13 その一匹になってください
なに他力本願なことを、と言われるかもしれませんが、もうね、個人レベルじゃ無理だと思ったんですよ。
アスペルガーとわかって、ひとつひとつパターンをインプットすれば大丈夫と知りました。
それならと、1ページに良い言い方と悪い言い方の例が載っている辞典みたいなのを何冊も買って渡したのですが、それを引く様子はありませんでした。
教育関係者に聞くと、どうやら「今回のはこのページに該当する」といちいち私が開いて渡さなければならないようでした。
当然ながら、子どもがいると、辞典に載っていないパターンの方が多いです。
毎日なにかしらパートナーと子どもが衝突して、それに対しての言動が酷いので、①状況説明②改善して欲しい実際に行っていた対処法③理想的な対処法というのを、毎回まいかいメールで送るようになりました。
子どもをフォローした後に、さっき怒鳴られて子どもが泣いていた状況を思い返しながら、ビフォアアフターな状況を文章にして送るのです。
他に「困った状況は自筆でノートなどに書きとめておくと証拠になる」とあちこちから言われ、やっていたこともありました。
でも直筆でそこらへんのノートなどに書いてバレるのは怖かった(パートナーが激昂したら子どもに手や足が出るか、壁やら家具やらに穴が空く状況だった)ので、ケイタイメモに入力して、月に一度まとめて友達と親戚にメールで送っていました。
「記す」は効果的かもしれませんが、自分が急速に病んでいくのがわかりました。
なにしろ、やっと状況を落ち着けたところに、再びさきほど目の前で見た精神的にしんどい状況を思い返して文章化するのです。
私はもともと忘れる能力が高い方だし、嫌なことは意識してなるべく早く忘れて、いいことだけを覚えておくようにしていました。
パートナーと子どもの関係にしても、無意識のうちに忘却スキルが働いていたようで、意識して書き残していくと、加速度的に病んでいきました。私にとって「文字にする」はかなり重要な記憶方法だったからです。
(ちなみに「じゃあボイスレコーダーなどで録音すればいいじゃない」と言われて録音したところ、それを精査するために聞き返す時にダメージを受けました。録音したものをPCなどに移動するだけならいいのですが、聞き返すのは状況そのままなのでかなりキツいです。代わりに聞いて精査してくれる第三者がいた方がいいです)
(パートナーのためにここまで大変なことをやらなくちゃならないの?)
(これだけやってるのに、また同じようなパターンが起きている)
(このパターン何回目? メール意味ないんじゃないの?)
(こんなの私一人でずっと続けていられない)
そう思い始めた頃に、表向きは「メールわかりやすくて嬉しいよ」と言っていたパートナーが「メールがウザい」という内容を電話で話しているのを聞いて、すっかりやる気を失いました。
私だってウザいです。
どうせ書くならもっと前向きなことか、自分が書きたい内容を書きたい。
同じ頃に、義理の両親に送っていた報告メールになんの反応も返ってこなくなったことと、「いつでも送ってね」と言われて相談報告メールを送っていた親類から「私にグチを送ってないで本人と話し合えば」と返信されたことで、すっかりメール自体をできなくなりました。
頑張ったところでウザいと言われ、報告メールを送っても反応はない。
「いつでも送ってね」というから送っていたらグチと言われ、そもそも「話し合えないから困っている」という根本が伝わっていなかった。
実家からは「子どものために両親がそろっていたほうがいい」と言われますが、「暴言暴力をふるう親がいた方がいい」という考えが、私には本気でわからない。
毎日子どもが傷つき続けている環境を維持しろと?
それはいいことなの?
私はなんのためにこの状況を維持しているんだろう?
「じゃあ、パートナーを実家で合宿させてほしい」と頼めば、それは断られました。
そりゃそうですよね。
すでに実家とパートナーの仲は最悪です。
それをおしてまではできないですよね。
「子ども優先ならさっさと離婚するべき」と教育関係者からは言われました。
そのためには、先立つものと仕事が必要です。
就職しようとしたら、なぜか実家とパートナーに止められる不思議。
その後、なにかで言い合いになった時に「さっさと働きに行け!」とパートナーから怒鳴られました。
それならなんで止めたの? もうハロワでの募集は終わっちゃったよ。
もうね。
一人では病む一択です。
じゃあ誰かに相談したらどうかっていうと、これまた病みます。
こうなったら世界に変わってもらうしかありません。
もしくは今ナウなにも考えずに飛び出せたら、後から苦労するかどうかは知りませんが、少なくとも精神的には楽になれるんじゃないかなぁ(願望)。
子どものことを考えるとそれもできません。
(「母親に捨てられた」と子どもに思わせてしまうから。私が外出するときは子が皆「いつ帰ってくるの?」としつこく聞くし、少しでも遅いと「帰ってこないかと思った」と泣くので、さすがに一人だけ出ていけない)
世界を変えるといえば、猿の話をざっくり書きます。
(詳しい内容は『百匹の猿現象』でググってください)
海沿いに住んでいる猿があるとき海水に落ちたイモを食べた。
美味しかったので、食べた猿はまわりに教えて、そこらにいる猿はみんな海水につけてから食べるようになった。
海水につけてから食べる猿の数が増えた頃、行き来できないほど離れた遠くの海辺に住む猿も海水につけてから食べるようになった、という話です。
つまり「一定数の数が増えたら世界が変わる」というのです。
(ちょっと違いますが、服の流行と似ています。毎年、決まった流行元があって、「テレビで有名人が着る」「店先に似た服が並ぶ」「最近あの服をよく見る」「あの服を着てみたい」が重なっていって流行ります)
これなら誰も病まずに、平和に、時間はかかるかもですが、カッサンドラな世界線を壊せるのではないかと思いました。
ぜひその一匹になってください。
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