第2.5話 二千年同盟会議

 時は遡り、3人が迷宮を探索中のことであった。

「アリシア、これから会議だ。多分みんなもう揃っていると思う。」

 アリシアは神妙な顔で考え込んでいる。

「そうですか・・・3年ぶりくらいでしょうか。では、あまり待たせても悪いですし、早くいきましょうか。」


 2人は国のほぼ中央に位置する大きな部屋へと向かった。


「おっそーーーい!!!あんた人を呼び出しておいて遅れるの本当にやめなさいよ!」

「・・・うるさいやつだ。」

 そこには桃色の髪を二つ結びにし、派手なローブを着て、赤い大きな宝石がついた立派な杖をもった女性と顔をガスマスクのようなもので顔を隠し、さらにローブで体全体を隠した怪しい男性がいた。

「やあやあ遅れてすまないね、リサにゴルーグ。アリシアの生徒たちを迷宮に見送っていたんだ。」

「ああ、毎度の子守か?いや・・・おままごとって言った方が正しいのか。」

 くっくっくと嫌味な笑い声を上げてゴルーグが言う。

「ゴルーグ!あんたも相変わらずアリシアのこと大好きねー。でもちょっかい出して好かれることはないわよ?」

「うるさい雌が。この場で殺してやろうか?」

「あんた程度であたしをやれるとでも?」

 一触即発の事態へと発展してしまった。

「はいはいやめろお前たち。とまあこれで全員か。これより3年ぶりの二千年同盟会議を始める。」

 長が会議の開始を宣言した。

「ラースタがいないということは、そういうことなのですね。」

 アリシアが悲しそうな顔で長に尋ねた。

「そうだ。ラースタが我々の中での初めてをかって出てくれた。」

「ラースタ・・・。5人で始めた同盟でしたのにとうとう1人欠けてしまいましたね。」

 空気が重くなる。仲間が欠けてみなが悲しんでいる。

「今回集まってもらったのはこのラースタの件だ。」

 長が進行を進めていく。

「回復や補助、さらにはさまざまな付与の魔法に長けていたラースタだったが、そのラースタの研究成果たちが迷宮に飲まれた。」

「ラースタの魔法って、あいつが独自に作ったものがほとんどよね。あーあもったいない。」

「そうだ。しかもまあわかると思うが、おそらくこの国始まって以来の規模の迷宮になっているだろう。」

「じゃああたしとアリシアと・・・ゴルーグも行く?」

「おれはラースタの研究成果には興味がない。それにやらねばならないことがたくさんある。もう時間はない。」

 ゴルーグはリサの提案を素っ気なく断った。

「昔からひねくれたやつだったけど、最近はもう目も当てられないわね。」

 やれやれとリサは首を振った。

「いや人選はもう決めている。この迷宮攻略はアリシアの教え子の3人に任せるつもりだ。」

 3人は長の言葉に衝撃を受ける。一番初めに言葉を発したのはアリシアだ。

「ちょっと待ってください!あの子たちにそんな大規模な迷宮なんて無理です。」

「もちろんあと2、3個迷宮を攻略してもらい経験を積んでからの話ではある。」

 長はアリシアの意見と真っ向から戦う。

「あのひよっこ共に迷宮攻略ねえ。いいんじゃない?どのみちあいつらがやらなきゃいけないことよ。」

「リサ!無責任なこと言わないで!あの子たちはもっと大事な役目があるのよ!?」

「大事な役目があるから安全な箱に入れておきましょうってこと?」

「そうじゃない!まだ彼女らの実力じゃそれは困難だと言っているのよ。」

「アリシアこそ何言っているの?あいつら強いわよ。ま、あたしの敵じゃないけど。」

「あなたにも勝てないのにそんな規模の迷宮なんて無理よ!」

「なんですってー!?それは聞き捨てならないわね!」

 議論が白熱してきたので、長が止めに入った。

「そこまでだ。アリシア、彼女らの力不足というならそれを補えるようにするんだ。それが君の役目だろう?」

「アリシア、なんならおれのクスリでもやろうか?あいつらでもバカみたいに強くできるぞ?」

 ゴルーグがさらにアリシアを煽る。アリシアはゴルーグを睨んだ。

「リサもゴルーグも最大限アリシアと彼女らを助けてあげてほしい。」

 長が話をまとめた。そしてさらに話を続けた。

「さて、次が本題だ。ラースタが欠けたのは前回の会議のすぐ後のことだ。つまりもうすぐ3年が経つということだ。」

 皆の雰囲気が変わる。悲しみや諦め、清々しさとかそういったものが入り混じった雰囲気である。

「そう・・・ラースタでも3年が限界なのね。」

「ああ、そうだ。次は誰が行くか・・・それを決めるのが今日の本題だ。」

 重い空気が流れる。長い長い静寂であった。

 その静寂を破ったのはリサだった。

「ま、あたししかいないわね!」

 リサが言った。無理にでも明るくいようという感じが見て取れた。

「そんな!あなたみたいな優秀な魔法使いを失うわけにはいかないじゃない!ここは一番弱い私が・・・」

 アリシアが反論する。

「まったくアリシアは感情論ばっかりね。アリシアにはあのひよっこ共を育てるって役目があるし、ゴルーグにもやってもらうことがあるわけでしょ?それに今のあんたたちじゃ、2か月がいいところね。その点あたしならラースタと同じかそれ以上保つことができるわ。」

 リサは冷静にアリシアを論破する。アリシアに反論できる要素はない。

「・・・頼めるかリサ?」

 長が最後の意思確認を行う。

「もちろんよ。まあ、あたしはそれなりに満足できたし。・・・そうだ!いいこと考えたわ!」

 リサは快諾し、ある企画を思いついた。

「アリシア!あの子たちに伝えなさい。私が最後の授業をしてあげるって。そうね・・・1週間後くらいかしら?」

「リサ・・・」

 アリシアはリサを抱きしめる。

「アリシア、あたしたちの目的を忘れちゃダメよ。」


「これにて会議を終了する。3人とも、残された時間は少ない。気を引き締めていこう。」

 長が会議の終了を宣言した。

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