第三十三話 トクさん…オタクたち
バスツアー1日目も終わり、ヘトヘトの体には宿泊先の温泉が癒してくれた。なんと個室の露天風呂! 豪華だよなぁ。部屋に温泉があるのってさ。
「少しグレードあげて良かった。大浴場もいいけど、個室の温泉もいいね」
と、一緒に入るキンちゃん。ああ、一緒に入ってるのが美玲ちゃんかハナだったらなぁ。って言いたいところだが、彼も同じことを思っているだろうから黙っておこう。
「そっちはどうだった?」
「陶器づくり、難しかったけど楽しかったよ。ちょっと屈んでたから腰が痛くて。トクさんところは?」
「んー結構歩きまくった……」
「時代村行ったんでしょ? 疲れるよね。」
そうである。本当は俺たちのグループは県立公園内の動物園でヤギと触れ合い会の予定が、到着前にヤギの調子が悪いと連絡が来た。慌てるハナと運営。出だしから暗雲が……と思ったら、マスターが近くの時代村に行くのはどうかと提案して急遽変更になった。
「でも時代村って、県境向こうで愛知県の施設だよね……」
「そうなんだよな、岐阜のご当地アイドルのファンツアーが他県にお金落としてきたからどうなんだろうか……入場料は団体料金とグループの中に系列会社で働く奴がいて少し値引きしてくれた。」
「まぁ、それはそれで楽しかったんじゃない?」
「だな。一日中ヤギと触れ合ってるよりかはな」
風呂から上がって浴衣に着替えてカメラのメモリーを見せ合う。
「美玲ちゃんとツーショット、いいでしょう」
「憎らしいほどいい笑顔だな、お前は」
「てへっ! ……美玲ちゃん、トクさん居なくて寂しがってたよ。そこが悔しかった……」
「当たり前だ、ばーか」
俺のメモリーはと言うと……ハナがハイカラさんのコスプレして登場。写真撮影会が始まって熱烈なファンであるマスターとアガサと俺とあと数人で撮影。かなりそれだけでメモリーをくってしまった。めっちゃ可愛すぎて。
「やべぇーっ、ハイカラハナちゃん!!! 可愛い!!」
そのまま時代村散策! でも良かったのだが150センチ以下だとなぜか貸し出しは出来ないとのことで。そういう決まりらしい。厳しいな。ハナはギリギリ150もないからなぁ。惜しかった。
俺もだが、地元のみんなは結構時代村に行ったことがあったらしいが、大人になって行くのも楽しい。
マスターがサポートしてたのもあるが、ハナは俺たちはもちろん、自分のファン以外の人に一生懸命話しかけたり、気遣いをしていた。
それが功を制したのか、最後にはみんながハナちゃんハナちゃんと彼女を囲んで楽しく記念撮影したっけ。
「トクさん、ニヤけすぎ」
「る、るせぇ。にやけてないし」
集合写真を見返す。隣に座りたかったけど……なぁ。ハイカラなハナばかり撮っててツーショットを忘れていた。ああ、間抜けな俺。この後はツーショットの機会は無いのだ。しまった。宴会の時はカメラ撮影できないし……。
「あ、宴会そろそろ行かないと。また席が離れるけど楽しみだね」
「だな。宴会ライブは今日のファンミーティングに来た人だけの特別なライブ」
「美味しいご飯に、浴衣姿の清流ガールズ!!!」
「楽しみしかないっ!!!」
と、キンちゃんがキョトンとした。どした?
「トクさん、なんか初めて会った時とキャラが違うなぁって」
「知るか、そんなの!」
そして宴会場に行くと大きな宴会場はもう賑わっていた。200人近くいるからな。
キンちゃんとは別れてハナグループの席へ。
「おい、遅いぞ! トクさん」
大柄の由美香さんファンが立ち上がって手を振っている。お酒を飲んで顔真っ赤だ。お酒も飲んでいいんだな……。隣にはアガサ、マスターもいた。アガサの横に俺は座った瞬間に目の前のマスターが無口でビールを差し出された。
お礼をしてグラスに注いでもらった。相変わらず寡黙な人だが、時代村の時はすごく気を利かせていろんな人に声をかけていた。
さすが喫茶店のマスター……。
「そうそう、常連くん……でなくて、トクさん」
「あ、はい……マスター」
なんか緊張するなぁ。なんで緊張するんだ? アガサはなんか横で笑ってるし。なんだよ。
となりの女子高校生数人はジュースを飲んでキャッキャ言ってる。聞いた話だと市役所勤めの父親からツアー招待券をもらって友達で参加して。たまたまハナのグループだったようで……ハナのグループは余ってたってことだが、つまり……最初どうなることかと思ったが……。
「ハナちゃん可愛いよねぇ。気に入っちゃった」
「大野ちゃんと美玲ちゃんしか知らなかったけどハナちゃんって良いよね」
と話している。
由美香さんファンのグループもハナのことをだいぶ気に入った様子で宴会内のグッズブースでハナグッズを揃えていた。
彼女の健気さにみんな心動かされたと言うのか?
料理も机に運ばれて、いよいよ宴会ライブスタート……照明も暗くなり、ステージには清流ガールズが登場だっ!!!
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