第2話 迷宮にて

「うわーーーーー!!!迷宮ひろーーーーい!!!」

 リューカが叫んだ声が迷宮内に反響する。

「リューカうっさい!声が響くんだから大声出さないで!」

「セレナの声もまあまあ大きいよ。」

 セレナは冷静にツッコミを入れるカインをにらんでいた。


「とりあえず見たところ、敵は見当たらないね。」

 カインが辺りをを見渡す。ここはおよそ入り口からは考えられないくらい大規模の鍾乳洞みたいな場所であった。これが魔力のひずみによる空間歪曲の影響だろう。

 静かにしていると遠くから水滴が落ちるような音が響いている。

「とりあえず進んでみる前に、罠とかがないかどうか調べないと。リューカお願いできるか?先頭はオレが歩くよ。」

「おっけー!じゃあカインに魔法をかけちゃうね。」

 リューカが魔力を込め、魔法をカインに向けて放つ。

罠を検知する魔法トリアーダ!」

 リューカの唱えた魔法でカインがオレンジ色の淡い光に包まれた。

「この魔法便利ね。カインがこれで先頭を歩いてくれたら先も見やすいじゃない。」

「セレナが真ん中でリューカが後ろって隊列でいいかな?」

「いやダメよ!リューカを後ろにしたら、勝手に素材採集に行っちゃうかもしれないじゃない。」

「エー?イカナイヨー?」

 目をそらしながら答えるリューカ。溜息をつき、カインは言いなおす。

「リューカは真ん中、セレナが後ろってことで。後ろもかなり危険だから気を付けて。」

 カインが2人に指示を出す。2人もうなずく。さっきよりも少しだけ真面目な顔をしているがリューカは少しだけ不満そうである。

「じゃあリューカ、号令をお願い。」

 カインがリューカにお願いする。その瞬間リューカは笑顔で応えた。

「よーーーーし!みんな!しゅっぱーーーーーつ!」

 リューカが拳を挙げた。2人もそれに習う。リューカの取り扱いには長けている2人であった。


「なーんか思ったよりなんにもないね迷宮って。」

 退屈そうにリューカが言う。

 出発の号令からおよそ3時間。目ぼしい素材はなければ、敵も出てこない。長い散歩をしているようなものであった。

「この空間歪曲はすごいな。3時間一本道しかないところなんてこの国にはないぞ。」

「ねー。ちょっと休憩しない?さすがに歩きっぱなしは疲れるわ。」

 セレナの表情は辛そうである。カインもリューカもセレナの提案に賛成した。

 3人は石に腰をかけ休むことにした。長丁場になる迷宮攻略は休憩が大事である。


「気温とか空気の感じに変化がなくてよかったよ。聞いた話だと灼熱の迷宮や猛毒の気体だけの迷宮なんてのもあるらしいし。」

「ていうか私たちも迷宮になにがあるか分からなかったから、最初から防御魔法を張ってなきゃいけなかったのね。」

「喉乾いたー。セレナ、飲み物出してー。」

 リューカがセレナに水筒を差し出す。

「いいわよ、飲み水を出す魔法ウルウラ

 リューカの水筒に水が充填される。それと同時に水の色がきれいな緑色に変化した。

「リューカ、水筒に何入れているの?」

「これはねー・・・私が調合した粉、その名も「強力魔力増強粉」だよ!水に溶けやすいように工夫したんだー。」

 リューカは胸を張ってセレナの質問に答える。なにやら特殊なにおいがし始めた。

「ネーミングセンスがよく分からないわね。それになんていうか、嫌いじゃないんだけど摂取してはいけないもののにおいがするわ・・・。」

「少し飲んでみなよ!多分セレナなら耐えられるよ。」

「耐えなきゃいけないものをこんなところで勧めないでよ!」

 残念そうな顔してリューカはその液体を飲み始めた。

「ぷはー。やっぱりセレナが入れたほうがおいしいんだよなあ。なんでだろ?」

 その言葉にセレナが強く反応した。

「ふっふっふ・・・それはそうよね!なんたって私は―」

