくるよ!」
格納庫から六人が出撃する。
その姿は以前と似ているが、各種武装の巨大化による能力向上、スラスターの数が増えたことにより亜空間戦闘が可能となり、機体自体の能力は敵人型艦載機に勝るとも劣らない性能となっている。
「よし、今度はこっちの番だ!」
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