第85話 マリオンの愛。
俺の身体がアーティファクト・キャンセラーを破壊した時の衝撃波で千切れて行くのがわかる。
あまりの事で痛みもよくわからない。
まだ辛うじて残っている右腕に付いている「炎の腕輪」から力を感じる。
恐らく世界にアーティファクトが戻った。
アーティファクト・キャンセラーが置いてあった最上階に屋根はなく吹き飛ばされた俺は空を見上げる形になっていた。
あまりにスローモーションな世界。
多分、俺はこのまま死ぬ。
そんな事を考える俺の見上げた空を金色に光る剣が飛んで行くのが見えた。
キヨロスが力を取り戻して世界中の魔物を退治しに剣を出したんだ…
多分、ここを飛んだのは場所の確認をしたから…魔物退治さえ済めばアイツがここに来る。
そうすればマリオン達は助かる。
マリオンの「カムカ!イヤァ!死なないで!!」という泣き声が聞こえる。
マリオン…、俺はさっきツネツギの覚悟を聞いて正直羨ましかった。
ルルに一緒に死のうと声をかけたツネツギの覚悟と潔さ。
俺は出来なかった。
マリオンの居ない世界を考えたくなかった。
俺が死んでもマリオンが笑顔で生きられるならと思ったからこそ命も張れたんだ。
魔女の「ほら見なさい!身体なんてグチャグチャのボロボロじゃない!それによくも私の計画を台無しにしてくれたわね…」という怒りに満ちた声が聞こえてくる。
その直後、「アハハハ!いいこと思いついた。この筋肉の子に「悪魔のタマゴ」を埋め込んで悪魔化させてここの連中を皆殺しにするの!どう?素敵でしょ!」と魔女は言った。
俺を悪魔化させるだと?
ふざけるな、死ね。
俺の身体…今すぐ死ぬんだ!!
もう、俺の身体はどこも動かない。
目の前も暗くなってきたのに耳だけはハッキリと聞こえる。
マリオンが涙声で「やらせない!カムカは死なせない!!」と魔女に言っているのが聞こえる。
「死なせないってどうやって?もう無理でしょ?腰から下なんてなにも残ってないし、左腕だって無い。右手だって肘から下は無い。それにもう命もそろそろ尽きるわ」
冷静な魔女の言葉で自分がどうなっているかが理解できた俺の耳にマリオンの「カムカ!私はカムカを死なせない。何がなんでも死なせないの。私のアーティファクトがそれを可能にする!」という言葉が聞こえてくる。
マリオンのアーティファクト?
俺が何回聞いても「内緒」と言ってニコニコとしていたがなんのアーティファクトなんだ?
俺はニコニコと笑うマリオンの顔を思い出していた。
魔女が「貴女のアーティファクト?何?貴女何か授かったの?」と言うとマリオンが「見ているといいわ、カムカ、死なないで!!【アーティファクト】」と叫んだ。
次の瞬間、おれの中に何かが…生命力が流れ込んでくるのがわかる。
失った身体が再生されて行く感覚…俺の身体に何が起きている?
少しして「カムカ…良かった」と言って俺の上にマリオンが倒れ込んできた。
俺は目も開くし手足も動く。
よく見ると服まで元に戻っている。
俺はマリオンを抱き抱えて起き上がり魔女を睨む。
魔女が俺とマリオンを見て「何そのアーティファクト?そんなアーティファクトを私は知らない!」と言って驚いている。
俺にだかさったマリオンが「「愛」…この指輪が私のアーティファクト」と言った。
俺が「「愛」?」と聞くとマリオンが「そうだよ…カムカ…。これは…愛が無ければ……使えない…アーティファクトなの」と辛そうに説明をしてくれている。少し離れた所で魔女が「何よそれ?愛って何よ?」と言ってガタガタとうるさい。
マリオンは魔女を無視して「愛する…人の為に……自分を…差し出すの。カムカの腕が無くなれば私の腕を…差し出して……カムカの腕を取り戻す。足なら足を…命なら命を…」と言った。
「命?おい!それって!!」
「いいの、カムカの居ない世界に生きる意味はないもの……、それに私……カムカを失うのが怖いから…何をしてでも失いたくなかったの…」
「そんなの、俺が耐えられないだろ?お前が生きていてくれるから俺が命張れたんだろ?」
「そうなの?嬉しい。私はカムカの特別だ」
そう言うと涙目で笑うマリオンが「どうしようカムカ…。私、死にたくない。もっとカムカと一緒に居たい」と言った。
「死なねえ!死なせねえ…。待ってろ、もうすぐ皆が来る!キヨロスが来たら「究極の腕輪」でこんなの無効化して貰える」
俺の言葉に「無理なの…」とマリオンが言い、その言葉が俺を愕然とさせる。
