第67話 三国集結。
城まで後1日と言う辺りまできた。
一日中歩きながらカムカとガクは色々な情報交換をしていた。
私も可能な限り参加をしたことで、四つの国全ての情報が交換できてしまった。
カムカが特使と言う事が大きいのだろう。
あの怒気を含んだカムカは夢だったのではないかと思わせるほどに今は笑顔が似合う男だ。
そしてマリオンは恐らく私より年上なのだが、色々なものを見つけてはカムカに「これは何?」「あれは?」と一日中くっつきながら聞いていた。
あの戦闘力とのアンバランスさがよくわからない。
カムカとマリオンは恋仲なのだろうか?
私は…恋というものがよくわからない。
マリオンのように素直に感情を表現した方がガクは喜ぶのであろうか?
そんな事を思っているとガクが「疲れたし、温泉に入って今日は休もう。明日の午後には城に着く」と言いだした。
私は驚いて「ガク?どうした?一日目にはそんな事は言わなかったじゃないか?」と聞くと、「あの日は夕方近くに城を出ただろ?だから温泉に寄る余裕が無かったんだ。折角だからさ、アーイにもウエストの温泉に入ってもらいたくてさ」とガクが言うとマリオンがガクに賛同して「カムカ…温泉行きたい」と言ってカムカを誘っている。
カムカは「んあ?いいんじゃないか?別に今晩はどのみち野宿だからな」と言い、結局3人が行きたいと言うので行く事になってしまった。
温泉に向かっているとマリオンが突然「温泉はみんなで入るの?」ととんでもないことを聞き始め、ガクは驚いてむせてしまった。
私が「え?何でそうなる?」と言うとカムカが「マリオン、男と女は別々だ」と言う。
またマリオンが「え?カムカと入れないの?お風呂が大きくないなら、私とカムカ。アーイとガクで入ればいい」ととんでもない事を言い、またガクがむせる。
困り顔のカムカが「マリオン、今日は男同士、女同士で入るんだ」と言ってマリオンをたしなめると「つまんない」と言ってマリオンがむくれる。
「ここの温泉は大き目の湯船が二個あるから、同時に入れるからそんなにつまらなくないと思うぞ?一緒に出れば相手を待つこともない」
ガクが必死になってマリオンを説得するとマリオンは納得をして「うん、わかった。今日はアーイと入る」と言ってくれた。
マリオンと風呂に入ることになった私は先に鎧を脱いで風呂に浸かる。
マリオンの鎧は全身鎧に近いので脱ぐのに時間がかかる。
温泉はややぬる目だが、歩き通しだった身体にはちょうど良い温度だ。
マリオンが「おまたせ」と言って近づいてきた。
マリオンは何処も隠さずに堂々と歩いてくるので私は驚いてしまった。
「マリオン……、その何だ…」
「何?」
「子供ではないのだから隠してくれないか?」
「隠す?」
…何で?と言う顔のマリオンが私を見る。
年頃の娘としての恥じらいは無いのか?