 そのとき、リューカとカインが洞窟の先を睨み、身構えた。


「カイン!」

「出たね・・・魔物。ちょっと大きめかもしれないな。」

 洞窟の奥から、大型の四足歩行の獣が2体ゆっくりと歩いてきた。その口元からは大きくて頑丈そうな牙が見え、その双眸は明らかにこちらを狙っていた。

「あんたたち昔っからそうだけど、よく魔物の気配とかわかるわね。」

 セレナが呆れたように2人に向かって言う。

「じゃ、いくわよ。身体を強化する魔法ディグナス!」

 セレナがカインに魔法をかける。

「行ってくる。バックアップはよろしく。」

 ものすごいスピードでカインが魔物の方に向かって行った。

「はっ!!!」

 カインが魔物の1体を正面から右手でぶん殴った。と同時に踏み込んだ左脚を軽やかに上げ、反動で前に出た右脚を軸にして左脚がもう1体の魔物を吹き飛ばした。

拳で衝撃を放つ魔法フィ―ンクト

 カインの両手に魔法がかかる。そして、先ほど正面から攻撃を食らってひるんでいる魔物を再度殴りつけた。大きな音ともに衝撃が魔物を貫く。

『グゥウウアアアア!!!!』

 魔物のうめき声があがる。しかし魔物も黙ってはやられない。反撃のためにその大きな脚の先端にある鋭利で巨大な爪をカインに振り下ろした。

「遅いけど・・・変な魔法がかかっているな。ならこっちだ。」

 前方からくる巨大な爪の攻撃を完全にかわし、もう1体の魔物に攻撃を加える。

 しかし、よけた爪から衝撃波が後方にいたリューカとセレナを襲う。

「爪にあんな魔法が付与されているのね。毒かなと思ってたけど。」

 セレナが冷静に分析する。その横でリューカは目を輝かせたまま固まっている。

攻撃から身を守る魔法ガーリース!」

 青い光が半球状に広がり、リューカとセレナを衝撃波から保護した。

「リューカ!あんた、そろそろ戦ってきなさいよ。」

「うーん実は、さっきから力が余ってて多分加減ができない気がする。カイン巻き込んじゃうかも。」

「あの変なクスリのせいでしょ!ほらちょうどいいじゃない、1体こっちに向かってきているわよ。この距離でなら巻き込まないでしょ?」

「カインに一声かけておこうかなー。まあいっか!」

 そういうとリューカは猛スピードで向かってくる魔物に向けて、左手を向けた。

「んーこういうところでは炎とか爆発の魔法は向いてないかな。じゃあこれで・・・氷槍を放つ魔法ヒースクラフ!」

 リューカの左手の大きな魔法陣から魔物の半分くらいの大きさの氷の槍が現れた。

「あ!やっぱりだめだー。カイーーーン!!!ちょっと逃げてー!」

 リューカが前方にいるカインに注意喚起する。その間にも魔物が近づいてきている。

「いっくよー!それっ!!!」

 リューカが放った氷の槍が勢いよく魔物に向かって行った。そしてその槍はいともたやすく魔物を貫通した。

「はーーー。相変わらずものすっごい威力ね。さすが天才は違うわー。」

 セレナは感心したように言う。

「初実践っていうけど、今までやってきた戦闘訓練に比べたらなんてことないね。」

 リューカは少し物足りなさそうだ。

「だってこのヒーラーさまの出番がないものね!」

「こっちも終わったよ。リューカ、あんな大きな魔法を撃つならもう少しはやめに言ってくれ。」

 カインが魔物を引きずってこちらに戻ってきた。

「ごめーん。さっき飲んだクスリの効果がすごくてコントロールが利かなかったよ。気を付けるね。」

「それよりコイツ持ってきたから、素材でも回収したらいいんじゃない?」

「おおっ!素材のことすっかり忘れてた。ありがとうカイン!」

 リューカは魔物の死骸から素材を回収するのに夢中になってしまった。

「お疲れさま、カイン。どう?近接戦闘のプロとして、初実践は?」

 セレナがカインを労いながら聞く。

「まだ実際の魔物の硬さに慣れてないって感じかな。本当なら1体もそっちに行かせないようにしたかったんだけど。」

