わくわくどきどき競馬場

「来たね……」

「うん、来ちゃったね……」

女2人で、私たちは、ついにやって来てしまった。

そう……日曜日、G1レースが開催される東京競馬場に!


『おはようございます!』

私と友恵ちゃんは、いつもの競馬場前で待ち合わせしているのだが、今日も既に友恵ちゃんが待っていた。

「おそよう」

私は寝坊したわけではないんだけど……。

「ごめん、待っててくれたんだ」

「いいよ別に。それより早く馬券を買おうよ!」

友恵ちゃんがワクワクしながら言う。……可愛いなぁ。

「そうだね、行こうか!」

*****

「友恵ちゃん何番?」

「14ー5だよ」

「オッケーわかった。じゃあ7ー8でいくね」

「うわ、大穴狙いじゃん!楽しみ〜!」

2人揃ってパドックを見渡す。……あれ?さっきまで結構いた人が見当たらないぞ!?

「ねぇ、なんか少なくない?」

「そりゃ日曜だし少ないんじゃない?」

いや、そんなはずはない。だって今日は日曜日だもん。普通の日よりも多いはずだ。

しかし、友恵ちゃんは「日曜日は人が少ない」の一点張りだ。まあいいか。少ない方が賭けやすいし。


…………


1回のレースだけで100万負けた。

私たち、一体何をしてるんだろうか。友恵ちゃんはもう3億以上稼いでいるというのに……。……でも、楽しかったからいっか!


しかし、そんな楽観的な考え方が私を破滅へといざなった。次の開催日も同じ様に賭けたのだが、昨日の分を取り返そうと必死になりすぎて全然勝てなかったのだ。

そのまた翌日も負け続け、気づけば借金まみれになっていた。友恵ちゃんは自分の馬まで持ち始め、ついには凱旋門賞を勝ってしまったというのに。


私は焦っていた。このままでは、いつまで経ってもこの生活から抜け出せない。だから、なんとか一攫千金を狙おうとした。……そして、思いついてしまった。競馬で億単位を稼ぐ方法を。


そう、それは八百長である。


「よし、やるぞ〜」

私はパソコンを立ち上げて、早速インターネットに接続する。検索するのはもちろん八百長についてだ。

『八百長』なんていう単語を入力するだけあって、私の画面にはズラリと色々なサイトが表示されていた。……どれが良いかな?やっぱり大手のところが良いよね。

私は1番上のリンクをクリックしてみる。すると画面には『あなたへオススメ!!』と表示されたページが現れた。そこには、とても胡散臭い内容が書かれていた。


・騎手への賄賂で裏情報をゲット!!

・馬主とのコネを作るために大金を払う!

・調教師に媚びを売る!


どれも嘘くさいなぁ……。こんなんで本当にお金貰えるのかしら?……まあ、とりあえずやってみるか!

「まずは騎手に賄賂を渡す方法を調べないとね」


それから20分ほどかけて色々調べた結果、私はあることを思いついた。

「これならいけるかも!!」

私はスマホを取り出し、とある人物に連絡を取った。

『もしもし?』

電話口に出た人物は少し怪しげだったが、それでも私は話を聞かせることにした。

「あのぉ、ちょっとお願いがありまして……」

『はい、なんでしょう?』

「実はですね……」

**

***

〜2週間後〜

「……ねぇ、なにしてるの?」

「えっ?」

私が振り向くと、目の前には見慣れた顔があった。

「美希さんが怪しい取引を持ちかけてきたから来てみたら……。まさか、闇バイトとはねぇ」

あちゃー、バレたか。これは逃げられなさそうだなぁ。

「でも安心して!悪いようにはしないから!」

「もう十分悪いですよ……」


その後、友恵ちゃんによって全ての悪事が白状させられた私は、無事逮捕された。私は裁判に掛けられ、懲役10年を言い渡されることになる。


しかし、1年後に出所してからは真っ当に働き、今では立派な一般人として生活している。……まあ、たまに競馬を見に行ったりはしているけどね!……こうして、私の夢だった億万長者への道は途絶えたのであった。


ついでに、友恵ちゃんは今でもG1をたくさん勝っています。

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