私は赤面して「見ている私が恥ずかしいのだ」と言ってしまうがマリオンは「それよりもお願いがあるの」と言うと更に近づいてきて「アーイ、私の身体を見て」と言うと「な…!!?」と言っている私の前でマリオンは手を広げてくるりと回って見せた。
「どう?変?」
「い…いや…」
本当にマリオンの身体は綺麗だった。
スタイルも凄く良く、手足も長く背も高い。
出るところが出ていて、引き締まる所は引き締まっている。
真っ赤になった私が「本当に綺麗だと…思う」と言うとマリオンは「良かった。ありがとう!」と言ってニコニコと笑いながら湯船に入ってきて「お姉ちゃん達は平気と言うんだけど、みんな優しいから自信なくて」と言った。
「姉がいるのか?」
「私には本当の姉はいない。みんなはサウスの王様と一緒に戦った仲間」
そしてマリオンが私に語ったのは衝撃の事実だった。
自身はまだ人になったばかりの元人形兵士でカムカと共に生きる為にイーストで人になったと言っていた。
無論、私もいきなりそんな話をされてハイそうですかと聞けるわけではない。
だがそうとしか思えない行動や言動がマリオンにはあった。
そして言う通りならばマリオンはまだ13歳前後の知識しかないことになる。
そうなれば恥じらいなどが足りない事にも合点が行くのだ。
「それがお前なのか」
「うん。人としての所作は元になったマリーから教わったから何とかわかるの、でもこの身体がキチンと人間なのかはわからないからアーイにも見てもらいたかったの」
「ああ、大丈夫だ。マリオンはその…あれだ」
「なに?」
「人間の…女の中でも綺麗な部類だ。自信を持っていい」
「本当!?ありがとう!!」
マリオンは本当に嬉しそうに喜ぶ。
その姿がとても愛らしく思えた時、一つの事が降りてきた私は「ふふ」と言ってしまった。
「アーイ?」
「ならば私も話そう」
そうして私は10歳以前の記憶がない事、だが数日前にそれらを夢で見た話をした。
「アーイは、記憶を取り戻したの?」
「いや、まだ他の誰かの出来事を見せられたような感覚なだけだ」
そう、まだ私はあの夢は自分の記憶を思い出したと言うより、人の記憶を追体験したに過ぎなかった。
「そうなんだ、アーイはガクのことが好きなの?」
「な…!?何故そうなる?」
「アーイが話してくれた記憶の中のアーイはガクの事が好きそうだから…」
マリオンはとても鋭い。私もそんな気はしていたので「そうなのかもな…」と返した。
「かも?」
「私もよくはわからない。記憶の中の幼い私はまたガクに逢いたい為にアーティファクトに選ばれて戦争を終わらせる事を考えていた」
「今は?」
「今は…まだ他人の気持ちに感化されているだけなのかも知れないと思う部分と、ガクと共にいて安らげる部分がある」
マリオンはごく普通に「そっか、きっとアーイはガクが好きなんだと思う。その気持ちを思い出せるといいね」と言った。
マリオンと話していると物事は案外シンプルなのかも知れないと思えた。
温泉を出るとガクとカムカが外で涼んでいた。
マリオンは「カムカ!」と言って真っ先にカムカに抱きつくと「暑いって」と言ってカムカは笑う。
マリオンが「なんかこう言うのっていいね」とカムカに言う。
カムカが「何がだ?」と聞くとマリオンは「私が出てくるのをカムカが待ってくれているのが嬉しかったの」と言った。「そうか?」と聞くカムカにマリオンは「うん!」と言ってニコニコとカムカに抱きついている。
「いい湯だったろ?」
ガクが私を見てそう聞いてきたので「ああ」と素直に答えた。
ガクは私が素直に答えないと思っていたのか目を丸くしていた。
今ならマリオンが言った「待っていてくれた事が嬉しい」と言う気持ちが分かる気がした。
私はガクの顔を見て「ガク、待っている人が居ると言うのは悪くないな」と言って微笑むとガムは「そうか、俺もだ」と言って笑った。
素直になると言うのは何と気持ちの良いものだろう。
私はそう思うと胸につかえていた一つの事を片そうと思った。
「カムカ」
「あ?どした?」
「この前は済まなかった」
「なんの話だっけ?」
「サウスの王に助力を願った件だ」
「ああ、気にしてくれていたのか?思いとどまってくれたならそれでいいよ」
そう言うとカムカはいつもの笑顔で笑った。
カムカの背中に抱きついたマリオンが私を見て微笑む。
私も微笑み返した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
風呂で何があったんだ?
アーイがとても素直になってしまった。
マリオンは何をしたと言うのだ?