 少し納得のいってない表情を浮かべるカイン。

「そうね。私の強化魔法があってもまだ動き固かったものね。まあでも許容範囲って感じかしら?」

「今までやってきた戦闘訓練でこんな動きしてたら、アリシア先生に怒られちゃうよ。」

 遠い目をしながらカインとセレナは話す。

「もうあの戦闘訓練はこりごりね・・・。最近ようやく座学中心になってきたから良かったけど。」


「おーい!先に進むよー!」

 リューカが素材を剝ぎ取り終えたようで、探索の催促をしてきた。

「なんか有用な素材採れた?」

「んーまあこの爪ぐらいかな!それよりこの先分かれ道になってるの・・・どっちに行けばいいかな?」

「リューカはどっちに行きたい?」

 カインがリューカに尋ねた。リューカの目が泳いでいる。

「んーーーー私はーーーー左かな!なんとなくだけど」

「じゃあ右だね。寄り道はまた今度ね。」

「あんたあれでしょ?全部寄らないと気が済まないだけでしょ?」

 セレナが核心を突く。リューカの目は泳ぎっぱなしである。

「だいたいリューカが一番魔力に敏感なんだし、何年一緒にいると思っているんだか。」

 カインも呆れたようにリューカに言う。

「うーーーーだってー。こっちにレアな素材とかあるかもしれないし。」

 駄々をこねるリューカ。

「今回は初回だし、あんまりアリシア先生を心配させるわけにはいかないからね。なるだけ最短で進んでいくから。」

「はーい。先生は心配性だからしょうがないね。戦闘訓練のときはあんな激しいのになあー。」


 こうしてリューカたちは右の道を進んでいく。リューカの的確な魔力感覚でどんどん迷宮を攻略していく。道中の魔物たちは抜群チームワークと訓練された能力で次々となぎ倒されていった。そして、一行は開けた大きな空間にたどり着いた。

 そこは不思議な文字がたくさん描かれた壁面で囲まれた正方形の部屋であった。

 そして先へと続く道が見当たらないことからここが終着点なのであることがうかがえる。

 おそらくは部屋の中央にいるバカでかい物体がこの迷宮のボスなのであろう。

 彼女らのゆうに3倍はある全長と横幅、その体表は青い金属のようなもので構成されていることがわかる。頭部は球体で、手足があり、直立不動のまま動かない。

 頭部の二つぽっかりと開いた部分は漆黒のままである。


「間違いないよ。あの大きなやつの中に魔石がある。」

 リューカが珍しく真剣な表情で言う。

「強化魔法で準備してから戦闘に入ろう。セレナお願い。」

 カインに強化魔法、セレナ自身とリューカには防御魔法を唱える。

「多分攻撃したら起動するよね?私が先制するよ!」

 リューカが左手を伸ばし、先ほど最初に唱えた魔法をあの『青い巨体』にぶつける。

氷槍を放つ魔法ヒースクラフ!」

 氷の槍が巨体に襲い掛かる。しかし、その体表にまるで吸収されるように氷の槍が消えていった。

 その瞬間、頭部の黒い部分に赤い光が灯った。

「くるぞ!」

 カインが叫んだ瞬間、その巨体では考えられないような速度で3人に襲い掛かってきた。

「くっ・・・はやいな。2人とも、大丈夫か!?」

 攻撃をかわしたカインが2人を気遣う。

「大丈夫よー!やっちゃってカイン!」

 グッと指を立てて、無事を報告する。

「よし、拳を硬質化する魔法フィガードン!」

 拳を魔法で強化し、カインが『青い巨体』を攻撃する。しかし、その表面を構成する金属の硬さを破ることができない。

「硬いな・・・脚を硬質化する魔法ソルガードン!」

 拳だけでなく脚を強化し、連続で攻撃をしかける。が、まったく『青い巨体』には響かなかった。それどころか『青い巨体』はその腕を高速に振り抜き、カインを吹き飛ばしてしまった。カインは壁に叩きつけられ、その衝撃で壊れた壁に埋もれてしまった。

