13.それはスキルではありません、いいですね
「はじめまして皆さま、弟がお世話になっております」
驚く周囲の反応をよそに、オレンジーナは丁寧に頭を下げる。
そして何故かつられて頭を下げる面々。
「いやいやぁ~、待って待ってぇ、どうしてワイズマン家の
「おほほほ、弟が怪我をしていないか様子を見に来ただけですわ」
「う、うむ、
「あれ? 今って国境で小競り合いが発生して、そっちに出向いてるって話じゃなかった?」
筋骨隆々パートⅠとローザがオレンジーナを見るが、とぼけるように「おほほほほほ」と笑い飛ばしている。
どちらにせよ、この国にいる以上は大なり小なりオレンジーナの、
「それで姉さんどうしたの? 本当に様子を見に来ただけな訳じゃないでしょ?」
「そうね、ブルースの無事が確認できたから本題に入るわ。『運び屋ブルース、現在我が国の国境は侵略者に脅かされている。よって要人護衛の任に付くよう要請する』よ」
「えっと、姉さんも知ってると思うけど、僕は護衛が出来るような力はなくって……」
「もちろん
どうやらブルースの
そして今回のレイクモンスター討伐実績により、鉄の箱の安全性が確認された。
「確かに
「ブルース?
「だから
「
「はいはい、お二人ともそこまで。ジーナ姉様、実はあの鉄の箱もファランクスなのですわ」
どういう事? という顔でエメラルダを見たため、ブルースも思い出したように説明を始める。
「じゃあ
首を縦に振る。
エメラルダに説明した時は「流石お兄様!」と喜んでいたのだが、オレンジーナは難しい顔をして考え込んでいる。
「ブルース、あなたまさか……ボーダーレスになったの?」
ボーダーレス。
スキルブックに書かれている一つ目のスキルを
予言はされていたが実際に到達した者はおらず、実質不可能と言われていた。
「そう、なのかな。ある日突然頭に浮かんだんだ」
「ブルース! これは凄い事なのよ!? ああ! やっぱり私の可愛い弟は素晴らしい子だったわ! そうとなればやる事は一つね!」
コホンと咳払いをして、今までにない真面目な表情をした。
「ここでの会話は部外秘とします。今後一切、ブルースのスキルの事に言及する事を固く禁じます。外にいる町長さんも、よろしいですね」
「ど、どうしてすかお姉様! ブルー兄様の力を知らしめれば、ワイズマン家に戻る事も、それどころか軍でも重宝――」
「ストップ。それ以上言ってはいけません。コレは決定事項です。ブルースも
「う、うんわかった」
「ああそれと、鍛冶屋はもう死んだ事にして、同じ物はもう作れないとしましょう」
なぜか表立ってブルースの力を示す事に拒絶反応を示すオレンジーナ。
姉として弟の能力が認められることが嬉しく無いのだろうか。
「それでは私は戻りますが、要人護衛の依頼、受けてくれるわよね?」
「え? ああうん、受けます。それで要人って誰なの?」
「ゴールドバーグ王国第三王子、ジャレイ様よ」
オレンジーナが帰り、楽しいはずの報酬分配は静かに行われた。
「な、なぁ少年、君の姉上、オレンジーナ様は、いつもあんなに厳しい顔をされるのか?」
「いえ、僕もあんな姉は初めて見ました」
「戦場の女神様かぁ~、慈愛に満ちた笑顔を絶やさない人って聞いてたけどぉ~、なぁ~んかぁ~、すっごい怖かったんですけどぉ~?」
「わ、私、あんな義理姉とやっていけるかしら」
「ちょっとローザさん!? どうしてジーナ姉様と姉妹になる前提なんですか!」
「ほらほらお黙り。数え間違えて少なくしちまうよ」
老婆に言われ、口をつぐむ。
しかしため息をつくと外に向けて声をかけた。
「キル坊、いつまでそこで呆けてるんだい」
静かに扉が開くと、全身汗だらけのキリアム町長が立っていた。
「こ、殺されるかと思った……あんな恐ろしくて美しい笑顔、初めて見たぜ」
他の者にはそこまで強く言わなかったが、町長には強めにお願いしたようだ。
とにかくブルースの
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