「なんだよ無理って?」
「「愛」は愛を試すアーティファクト…、無効化もやり過ごす方法も何も無いの…。それも神の使いから聞いていたから…」
俺は一瞬で慌てた。
冷静で居られなくなった。
「お前!それでも使ったのか!!?俺なんかの為に!!」
「バカ…、カムカの為だから使えたのよ…」
マリオンが顔をゆがめて「グッ…」と言った。
気が付くとマリオンの左腕、右手の肘から先、腰から下が真っ黒になっている…。
「支払いの時間だね…カムカの代わりになった部分が凄く痛い……」
そう言ったマリオンが「このアーティファクトって…良いね……」と続けて言った。
「何がだよ?何が良いんだよ!?」
「愛する人の……代わりになれて…お別れもちゃんと言えた事よ」
「馬鹿野郎!それでお前が死んだら意味がないだろ?」
「意味はあるわ、私は…カムカが死ぬのを見ないで済む…もの…ウッ…」
マリオンはとても辛そうにしている。
俺にできることは何もない…。
「死にたくない……死にたくないよカムカ…。二の村での生活、私達の子供…一緒に修行……まだ何もやれてない」
マリオンの悲痛な声。
俺は必死になって「死ぬなよ!死ぬなマリオン!!」と呼びかけるとマリオンは「もっと呼んで…、寂しくない。目もよく見えなくなってきたの。まだ、声だけは聞こえるから呼び続けて」と言った。
その時、魔女が「心配いらないわ、何が愛よ…今からここの人間を皆殺しにするわ…地獄門はノース王で開ける。まずは貴方よ…筋肉さん」と言って大ぶりの剣を振りかざすが俺は動かない。
マリオンとの時間を無駄にしたくなくて動けない。
「させるかよぉ!」という声と共に魔女に向けてロングソードが振りおろされ、魔女が「もう来たの!?」と言ってガクに苛立つ。
「カムカ、何があった!?」とガクが聞くが俺が答える前に見ていたナックとマリーは俺がアーティファクト・キャンセラーを殴り壊した事、衝撃波で死にかけた事、それをマリオンが「愛」で助けた事、その為にマリオンが死にそうな事を伝えた。
「魔女は俺が何とかする、お前はマリオンから目を背けるな、そばに居てやれ!」
ガクは「本気の本気だ」と言うと見た事のない速さで動いて剣を振る。
魔女が堪らずに後ずさる。
「あんた1人で何が出来るのよ!アーティファクトもない癖に!」
「アーイはこれからカーイと戻ってくるさ、そうしたら2対1だ」
ガクが魔女を押さえ込むとマリオンが「ガクの…声がした…」と言った。
「ああそうだ、ガクだ…ガクが俺たちの為に戦ってくれている」
「嬉しい……、カムカと…最後まで一緒に…居られる」
俺がたまらず「最後とか言うなよ!!」と言うと後ろから「「カムカ!!」」と俺を呼ぶ声がした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
聞こえた声はツネツギとルルだった。良かった、アイツらも無事だ。
そして知らせる者も居て「カムカ!神様に連絡が通じた!大至急ガーデンに向かってくださるとの事だ!」と言う。
神様が来る。
ああ、それは良かった。
だが俺は返事もせずにマリオンを見てマリオンの名前を呼び続ける。
ガクは「ツネツギ!お前はこっちで一緒に戦え!」とツネツギを呼ぶ。そのまま「ルル!マリオンはアーティファクト・キャンセラーを壊したカムカの為に「愛」と言うアーティファクトを使って瀕死だ!何とかしてくれ!」と説明をした後で鍔迫り合いをする魔女に「ほら見ろ魔女よ、もう…1人増えたぜ?」と言ってニヤリと笑う。
「キィィィッ、ビッグベアで足止め出来ていたのはルルさんと勇者さんだったのね、それに知らせる者?神が来る!?最悪じゃない!」
戦闘に参加をしたツネツギはガクの隙を埋めるように動いて魔女の剣を光の盾で防ぐ。
「ルル、ルノレになって回復をしてくれ」
「ああ…、これは酷い」
ルルはそう言うとルノレになって回復を行う。
マリオンは今や俺の欠損した身体以上に身体が黒ずんでいる。
ルノレの回復のお陰かやや黒ずむ進行が弱まった気がする。
だが予断を許さない状況は変わらずルノレが泣きそうな声で「ゼロではないけど時間稼ぎにもならないよ!」と言う。
「カムカ…」と俺の名を呼んだ知らせる者が俺を見てマリオンを見る。
「「愛」を使ったのか…、これは回復のアーティファクトではどうなるものではない…だが進行は抑えられる。進行さえ抑え続ければ希望はある」
希望…?