「カイン!あの巨体でなんであんなスピード出せるのよ。・・・リューカ?なにしてるの?」

 セレナがカインの回復に向かおうとしていると、なにやら真剣な顔で考え込んでいるリューカがいた。

「青い金属・・・氷の吸収?それとも魔力自体?どちらにしてもこれだな。」

 リューカがなにかを考え決めたようだった。

「ちっ・・・速いし、重いな。」

 カインが叩きつけられた壁から出てきた。どうやら大きな負傷はしていないようだ。

「カイーーーン!今から撃つからちょっと離れてて!」

 リューカがカインに忠告する。どうやらさっきの反省は生かされている。カインは素早くその場を離れる。

炎球を放つ魔法プロラック!」

 右手に炎の球を出現させたリューカは『青い巨体』の腹部分に思いっきりぶつけた。

 かなり初歩的な魔法のはずだが、さきほどまでのカインの猛攻で一切傷つかなかったその巨体の体表がボロボロになっていた。

「え?あんな魔法でダメージを与えられるの?」

 セレナも驚きを隠せない。カインはそれを見て、魔法を唱えた。

炎を拳に纏わせる魔法プロフィルーガ

 両手に炎で包んだカインはさきほどまでよりさらに速い攻撃を繰り出した。

 まったくダメージが通らなかった体表を崩す。その青い金属から黒い中身が確認できた。

「リューカ、カイン!あんまり炎系の魔法は使っちゃだめよ!空気がなくなっちゃうから。」

 セレナが注意する。

「カイン、あと1発頭部に入れて!あとは私がやるから!」

「了解した。」

 カインが『青い巨体』の頭部に一撃を加える。『青い巨体』もここまでのダメージを負えばもう動くこともできないようだ。

「トドメいっくよー。氷槍を放つ魔法ヒースクラフ!」

 先ほどは利かなかった氷の槍が、黒い中身が剝き出しになった頭部に突き刺さる。

 『青い巨体』が崩れる。氷の槍の先端に妖しく光る宝石があった。


 これが迷宮を構成していた原因である【魔石】だろう。

 魔力が淀み、溜まり、形を成す。そうしてできたものが魔石である。

 この魔石が生成されると空間が歪み、迷宮が出現する。さらに魔石はその身を守るが如く、強大な魔物の中に姿を隠す。


「よーーーーし!ミッションコンプリート!」

 リューカが両手を高く上げた。

「カイン、大丈夫?回復してあげるね。身体を回復する魔法ティラ

 セレナの魔法でカインが緑色のきれいな光に包まれた。

「ありがとう、セレナ。ところでリューカ、よく弱点がわかったね。」

「まあねー!最初に氷の槍を撃ったとき、弾かれるんじゃなくて吸収されちゃったじゃない?青い金属で氷か魔力を吸収できるのって限られてるからさ。」

「さすがの知識量だな。素材回収手伝うよ。」

「ううん、あれは多分加工後だから回収しても使えないと思う。だから私も思いっきり攻撃しちゃった。」

「そうなの?なんかもったいないわね。カインの攻撃でも傷つかないなんてすごくない?」

「なんかものすごーーーい防御力を上げてたみたい。あの金属には本来そこまでの硬度はないよ。」

「ふーん、まあいいわ。魔石を封印するから、渡して。」

 セレナはそういうと、小さな袋を取り出した。

「『消失袋』か。入れたものを一時的にこの世界からなかったことにする袋。」

「なんか説明だけ見るとものすごい恐ろしい感じね。ようはこれに魔石を入れれば、魔石がなかったことになって迷宮が消滅するってことね。」

 セレナが説明がてら、氷の槍の先端にある魔石に手を伸ばそうとする。

「あ、セレナ。魔石には直接触らないほうがいいよ。これ多分危ないよ。」

「そういうことは手を伸ばす前に言いなさい!」

 セレナは伸ばした腕を素早く引っ込めてリューカの頭をひっぱたく。

「じゃあセレナ、袋広げててー。うまいこと入れるから・・・ん?」


 リューカは振り返った。

「どうしたの?はやく帰りましょうよ。」

「あの壁の先・・・さっきまでこの魔石のせいで気付かなかったけど何かある。」

 リューカは先ほどまで戦っていた巨体の横をすり抜け、壁の前に立った。

「・・・ここかな。」

 魔力を壁に流す。すると、壁がきれいに崩れ、人が通れる道が現れた。

