125話
思案が一巡したところで俺は愛を仕分けしなければならなくなった。
まず、愛とはどれほどの種類があるのか数えなくてはならない。正確に計上する事はできないだろうかは、俺の思いつく限りの愛をあげる。
性愛。
恋愛。
情愛。
これらは主に恋慕を抱いた相手に対して催す愛である。例外もあるだろうが、基本的には肉体的欲望を伴う感情であり、種の繁栄のために生じる生物的な衝動。リビドーの発生原因である。
友愛。
親愛。
敬愛。
この一群は友情などを表す言葉で、基本的に肉欲は生じないと思われるが、断言はできない。共感や恩情。交友などによって発生するのだろうが、経験が少ないため定かではない。俺の少ないケースではそう感じるというだけである。
偏愛。
狂愛。
愛執。
常勤を逸した愛。他者に対する異様な執着。不健全かつ歪んだ価値観。いや、価値観については主観的な視点で語られるべきであるから正誤の判断はできない。だが、デカダンスである事は疑いようがなく間違いない。想像であるがこの愛は、先の二つの愛が退廃的な経路を辿って終着する到達点のように思う。突き詰めた愛は非社会的であり独善的だという俺の印象に基く偏見であるため実際のところは知らない。しかし、相手方が受け入れられない程の愛を注ぐというのはやはり独りよがりな愚行ではないか。相互理解が叶わない人間と愛を交わせるのかというと、疑問を呈さざるを得ない。
さて。
大きく三種に愛を分けられたわけだが、こうして考えてみるとやはり彼女に対する愛は二番目であり、俺の潔白は証明されたように思う。肉欲を伴わない愛の感情を持っていると胸を張れ、罪悪感は薄れていき、負い目は消えいった。
が、途端に過ぎる数分前のでき事。下半身が圧迫され、ベルトを緩めたあの瞬間。その事実を隠して、本当に肉欲がないといえるのか。
再び重い十字架が、俺に乗り掛かる。
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