115.スキル対応の人型兵器

 人型機動兵器四機が敵レーダー圏内に入る前に一旦止まり、最終確認を始める。


「まずはシルバーが先陣を切って敵を攪乱かくらん、その後は三人で小さい船から破壊していく、で大丈夫だね?」


「大丈夫だよ! 本当は私が先陣を切りたいけど、流石に初めて乗るからシルバーに任せるね!」


「まかせて下さい。ローザが暴れやすいように撹乱します」


「わ、私も暴れるのかな、カナ?」


 宇宙空間で自分の思い通りに動く人型機動兵器。

 ブルースとローザは楽しそうだが、シアンは少し怖そうだ。


「今後は乗る事が増えると思うから、暴れないまでも操作になれた方が良いかもしれないね」


「ううっ、わかったんだよ、ダヨ」


「それでは最大戦速で接近しますので、マスター達は好きなタイミングで入ってきてください」


 シルバーはヴェイロンVXのバーニアをふかし、青い炎が長く糸を引く。

 あっという間に接敵した様で、レーザーやミサイルが光り始めた。


「よし、僕達も行こう!」


 三機もブースターを全開にし、シルバーの後に続く。

 シルバーは船の間をすり抜けるように飛び回り、船から攻撃できないようにしている。

 だがすぐに空母の下部から十本の砲身が現れると、中から艦載機が発射される。

 

 艦載機は以前戦ったモノと同じで全長二十五メートル程の楕円形で、レーザーの出力を落として攻撃している。

 百近い艦載機がシルバーを追いかけるが、機動力ではヴェイロンVXの方が圧倒的に上であり、攻撃も軽々とかわしている。


「当たらない! なんだあの人型は!」

「大きなライフルを抱えているが、アレは光学兵器か? 質量兵器か?」

「ロボットなんてロマンがあるじゃないか! とっ捕まえて調べようぜ!」


 艦載機のパイロット達はそんな会話をしているが、攻撃が当たりもしないので捕まえるどころの話ではない。

 しかもシルバー一機に気を取られているモノだから、さらに接近する三機の発見が遅れてしまう。


 駆逐艦が数隻火を噴いて爆散した。

 それにより整然と並んでいた隊列に乱れが生じ、各艦が個々に迎撃をしようとする。

 駆逐艦は全長五百メートルほどで、先端が潰れて横に平らになっている。

 その上下にレーザーのレンズが三十門ずつ、船体の両側面には二十門ずつが配置されている。


 そのレーザーで撃ち落とそうとするのだが、なにぶん人型機動兵器は小さく動きが速かった。

 駆逐艦はもちろん、巡洋艦は全長二千メートルあるので、攻撃すらままならずバリアフィールドを展開するしかない。


 空母から更に艦載機が発射された。

 空母は全長五千メートル、四角いツチノコの様に真ん中が膨らんでいる。

 膨らんでいる下面から十本の射出口が砲身の様に起き上がり、残りの艦載機を全て発射する。


 その総数は三百機。

 戦艦三隻からも艦載機が出たようで、その数は四百機を超えた。

 一見多そうに見えるのだが、広大な宇宙では大した数ではない。


「はわわわ、いっぱいいるんだな、ダナ! 来ないで欲しいんだよ、ダヨー!」


 シアンが高速で移動しながら叫ぶと、ヴェイロンVXの全身からレーザーが発射された。

 糸のように細いレーザーだが、艦載機を倒すには十分すぎる威力だった。

 人型機動兵器が見えなくなるほどの数が発射され、一気に敵艦載機を百近くを減らした。


「シアン……スゴ! 私も負けてらんないね!」


 とはいえローザのハンマーには全方位攻撃が出来る武器が無いため、一騎ずつ倒していくしかない……はずだった。


『スキルに対応させてあります。生身の時と同じ感覚で技を使ってください』


「え? 技ってレイジングスイングとか?」


『はい』


「ん~?? ま、いっか! いっくよ~≪レイジングスイング≫!」


 コックピットで剣を振り回す動きをすると、ハンマーは同じようにレーザーハルバードを振り回す。

 すると周囲にいた艦載機が吹き飛ばされていった。


「へ⁉ マジだった! 生身と同じ感覚で技が使えるんだ!」


 ローザは肉弾戦ならお手のもの、艦載機はシアンに任せて駆逐艦へ向かうと、速度を緩めずに拳を握りしめた。


「≪バーニングナックル≫!」


 ローザの右腕に指のない巨大な籠手が装着されると、ハンマーの右腕には六角形の装甲が組み合わさり二回りほど大きくなる。

 右腕が駆逐艦に命中すると爆音と共に炎の竜巻が発生し、駆逐艦が炎にのみこまれて炎上、さらに炎は勢いが止まらず三隻の駆逐艦を破壊した。


「……ローザの技って破壊力抜群とは思ってたけど、人型機動兵器に乗ると更に威力が増してない?」


「マスターのスキルにも対応しているはずです。第三ランクの近接防衛火器システムファランクスの融合を試されては?」


「え? パワードスーツにはなれたけど、流石にコレとの融合は無理じゃない?」


『可能です。むしろそちらに最適化されております』


「だそうです」


「む、無茶苦茶だ……でもやってみよう、ファランクス!」


 ブルースの体にフルプレートの鎧が装着されるが、すぐに解除された。小さな魔動力機関装甲輸送車ファランクスがコックピットに現れて消え、小さな近接防衛火器システムファランクスが現れて消え、レーザー兵器搭載航空機型ドローンファランクスが現れて消えた。


「え? なに? 今のなに?」


 混乱するブルースをよそに、人型機動兵器は一回り大きくなっていた。

 丸みを帯びていたボディーは流線形になり、両肩には巨大なレーザーカノン、巨大なブースター内臓バックパックにはミサイルが満載され、右手には縦に二門並んだレールガン、左手には丸いレーザーシールドが持たれていた。

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