西暦4667億9842万1222.4411年

西暦4667億9842万1222.4411年。


地球はとっくのとうに太陽に飲み込まれ、人類はそこから新たな惑星へと旅立った。しかし、その星も人類の住める環境ではなかったため、新天地を目指してさらに旅立つこととなる。

しかし、またまたその星も人類の住める環境ではなかったため…… そうして何度目かの旅路で宇宙の彼方にあるという「神の星(別名:天界)」を目指すこととなったが、そこでも人間の生存は困難であり……


そんなことを延々と続ける日々を過ごしていたある日のこと── 突然神を名乗る存在が現れて言うには、「お前達のような醜い生き物は本来生きてちゃいけないんだからさっさと死ねばいいんだよ」とのことで、問答無用で俺たちを抹殺してきたのだ。

もちろん、ただ殺されてやる義理はないと思った。だから俺は必死になって抗ったよ……それでも結局はこのザマだ。

まぁ簡単に言えば神様を自称する謎の生物からの一方的な理由で殺されてしまったってことだな。

「あーあ、クソッ!! 俺はまだやり残したことが沢山あるっていうのにこんな場所で終わってしまうのか……。なんのために生きてきたんだろう……」

こうして人類は滅亡した。その代わり、新たにイカが生態系の頂点へと君臨することとなった……。


生態系の頂点となったイカたちはやがて独自の文化を発達させていき、地上に存在するあらゆる資源を奪い尽くしてしまったのだ。そしてとうとう彼らは他の種族が住む地すら侵略し始めた。それを受けたほかの全生物の代表であるタコたちが抗議に出向いたらしいのだが相手にされず返り討ちに遭ってしまったらしい。

どうやらこの世界はすでに詰んでいるようだ。今度こそ本当に滅ぶかもしれないな。こうなった以上もはや何をしても無駄だろうし、抵抗せずに受け入れるしかないのだろうか……と、実は生きていた人類最後の生き残りである俺こと"アミスター・グレイバー" は諦めかけていたその時だった。


〜〜〜

『──あなたは死にました』


どうやら俺は死ぬしかないらしい。こっそりと「実は生きている」と地の文で語ることも許されないらしい。悲しいものだ。

まあいいけどね別に……って、あれ?……そもそも死んだ人間は声なんて出せないはずじゃなかったか? なぜ俺は喋れるようになっているんだ? しかも視界に入った手なんかまるで若返っているように感じるぞ!? どういうことなんだこれは!


混乱している俺に向かって先ほど語りかけて来たであろう目の前の女性は何やら言っているようだが何と言っているのかよく聞こえない……。だが何故か俺の心に直接響いているような気さえしてくるのであった……


『世界はイカに支配されました。残念ながらあなた以外の人類はすべてイカたちに殲滅されてしまったようです……。もうあの星の未来は決して明るくないことを理解した私、女神アルスタリアは自分の力だけでは到底対処不可能な事態に直面したため、緊急措置として私たちの女神の力の一部をとある器に移し変えた状態で現世へ送り出すことによって少しでも状況を改善しようと考えたのであります!』


ふむ、つまり要約すると「このままでは自分たちもイカたちの手によって滅ぼされてしまう危険性があるから少しだけでも世界を救ってほしい」ということで合っているかな?……よしわかった。とりあえず俺は生き返るんだよな?


『それは……えっと……無理なのです……その代わり、別の世界の新しい生命に生まれ変わってもらうことになりますが……良いでしょうか?』


……はいぃっ?! 生まれ変わった上でまたこのクソみたいな世界で生きろということなのか!?︎ 冗談じゃない!! せめてもう一度人類を繁栄させてみせないことには死んでも死に切れないというものではないか!! 絶対に嫌だと俺が拒否の意を示しているにも関わらず、女神様は無慈悲にも強引に話を進めていったのだ。


その結果、俺はタカラダニとなり、イカの天下に歯向かっていった……のだが正直言ってイカたちの力が強すぎた結果、すぐに蹂躙されてしまい、再び殺される羽目になってしまった。


そんな事を繰り返していたある日のことだった……。遂に俺は天啓を得た!!︎ そうだよ! これこそが逆転への一手なのだと確信したのである!!︎ まず俺は全身から毒を生成することができるようになった。ちなみにその効果範囲は半径5メートル以内であり、さらに時間制限付きでもあるらしい。この能力を使えばイカたちを徐々に弱体化させることができるはずだ。もちろん俺自身もな……。