風呂でカムカにマリオンとの仲を聞いた時に少しだけ話してくれたが、彼女はつい最近人間になったらしく、まだ世間に馴染んで居ない部分もあってそれで人前でも躊躇なく好意をぶつけてくるらしい。
そのマリオンとアーイが風呂から出て来たら仲良くなっているし、素直にカムカにも自身の発言を謝罪してしまった。
やはりアーイは素直な方が昔のアーイを彷彿させていいなと思った。
微笑んだ顔は俺に活力を与えてくれた。
きっと2人で戦争を終わらせる。
そう言えばカムカから風呂でアーイとの関係を聞かれたので話したら「応援するぜ!」と言われたが何をどう応援するんだろうか?
翌日にはそんな空気も嘘のようにみんな真面目に城を目指したので午後にはウエストの城に到着した。
カムカが通信球と言う遠くの相手と話せる擬似アーティファクトを取り出して調子をチェックしたら問題無かったようで、向こう側から若い男の声が聞こえてきた。
恐らく相手はサウスの王だろう。
家臣に父上とノースの王の事を聞く。
父上は問題なく話が出来るそうだが、ノースの王は更に状態が悪くなって居たので先にアーイとノースの王を会わせようと言う話にした。
父上にはその間にカムカとの会談の用意をするように伝えておいてもらう。
ノース王の部屋には変わらずアーイだけを行かせた。
俺とカムカ、それにマリオンは部屋の前で待つ事にした。
深刻な雰囲気、チラッと見えた中に控える医師や看護師、回復のアーティファクト使い達を見てカムカが「アーイの親父さん、そんなに悪いのか?」と聞いてくる。
「ああ、突き刺された所から雷を流されて身体の内側から焼かれていてな…回復のアーティファクトもあまり効果がない。恐らくもう…長くはない」
そんな話をしている間も部屋の中からはアーイが必死にノース王に話しかけているのが聞こえてくる。その声は普段のアーイとは思えない程に悲痛で涙声になっていた。
アーイの声を聞いてカムカが「クソっ!」と言って悔しそうな顔をしている。
カムカは本当にいい奴だ。
まだ会って数日の俺たちの事も真剣に受け止めてくれている。
その後もカムカは辛そうに唸る。
何もここまで辛そうにしなくても…と思った俺はちょっと引き始めていた。
そんな時、マリオンがカムカに抱きつく。
この場でも抱き着く行為に俺は不謹慎な…と思ったがいつもと雰囲気が違う。
優しい声でマリオンが「カムカ、きっとアイツは嫌がらない。カムカのしたい事もわかってくれる。これは人殺しじゃないよ。人助けだよ」と言った。
何を言っている?
カムカが見せたことの無い辛そうな顔で「でもよ、これでここに介入してキヨロスの大切なものが滅茶苦茶になったら…」と返すとマリオンはカムカを抱きしめたまま俺を見て「ガク、アンタはアーイの為に何が出来る?」と聞いてきた。
いきなりそんな事を聞かれた俺が返答に困っている間もマリオンは俺の目を見て視線を外さない。
くそっ…見透かされているなこれは。
そう思った俺は「ウエストの王子としてで無ければなんでもだ」と答えると頷いたマリオンは「それならガクとしてウエストよりサウスを守って。王子としてはウエストを守っていいから、ガクとしてはサウスを優先して」と言う。
マリオンは何を言い出すんだ?
「…何を?」と聞き返す俺にマリオンは「アーイの笑顔が見たくないの?」と言った。
!?