俺が知らせる者を見ると知らせる者は頷いて「神様がいらっしゃるまで保たせるのだ、神様が来たら事情をお話しして助けて貰えるように頼むのだ!」と言った。
保たせる…
「知らせる者!今すぐ他の神の使いに知らせを出してくれ!サウスに俺の師匠、道を示す者が居る、師匠に言って俺の弟分、キヨロスをここに来るように言ってくれ!!」
「だが、ここまで来るのには時間が…」
「アイツは「瞬きの靴」があるからすぐに来れる!!」
知らせる者は「それなら!わかった!!」と言うと知らせを出し、次の瞬間にはキヨロス達はこの場に居た。
やはりさっきの光の剣でこの場所を見ていたんだな。
状況を見たキヨロスが「カムカ!?」と言って俺の元に来る。俺は「話は後だ、マリオンが死んじまう!回復のアーティファクトを!!」と言うとキヨロスは黒ずむ手足のマリオンを見て「マリオン!?【アーティファクト】」と言って回復の力を使ってくれた。
さっきよりはマシになったがまだ足りない。徐々にマリオンは黒ずんで行く。
回復をしながら「何があったの?」と聞いてくるキヨロスの疑問に俺は答える。
俺が死に瀕した事、その俺の代わりにマリオンが死に瀕した事。
「究極の腕輪」すら無効化する事、神が来るまで保たせれば何とかなるかも知れない事。
説明を聞いたキヨロスは「わかった!【アーティファクト】」と言って何らかの力を使った。
「何をした?」
「「究極の腕輪」の効果範囲を広げたんだ!ルル!これで負担もなくアーティファクトを使えるよね!?」
ルノレは「うん!やれるよ!!」と言って更に回復の力を使ってくれた。
俺の横に来た師匠が「カムカ…、やっぱり破壊するしか無かったんだね。そしてマリオンは「愛」を使ったんだね」と言う。
「はい…、師匠…俺はマリオンを死なせたくない。助けて貰えませんか?」
「うん、やろう」
師匠の肩を掴んで「ダメだ、道を示す者!ここでの力は禁止事項に触れる!」と言う知らせる者に師匠は「知らせる者、君だって禁止事項に触れてまで私達を呼んだろ?私だって弟子の為にやるよ」と言うと師匠がマリオンに手をかざすとようやく黒ずみは止まる。
「師匠、ありがとうございます」
「お礼なんていらないよ」
師匠はニコリと笑ってからマリオンの身体に再度手をかざす。
俺は安堵に震えて「ああ…マリオン…、どうだ?効いているか?」と聞くがマリオンは答えない。
反応しないマリオンを見て師匠が悔しそうに「ダメだ、まだ足りないよ」と言う。
これを見てキヨロスが「次だ!知らせる者!授ける者を呼んで!後は見守る者も!」と叫ぶと「僕は僕でやる!【アーティファクト】」と言った。
次の瞬間、俺達の前にリーンちゃん、ジチさん、フィルさんが現れる。
3人は口々にマリオンを心配する。
「皆はここで待っていて!授ける者は!?」
キヨロスの声に「居ますよ」と言って授ける者が俺達の前に居た。
授ける者はマリオンを見て「マリオン…「愛」を使ったのですね?」と言ってキヨロスを見て「それでキヨロス…、あなたが私を呼んだ理由は?」と聞いた。
「わかるだろ?特例処置だ!今すぐ皆に回復のアーティファクトを授けて!箱庭から直接出して!」
キヨロスの指示に知らせる者が「授ける者まで禁止事項に触れさすつもりか!?」と言うが授ける者は「わかりました」と言って箱庭から回復のアーティファクトを取り出すと皆に配る。
「カムカも使って!皆、僕が負担を引き受けるから遠慮なく使って!」
その声に合わせてナックとマリーを含んだ全員がマリオンに回復のアーティファクトを使う。
緩やかにだが黒ずみが引く…
胸元まであったマリオンの黒ずみが腹部まで落ちつくとマリオンが「カムカ…。皆の声が聞こえるよ」と言った。
「ああ、そうだ。皆が来てくれた」
「皆?ああ、アイツも居るから何とかなっているのね?この非常識さはアイツしか居ないもんね」
「そうだな」