「おおー、隠し通路ー!セレナ、カイン!行ってみようよ。」

 リューカはワクワクしながら2人に手招きをする。

「セレナ、これどう思う?」

「そうね・・・はやく帰りたいところだけど、行かなきゃダメな感じするわね。長が言っていたこともあるし。」

 2人も何かを感じ取っていた。この先に進まなければいけないことを。


「なんかあれね、空気がひんやりしてきたわね。」

「罠とかはないみたいだけど、慎重に進もう。」

「何が出るかなー何が出るかなー!」

 三者三様に道を進んでいく。そして少し歩くと少しだけひらけた場所に出た。

 

 そこには、先ほどの魔石とはうってかわり、非常に澄んだ光を放つ魔石があった。

「なんで迷宮に2つも魔石があるの?というかこれは魔石なの・・・?」

「そうだね、魔石にはして恐ろしいくらい澄んだ魔力を放っているね。ものすごい純度の高い、なんのくせもない魔力を凝集したみたいなものだ。」

「ああ・・・赤ちゃんの魔力をぎゅってした感じねー。」

「すごい・・・。」

 リューカが手を伸ばし、その魔石に触れる。


 その瞬間、辺りを一面の澄んだ光が覆った。



『いい?人が人であるには・・・人として自分を維持するには、なにか1つ・・・自分の命と代えても守りたい大切なものが必要なのよ。』

『たいせつなものー?』

『そうよ。あなたはなにかあるかしら?』

『んーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・


 光が収まった。最後の方ははっきりとしなかった。

「なんだったの今の?最後の方なんか大事そうだったけどよく聞こえなかったわ。」

「小さな女の子ときれいな女の人との会話だったね。誰なんだろう?」

「ねえ、この魔石私がもらってもいいかな?」

 リューカが2人に尋ねる。

「かまわないけど、どうするつもりだい?」

「んーなんとなくだけど、私が持っていた方がいい気がするんだよね。それと・・・このことは秘密にしようか。」

 リューカが静かに言う。いつものリューカとはまったく違う雰囲気を醸し出している。

「それはリーダーとしてってことね?」

「うん。これはリーダーとしての判断。」

「リーダーがそういうならもちろん了承するよ。この魔石の運搬はどうするつもりだい?」

「これを使うよ。」

 リューカが『消失袋』を懐から取り出した。

「リューカも持っていたのねー。何用で持ってきていたの?」

「魔石が1個じゃなかったらもらおうかなーって思ってたんだけどまさか使うことになるとは。」

 はにかみながらリューカは答える。

「強奪する気まんまんじゃない。魔石って大事な資源なんだからダメよ。」

 セレナがリューカを叱る。

「にしても秘密が増えていくわね。」

「そうだね。仕方ないよ、だって私は。」

 リューカの目が一層怖いものになった。

「特にあの2人・・・アリシア先生と長には気を付けないとね。」

 リューカの言葉を受け、2人は黙ってうなずく。


「そろそろ帰りましょうか。裏リューカもそろそろやめなさいよ。」

「え?なにさ裏リューカって!すこーーーし真面目な話しただけだよー。」

「ギャップがすごすぎるのよねー。普段からそうしててもいいのよ?」

「それはそれで違和感あるからやめてほしいな・・・。」

「んもー、いいでしょ!なんでもー。ほら帰るよ2人とも!」

 リューカが目的だった妖しく光る魔石をセレナが持ってきた『消失袋』に入れた。


 空間の歪みが解消される。それに伴いまるで渦に飲み込まれたように空間が収縮していく。3人もそれに巻き込まれる。

 そして、異物である3人は吐き出されるように入り口から飛び出してきた。


「お帰りなさい、3人とも。無事で良かったわ。」

 優しく微笑みながら3人の無事を喜ぶアリシア先生がいた。

「・・・ただいま!先生。」

 リューカもまた笑顔でアリシア先生に挨拶をした。



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