第14話 リリシア帝国の古代遺跡

 翌朝、食堂に行くとすでに朝食の用意ができていた。さすがは海のある街だ。焼き魚が用意されていた。海の魚はこの世界に来てから初めて食べる。地球にいたときは美味しいとは思わなかった焼き魚が、すごく美味しく感じた。そして、朝食後、約束通りジョン君の案内で街を散策することにした。



「シン兄ちゃん。ここが港だよ。」


 

 港には漁船が停泊していたが、思っていたよりも数が少ない。



「ジョン君。船はこれだけしかないの?」


「うん。お父さんと同じように最近船の遭難が多いんだよね。」



 ここで師匠がション君に聞いた。



「領主は遭難した船の捜索はしないのか?」


「海で行方不明になった船は諦めるんだって。」



 僕は師匠を見た。師匠もどうやら怪しく思っているようだ。



 港を後にして街中を通りすぎると岸壁に出た。岸壁の先には小さな島があった。島の周囲にはたくさんの兵士がいる。



「ジョン君。あの島は何だい?」


「古代遺跡がある島だよ。」


「あそこは見学できないのかな?」


「うん。領主様が管理していて誰も中には入れないんだぁ。」


「残念だな~。」



 太陽も真上に来てお昼ご飯の時間になった。僕達が街の中で食堂を探していると、ジョン君が市場の中の食堂に案内してくれた。



「ここの料理美味しんだよ。」


「中に入ると漁師達が食事をしていた。」



 僕達が食事をしていると漁師達が何やら噂をしている。



「遺跡島の近くはいい漁場だったのになぁ~。」

  

「あそこはだめだ。あの近くで行方不明になった船が何隻あると思っているんだ!」


「だけどよ~。」


「その話はもうやめておけ。領主に聞かれたら何をされるかわからんぞ!」



 僕と師匠はしっかりと漁師達の会話を聞いていた。食事をとった後、市場の中を散策すると、さすがにいろんな種類の魚や貝があった。中には2m近くあるカニもあった。



「あれ美味しそうですね。師匠。」


「じゃぁ、買って行って晩御飯にでも出してもらおうか?」


「はい。」



 僕はカニを2杯買って空間収納の鞄に入れた。店から出てさらに奥に行くと市場に似合わない店があった。



「ジョン君。ここは何の店?」


「遺跡で見つかったものを売っているんだよ。」



 中に入ると、古い貨幣、さび付いた剣、古い陶器、さび付いた銃があった。師匠は首をかしげながらジョン君に聞いた。



「ジョン君、これ何か知っているか?」


「知らないよ。錆びているし、何に使うのか誰も知らないんじゃないかな。」


「師匠。これは武器ですよ。ここを指で引くと、この筒の先から鉄の玉が飛び出す仕組みですよ。」


「シン。何故お前が知っているんだ。」



 僕は誰にも聞かれないように小さな声で師匠に言った。



「僕の世界にありましたから。」


「そうなのか。」



 師匠は首を傾けて何やら考え込んでいた。


 一通り街を見学した僕達は宿に帰った。そして、タキさんに市場で買ったカニを2杯渡し調理してもらうことにした。



「タキさん。これだけ大きなカニは師匠と二人だけでは食べきれないので、一緒に食べませんか?」


「ありがとうございます。良かったわね。ジョン。」


「うん。ありがとう。シン兄ちゃん。師匠姉ちゃん。」



 

“ジョンは可愛いなぁ。僕が師匠なんて呼んでいるから、『師匠姉ちゃん』なのか? こんな弟がいたらいいのになぁ。“




 思った通りカニは美味しかったが、さすがに4人でも2杯のカニは食べきれなかった。食後部屋に戻った僕と師匠は、今後の相談をした。



「師匠。やっぱり、この街何か変ですよ。」


「ああ、私も感じているよ。古代遺跡、領主、行方不明者。恐らく全てが繋がっているな。」


「銃が見つかったのも気になります。」


「調べてみよう。」


「はい。」



 『絆亭』にはお風呂がない。だから、一旦師匠の家まで転移してお風呂に入ったあと、再び転移して戻ってきている。いつものように布団に入ると師匠が声をかけてきた。



「シン。最近お前身体が大きくなってないか?」


「はい。いつか師匠に追いつきますから。」


「ダメだ! これ以上大きくなるな!」


「ダメとか言われても仕方ないですよね。」


「これ以上大きくなったら、私の抱き枕にならぬではないか?」


「その時は魔法で小さくなりますよ。」


「そうだな。その手があったな。」



 何故か師匠が納得していた。



 翌日、僕と師匠は朝食を済ませて古代遺跡に向かった。師匠と二人、『隠密』を発動して中を探索する。因みに僕と師匠の隠密は人族の隠密と違い、姿が見えなくなるだけではない。魔力もすべて消し去るのだ。


 僕達は遺跡島に上陸し、古代遺跡に侵入した。遺跡の中には大きな空間が広がっていた。何やら工場跡か倉庫跡のような作りになっている。そして、遺跡はさらに奥へと続いているようだった。すると奥から声が聞こえてきた。



「お前達。さっさと掘らんか! この仕事が終わらなければ家には帰れんぞ!」


「本当に家に帰してくれるんだろうな!」


「領主様もそう言っているだろう。大金を手土産にして家族のところに帰れるんだぞ! 分かったら早く掘れ!」



 しばらく様子を見ることにした。


 

「あったぞー!!」



 何かを探していたようだ。遺跡の奥から大きな声が聞こえた。僕と師匠は『隠密』を発動したまま様子を伺っていた。すると、壁が壊された先にさらに大きな空間があった。中を見て僕は驚いた。そこには地球にあった戦闘機や戦車があったのだ。




 “こんなものがどうしてこの世界にあるんだろう”




 僕達は転移で街まで戻った。



「シン。お前はあれが何なのか知っているのか?」


「はい。あれは僕がいた世界にあった武器です。それも大量に人を殺すことのできる武器です。」


「なんだと~! なぜそんなものが!」


「あの遺跡は僕のいた世界と何か関係があるのかもしれません。」


「だが、使えるのか? 古代からあるのだろう?」


「もし、空間収納のように時間が止まる魔法がかけられていたとすれば、使用は可能だと思います。」


「領主の思惑を調べないといけなくなったな。」


「はい。それと、あの労働者達はこの街の兵士ではなさそうだったんですが。」


「恐らく行方不明になっている漁師達だろうな。最後は秘密を知った彼らを殺すかもしれんな。」


「なら、ジョン君のお父さんもいるかもしれませんね。」


「ああ、その可能性は高いだろう。」


「では助け出しましょう。」


「先に領主の方を調べるぞ!」


「はい。」



 その日は『絆亭』に戻り、翌日に領主の館に行くことにした。

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