「でもさ、これで期待させておいてダメだったら酷いよね。それなら一思いに逝かせて欲しい」
「馬鹿野郎、皆が来てくれているんだ、失敗なんかしてたまるかよ」
その後、皆がマリオンに声をかけて励ます。
その頃にようやくアーイとカーイが現れる。
事情を聞いたアーイはガクを援護したいのを我慢してマリオンに向けて回復のアーティファクトを使う。
一歩引いて困っていたカーイは「僕も…、僕も手伝いたい!!」と言って回復に参加をする。
そして何とか回復してきたマリオンが目を開けると「見える。カムカの顔が見えるよ」と言って涙を流した。俺も人目もはばからずに「ああ、俺もマリオンの顔が見える」と言って泣く。
何とかなって少し落ち着いた時、ガクとツネツギと戦っている魔女から「ほらほら、最終王子様〜、勇者様〜息が上がってきてますわよ〜。アハハハ」と聞こえてきた。
「私、アーティファクト・キャンセラーを破壊されるとは思ってなかったから「創世の剣」は置いてきてしまいましたけど、この剣で動けなくなった人から斬り刻んで上げますわ。そうしたら、あの回復している連中は動けないから今のうちに地獄門を開けちゃうわ〜。アハハハ」
魔女の声に苛立ったキヨロスが怒った時の顔で「魔女が邪魔だな…カムカ、一瞬だけ時間をくれない?光の剣で倒したい」と言う。
俺は首を横に振って「ダメだ!お前は回復に専念してくれ。一瞬でも気を抜かれたくない。ガクとツネツギもこっちに回す。魔女は俺一人で討つ」と言うとキヨロスは「やれるんだよね?僕はカムカの弟分だから信じて待つよ?援護は一切しないで全ての力をマリオンに向けるよ?」と言ってくれた。
「おう、そうしてくれ。それが俺の望みだ。後これ、俺の分も頼む」
そう言って回復の指輪をキヨロスに渡す。
「また増えた…、さっきから指輪に腕輪に短剣に…忙しいなぁ…」
「いいから頼むって」
俺は抱きかかえたままのマリオンに「マリオン、ちょっと行ってくる。ガクとツネツギを寄越すからしっかり回復してもらえ」と声をかけるとマリオンは甘えるように「うん、すぐに片付けてきてよね?」と言う。
「ああ、今の俺は本気中の本気だ。あんな女に遅れなんか取るかよ」
「ふふ、素敵。格好いいよ。愛してるわ」
俺は「俺もだ」と言ってからマリオンをみんなに任せて立つ。
視線の先で魔女は小馬鹿にした動きでガクとツネツギを翻弄している。
「圧倒してやる」と言って歩き出した俺の前に授ける者が立って「カムカ、貴方にも戦闘用のアーティファクトを授けましょう」と言った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺はアーティファクトを授けると言った授ける者に「いらないです。俺には師匠から貰った技がある。俺自身が授かった「炎の腕輪」がある。筋肉がある。マリオンが居る。これであの魔女を圧倒してきます」と言うと走り出して「どけ!ガク!!」と言いながらガクの横をすり抜けて魔女の身体に一撃を入れる。
急に現れた俺に一撃を入れられた魔女は「キャァッ!?」と言って吹っ飛んで膝をつく。
俺は肩で息をするガクとツネツギに「ガク、ツネツギ…交代だ。コイツは俺がやる。お前達はマリオンの回復を任せる」と声をかける。
ガクが「マリオンは良いのか!?」と聞いてきたが「そんなに待たせやしねえよ」と言った俺の本気中の本気を見たガクはそれ以降何も言えなくなる。
「わかった、カムカが魔女を倒すなら俺達はマリオンの回復に回る」と言ったガクに「ああ、よろしく頼む」と言うと膝をついた魔女は憎しみに顔を歪めて立ち上がると「よくも…、よくも私を殴ったわね!」と言って俺を見てヘラヘラと笑うと「現実逃避かしら?アハハハ」と笑った。
「馬鹿野郎、俺がお前を圧倒するんだよ。それで安心してマリオンに回復の力を使うんだ」