ズルイな。
それを言われたら俺はこう言うしか無いじゃないか。
「わかった…。俺は何をしたらいい?」
「簡単よ、今から数時間の間、何があっても人を守るの」
そう言うとマリオンはカムカを見ていきなりキスをして「カムカ、通信球と映像球を出して。私がやるわ」と言った。
カムカは暗い表情で「マリオン…」と言ったが最後まで言わせる前にマリオンは「いいの、2人でやれば怖くない」と言ってカムカから二つの球を受け取った。
マリオンは一つの球に向かって「ねぇ?見える?聞こえる?」と声をかけると「見えるよマリオン。カムカはどうしたの?」と相手の声が聞こえてくる。
声の主は先ほどの若い男の声、サウスの王だった。
「カムカはアンタの大切なものの為に我慢して辛そうなの。だから私が話してる」
辛そうの部分を気にした相手が「どうしたの?何があったの?」と聞いてくるとマリオンはノースの王が瀕死の重体でウエストのアーティファクト使いだと傷を癒せない事。
あの女にサウスがこの戦争にこれ以上首を突っ込めばサウス王の大切なものを滅茶苦茶にするって警告された事。
カムカは仲間になった俺たちの為に出来る限りの事をしたいけど弟分のサウス王を優先して我慢している事を伝えた。
仲間…。
たった数日でカムカがそう言ってくれた事が嬉しかった。
「カムカいる?」
「ああ…」
「何で相談してくれないの?」
「お前が出てきたら芋づる式に戦争に巻き込まれる。そうしたら人殺しだってしなけりゃいけなくなる。リーンちゃんやジチさん、フィルさんだって皆危険に巻き込んじまう!!」
カムカが俯いたまま悔しそうに声を張り上げる。
「でもその人、このままだと死ぬんだよね?カムカは仲間が悲しむのは見たくないんだよね?」
カムカが答える前にマリオンが「そうよ、だからアンタはお姉ちゃん達連れて飛んできてよ。アーティファクトも全部持って。ウエストからサウスを見張って結界も張り続けて。お姉ちゃん達は私とカムカ、後はこっちの仲間達で守るから」と言った。
球からは「わかった。マリオン、そのまま待ってて。リーン!フィルさん!ジチさん!僕のアーティファクトを全部持ってきて。今から皆でウエストに飛ぶ!シモーリ!帰るまで外から国を守る!それでも何かあったらすぐに通信球で知らせて!」と聞こえてくる。
マリオンは手に持った球を見て満足そうに頷くとカムカを見る。そして「カムカ、アイツ来てくれるってさ。だから私とカムカ、後はガクとアーイが全力でアイツの大切なものを守ればいいの。やれるでしょ?」と聞いた。
カムカが情けない顔で「マリオン…」と名を呼びながらマリオンを見るとマリオンが「その顔も好きよカムカ」と言ってカムカに笑いかけるとノックもせずに部屋の扉を思い切り開けて「アーイ!何とかしてあげるからこっちに来て!」と言ってアーイを呼んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いきなり扉を開けたマリオンが私を呼ぶ。
私の前のお父様は出発前より明らかに弱っていて私の事もわかっているかどうか怪しい。
以前と変わらず傷口の具合も良くない。
この状況で廊下に出ろだと?
だが、マリオンは「何とかする」と言っていた。
本当に何とかしてくれるのか?
私は藁にもすがる思いで廊下に出るとマリオンが「やっときた、いい?」と聞いてくる。
私はムキになって「何がだ?お父様が大変なのだ!」と言うとマリオンは真剣な表情で「知ってる。だから何とかしてあげるからシャキッとして。剣は振るえる?」と更に聞いてきた。
「何を言って…?」
「出来る?」
マリオンが私を真っ直ぐ見る。
答えない私を見かねてガクが「マリオン、アーイの分まで俺がやる」と言う。
ガクは何が起きるのか知っていて私を庇うがマリオンが「ダメ。ガクはガクでやる事がある。ガクがアーイの分までやり切れない。一人一人がキチンとしないとダメ」と珍しくきつい口調でガクに注意する。
私が「出来る。私は何をすればいい?」と聞くとマリオンは「治している間、治してくれている人の大切なものを守るの。もしかしたら悪魔とか悪魔熊、悪魔狼が襲いかかってくるから」と言った。
治す?
治すと言ったのか?
私が「何だと?」と聞き返したがマリオンは私の声を無視して通信球に向かって話しかけた。
「準備いいよ」
「そこに出ればいいの?」
「ここは狭いから、その先の部屋見える?」
「見えるよ」
「じゃあお願い」
マリオンの「い」の時には部屋の中に4人の人間が居た。
1人は若い男、残りの3人は女だ。
私が4人を見ているとマリオンが「あれがサウスの王様よ」と言う。
「何?」
サウスの王だと?
