22話
「では、責任についてはどのように考えればよろしいでしょうか」
話が移る。どうやら人間関係については一応の決着がついたようだ。彼のためになったかどうか定かではないが、何かのきっかけになれば幸いである。
さて、責任か。
人の上に立ったり特別な業務を請け負っているわけではないにしろ、俺も一応労働者として最低限の責務は背負っている。そうでなくては金が得られないからだ。逆にいえば、金がなければそんなもの、放り出してしまってもいい。むしろ放り出したい。何が社会生活だくだらない。資本家の望む国家が労働者にとっての理想郷になるわけがない。できるのであれば働かずに飯を食って眠るだけの日々を過ごしたいに決まっている。そうはいかないから働いていに過ぎないのだ。
そうだ。結局、大半の人間が俺と同じように金の代償として社会活動を強いられているのだ。その中でより多くを望む者は相応の大きさの責を、僅かで満足できるのであれば見合った義務を果たすのだけではないか。必要以上に背負いたくなければ求めなければいいだけの話。それほど難しいものでもない。それを伝えよう。
「責任とは言うけれど、それほど気負わなくとも楽にできる仕事もあるんだ。嫌なら、そうした生き方をするといい」
「確かにそうなのですが、なんだか、そうした昼行灯な生き方をしたくないんです」
縋るように顔を上げてそう喚くあたり、気が弱いだけで志は高いようだ。それだけ立派な気概があるなら初志貫徹であってほしいものだが、その辺りは子供である。いや、大人にもいるな。垂れるご高説に精神が伴わない輩が。この子供にはそうなはないようを願うばかりである。
「では、どうすればいいと思うんだい」
俺は子供に聞いてみる。結局どうしたいのか分からなければ、話のしようもないからだ。
「分かりません」
即答。この議題の難航が確定。厄介な事だ。
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