「アハハハ、馬鹿じゃないの?サウスの坊やならまだしも、アンタが私を倒す?それも圧倒?出来る訳無いじゃない!まあ、サウスの坊やは回復に専念しているからこっちには来られないけどね。アハハハ。アンタも最後のお別れを済ませて来なさいよ」
魔女が俺を挑発してくる。
俺が怒りや焦りで自分を失うのを待っているのだろう。
その手は食らうものかよ。
「何?、怒ったのかしら?アハ…」
最後まで笑わせない。
一瞬で距離を詰めた俺の一撃が魔女の腹に減り込む。
笑っていた最中だった魔女はそのまま「はぁっ!?」と言って再度膝をつく。
「は…速…、なに…その速…」
「喋らすかよ」
続けて倒れ込んだ顔面に向かって蹴りを放つ。
吹き飛んだ魔女の後を追って加速する。
俺は魔女の足を踏み付けて逃がさない。
そのまま逆の足でローキックを決める。
硬い。
やはりコイツは女の形をしてはいるが人間ではない別の何かなんだ。
そのまま倒れ込んだ魔女の身体に向かって蹴りを当て続ける。
一撃必殺ではなく、速く、そして重い攻撃。
一撃で倒そうとするとどうしても動きが硬く重くなる。
重くなれば隙が生まれる。
そうならないギリギリで打ち込む。
魔女は「ぐっ」「へぶっ」「くっ」「このっ」とか言っているが知った事ではない。
ある程度蹴った所で重い一撃を浴びせる事にする。
「【アーティファクト】!」
足に炎を纏わせて折り抜くつもりで蹴りを放つ。
ゴガッと言う音がして魔女は吹き飛んでしまった。
理想は吹き飛ばずに全ての力を打ち込みたかったのだがそううまくは行かなかった。
このまま起き上がらせる事なく殺せるかと思ったが吹き飛ばしてしまった。
追い打ちも考えたが、距離が距離だ…
深追いをすれば間違いなく反撃を喰らう。
冷静にこの場で待つ。
「アンタねぇ…」
魔女が足をガクガクとさせながら立ち上がる。
見た感じフリだろう。間違いなく油断した所に剣撃か何かを叩き込んでくる。
「フリはいい。早く来いよ」
「…随分と冷静じゃない、焦って飛んでくるかと思ったのに、飛んできたらこの剣で足なり手なりを斬り飛ばしてあげたのに残念だわ」
そう言うと魔女は再び剣を握る。
「俺の手も足もマリオンがくれた大事なもんだ、お前なんかにやるかよ。2人分の重みにさっさとやられちまえ」
俺の言葉に魔女の顔は怒りで真っ赤になっている。
怒った魔女の攻撃は単調で大振りだった。
フリの可能性は捨てずに俺は対処する。
縦に振ってきた剣には横に回り込んで脇腹目掛けて殴り飛ばす。
横に振り回してくればそれより速く動いて背後から蹴り飛ばす。
魔女は「チクショョウ!!」と言って滅多斬りをしてくる。
そんな剣なんか怖くない。
俺は「オラァ!」と言って魔女の剣を白刃取りすると俺と魔女は睨み合う形になる。
魔女は怒りに顔を歪案せて「生意気!このまま振り抜いて殺してあげるわ!」と言うが俺は「やれる訳ねえだろうが!【アーティファクト】」と言って両腕を炎で包む。
そのまま限界まで火力を上げると次第に剣は真っ赤になり魔女が「なによこの温度!?熱い!」と言って熱さにうろたえる。
このタイミングを俺は見逃さない。
柔らかくなった剣を力で曲げるとそのまま魔女に蹴りを入れる。
蹴られた魔女は剣から手を離した形で吹き飛ぶ。
俺の熱でグニャリと曲がった剣を俺はその場に投げ捨てて両腕に炎を纏わせたまま魔女に突っ込んで起き上がるタイミングで拳を入れる。
「吼えろ筋肉!」
その掛け声でとにかく滅多やたらに殴りつける。
火力が甘くなれば再度火をつける。
「【アーティファクト】!!」
「唸れ筋肉!」
更に殴る。
これでもかと殴り続ける。
しばらくすると俺の腕の炎は魔女に引火する。
火が付いた魔女は「ギャアァァァア!」と断末魔の声を上げてその場に崩れ込んだ。
ざっとこんなもんだろ?
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