カムカが拒んだサウスの王がここに居る?
困惑する私にマリオンが「アーイがわんわん泣くからカムカが助けたくなっちゃったの。でも呼べないって悩んで居たから私が呼んだのよ」と言いながら部屋に入っていく。
「ただし私もアイツに人殺しはさせない、アーイのお父さんを治すのは人助けだから呼んだの。あの3人がアイツの1番大切なものだから、ウエストにいる間は絶対に傷一つ付けないで守るの。ちゃんとやってよね?」
カムカが真剣に悩んでくれた事、マリオンが行動をしてくれた事に私は感謝しかできなかった。
私は「カムカ、マリオン。ありがとう」と言って頭を下げた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
これを奇跡と呼ばずに何と呼ぶ?
俺の目の前で奇跡が起きていた。
思わず見ていると「ちょっとガク!余所見しないで集中して」と言われてマリオンに尻を蹴られてしまった。
サウスの王は挨拶もしないままにノース王に向かって行き状態を見た。
そして部屋の隅で倒れているアーティファクト使い4人から「回復の指輪」を借りると、3人の嫁さんに向かって「リーンは「雷鳴の杖」で国境を、フィルさんは「海鳴りの扇」で海を、ジチさんは「千里の眼鏡」で国中を見張って」と言った後、「カムカ、リーン達のこと頼んだからね」というと自身も短剣を出してノース王に突き立てた。
これに驚いたアーイが食ってかかろうとしたが「これは「癒しの短剣」で患部に刺して使うアーティファクトなんだ」と言われて引き下がるとサウス王が「【アーティファクト】」と唱えて5つの回復のアーティファクトを使い始めた。
5つだぞ?
複数持ちが出来る奴なんて滅多に居ないのにこの王様は5つも同時使用しやがった。
俺は思わず「おいおい…5つかよ」と声に出していた。その声を聞いたカムカが「5つじゃねぇ、8個だ」と言ってきた。
カムカの話によるとあの嫁さん達が使っているS級のアーティファクトもサウスの王様が注意点を肩代わりしているから実質8個のアーティファクトを同時使用している事になるとカムカは言っていた。
そんな人間が目の前に居てアーティファクトを使っている…。
俺はとにかく驚いた。
確かにこの王が本気を出したら戦争は1時間で終わるかもしれない。
その間も王の嫁さん達はアーティファクトを使っていく。
赤毛の嫁さんが「リーンちゃん!一の村の南!ビッグベア発見!やっちゃって!」と言うと緑の服の嫁さんが「【アーティファクト】!」と唱える。
その間に金髪の嫁さんが「ジチ?海の方は?」と聞くと「んー?今日は無いかな…、あ!大きな魚がいるよ!」と返すと「わかりました。【アーティファクト】」と唱えている。
カムカの話通りなら、サウスの王が回復を途切れさすことなくしている間にも王の嫁さん達はアーティファクトでウエストからサウスを守るという離れ業をやってのけている。
俺は話を聞きたくてカムカの方を見るとカムカは聞かれることがわかっていたのだろう「普段は王様を休ませたくて彼女たちが持ち回りでアーティファクトを代わりに使っているんだ。今日はアーイのオヤジさんを助けるために変則的な使い方をしているけどな」と教えてくれた。
何て言う常識外れな事をしているんだろう。
だが、今度は別の事が気になる。
「そろそろ限界じゃないのか?うちのアーティファクト使いならこれだけの時間を使っていたら一個でも根を上げるぞ?」
俺は心配になりカムカに聞くと「いいから自分の持ち場を集中しろよガク。あの女がいつ刺客を送り込んでくるか分からねえんだからよ」と言った後でサウス王の方を見て「それに王なら問題ねえよ」と言った。
問題ない?