そうして早速実験を行ったところ、自身の毒に耐え切れず俺が先に死んだ。


またある時は、周囲に水場がない環境でも生息できるようになり、さらには水中から陸の上にいるイカを奇襲する手段を獲得することに成功した。しかし、それだけでは勝てる気がしなかったため、更に周囲の水分を吸収して体内を浄化した後、再度陸地を侵略しに行った。

しかし、イカは水陸両用なので特に何の役にも立たず俺は死んだ。


その後も色々やってみたんだが一向に勝利どころか、イカを倒すことすらままならない状態が続いているな……。

どうしてこんなことになるんだろうな…… と、こんな風に考えているうちにあっという間に死に至る。

これが今の今までずっと続いている。

こんなループばかり繰り返しているせいで、俺の寿命だけがどんどん長くなってきている。その分だけ俺はイカに殺されているわけだから皮肉なものだ。

そもそも、たった一匹のタカラダニでイカの軍勢に挑もうとすることが無茶なのだが、どうしても諦めきれないため、今日もまたイカを殺しに行こうとしたところでイ怪電波のせいで唐突に身体が崩れ去っていき死んだ。


──ああダメだ……。こんな調子じゃいつまで経ってもこの星にいる全てのイカを滅ぼすことはできないかもしれない……。それならいっそのこと全てを諦めてさっさと消えてしまった方がマシだろう……最後に視界に入ったのは大きなイカのような何ィかだったような気もするが……まあ大したことではないだろう。それにしてもなんだか凄く眠いなぁ……おやすみなさい……zZZ 〜〜〜


《個体名:アミスター・グレイバーの死亡を確認しました》 《これよりアミスター・グレイバーの魂情報を保存します。バックアップデータの複製を行います。32%終了……78%完了……90%終了……100%完了しました》 ──"アミスター・グレイバーの死体"を回収及び修復が完了しました。

《スキル【無限転生】を使用しますか? YES/NO >YES……条件を満たしました。この個体は種族名:タカラダニへと進化可能な状態となりました。進化を開始致します…… 成功しました》 ──ステータスの更新を開始しました。

《称号を獲得しました。》 〜〜〜 【無限の海を泳ぐもの】

この世界において神に準ずる生物に与えられることの多い称号 獲得方法 :海で生活する生 物であること 〜〜〜 〈実績解除〉

(条件未達成)

全種制覇

★9…… イカ×114 フナクイムシ(寄生虫含む)×54コケアリ(キノコも含む)×222 ザリガニ(甲殻類全般を含む)エビ類×133 +++ NEW!!!︎ タカラダニ ▲ Lv 0 EXP 00/1000% HP 150 /250 MP 15000/15000 攻撃 344+34 防御 228+114 魔 350+0 俊敏 768+121 運 599+492 =計 1550P SP 126 残機 975P AP 10000000 カルマ -540 P 6000万→2000億アルス 所持金 102079兆7823億5589万4000ベル


目が覚めると見覚えのある光景が広がっていた。

どうやら俺は先ほどと同じ場所に戻されることが出来たがタカラダニでイカに敵う訳がなくすぐに死んでしまったようである。

それから幾度となく俺はイカと戦うもののやはり結果は同じで全く歯が立たないでいた。

しかし、それでも諦めることなく俺は戦い続けたのだが遂には死ぬことすら叶わなくなってきたのだ。

そしてこのままでは本当にイカたちに滅ぼされてしまう可能性が高いと考え、俺は一つの決断を下した。


それは「イカたちを滅ぼすことができるかもしれない存在の力を借りること」である。

早速俺はその力があるとされている"魔王ノ剣"の元へと訪れた。……あれ? でもそういえば俺って今どのくらいの強さを持っているんだろうな……そんな疑問から俺はステータスを確認しようとしたらイカが上から降ってきて俺が死んだ。

その後、俺は何度もトライアンドエラーを繰り返しながらもなんとか目標としている場所の近くまでは来ることができたのであるが、それ以上近づくことができずに殺された。

俺はもう完全にイカ達には歯が立たないようになってしまったようだ。


ただ一つわかることといえばこの世界はイカを中心に回っているということで、イカが全てを支配していて、イカがいないところではこの惑星に存在する全ての生命は生きられないということだけである。


…………結局何も出来なかったな……。

まあ、タカラダニだから当たり前か……。

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