確かにカムカの言った通り問題は無かった。
サウスの王はその後も1時間以上も癒しの力を使い続けた。
「こんな感じかな?」
そう言ったサウスの王が振り返って俺たちを見ると「後は回復の人達で何とかなるんじゃないかな?すみません。見て貰っていいですか?」と言って回復のアーティファクト使い4人を呼ぶ。
「ダメならもう一時間くらいやるけど、たださっきからあまり進展が無いんですよね」と言われながらアーティファクト使い達はノース王を見ると「これなら後は我々だけでもなんとかなります!ありがとうございます!!」と感謝を述べていた。
「リーン、フィルさん、ジチさんお待たせ。終わったよ」
王は3人の奥さんに声をかける。
「お疲れ、キョロ」
「お疲れ様キョロくん」
「大変だったねぇ。お疲れさま。お姉さん達はもう少し見張っているから、キヨロスくんはカムカ達とお話ししなさいな」
サウス王は「うん」と言ってカムカの元に行くと「カムカ、終わったよ」と声をかける。
カムカが「すまねぇな」と頭をかきながら感謝を告げると「いいって、弟分は兄貴の役に立たなきゃね」と言う。
そのままマリオンに「マリオン。呼んでくれてありがとう」と言うとマリオンは「どういたしまして。それにしても同時に8個ってどんどん異常になっていくわね」と呆れ声で言った。
サウスの王は「そう?」と言ったまま今度はノース王の子供は誰かをマリオンに聞くとマリオンが呆然と立ち尽くすアーイを指さして「あそこのアーイ、女性があの人の娘よ」と言った。
頷いたサウス王はアーイの所に行くと「アーイさん。出来るだけのことはしたよ。アーティファクト使いの人たちに聞いたら後はあの人たちでも大丈夫って言ってくれたよ。顔を見せてあげて」と言うとアーイは「すまない!!ありがとうサウス王!!」と言って涙ながらに感謝を告げる。
サウス王は首を横に振ると「僕は王って自分で思っていないから。キヨロスで呼んでください。それにカムカの仲間が困っていたら助けるよ」と言うとそれを聞いたアーイはそのままノース王の所に駆け寄って声をかける。意識はしっかりしていてアーイが「お父様!ああ、本当に良かった。お父様、サウスの王がお父様を助けてくださいましたよ」と説明をするとノースの王は事態があまりわかっていないが助かった事はなんとかわかっていて感謝を述べていた。
それを見たサウス王が俺の元に来て「護衛、ありがとう」と言ってくる。俺は剣をしまって「いや、結局魔女は来なかったしな」と軽口を叩くと「それでも守って貰えてなかったら、ここまで回復に集中できなかったから。流石に全員を守りながら回復だと後1時間くらいかかると思うから。助かりました」と言ってくる。
おいおい…守る事もやろうと思えばやれるって事だろう?
ちょっと次元が違いすぎるな。
俺は感謝と共にどうしても頼まなければいけないことが出来た。
「サウス王…」
「キヨロスです。王って呼ばれるのは恥ずかしいし慣れないんです」
「あ、でもなー」
「貴方のお名前は?」
「俺か?俺はガク。このウエストの王子だ」
「王子って呼ぶのとガクで呼ぶのはどっちがいい?」
「そりゃあ、ガクで頼むわ」
「じゃあ、僕もキヨロスで」
そのままサウス王…キヨロスは3人の嫁さんを俺とアーイに紹介してくれた。
黄緑色の服を着た可愛らしい女の子がリーン。
紫色でマリオンの鎧にそっくりな鎧を着た絶世の美女がフィル。
赤い毛でしっかりした感じの女性がジチ。
3人の嫁さん達はそれぞれがキヨロスの第一婦人だと言い合って笑い合っていた。
俺はどうしても頼むことができていたので「キヨロス、済まないがこのままウエストの王、俺の父上と会談をして貰えないだろうか?」と言った。
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