第51話 奈落突入/地下15階の違和感。
俺は改めて「ウノ、フィルさん。礼を言う」と言って頭を下げると「いいんですよ。妹さん無事で良かったですね」とフィルさんが言い「これで問題なく最下層を目指せますね」とウノが言う。
最下層と言えば気になることがあったのを思い出したので「一ついいか?」とウノに声をかける。
「何でしょうか?」
「俺たちはのんびりと一つの階を歩いて地図を完成させる気は無いんだ、それは問題ないよな?」
ウノは「ええ、階段の位置と…まあ、もしも余裕があれば見つけたアーティファクト等を記していただけると助かりますが、あくまでツネツギ様の目的は最下層に赴き「創世の光」を手に入れて頂くことになります」と言って奈落の方を見た。
「それはテツイから聞いている」
「ほう、それは結構なことです」
もう当たり前のことでもテツイがちゃんと報告をしているだけでホッとしてしまう。
「この先も御代の事は頼んでいいのか?」
「はい、ミシロ様はこのままお任せください」
俺は紙とペンを借りて「行ってくる。心配するな」と書いて寝ている御代の横に置いた。
ウノには「御代が理由を知りたがったら毒の事も含めて包み隠さずに教えて欲しい。その上で、ここで守られていろと言ってくれ」と言伝を頼んだ。
御代の事で午前中が潰れてしまった。
義理を果たす為にも午後はこのままぶっ続けで奈落の踏破を目指したいと言うと全員が了解をしてくれた。俺が改めて御代の件を感謝するとみんな「お安い御用」だと言ってくれた。
現在、未踏破の13階まで降りてきた。
フィルさんが片っ端から盾で防御をしてくれるのでダメージを気にする事なく進めている。
「紫水晶の盾」の防御力は計り知れないと思ってしまう。
13階の魔物は猛毒ガエルだったが、ダンジョン全体をフィルさんが解毒してしまったので他の冒険者たちも足元や天井からの毒を気にせずに進めるのはありがたかったらしく、口々にフィルさんに感謝を述べていた。
そんな冒険者達にマッピングを任せたい話をしたら快く受け入れてくれた。
そう言えばフィルさんと言えば8階の毒ヘビの毒もわざわざ解毒してみてカムカとコソコソと何かを話していたが、解毒に関してはフィルさんにも思うところがあって奈落に来たのかも知れない。
後はマリオンだ、カムカが俺に会わせたいと言っていた理由はすぐにわかった。
擬似アーティファクトの塊と言っても過言ではない彼女の装備、その腕には俺の「勇者の腕輪」のレプリカが付いていて戦い方が非常に参考になった。
今の所は色しか違いがないが、カムカとフィルさんに言わせるとアーティファクトは成長するので俺の「勇者の腕輪」は成長すればマリオンのものより高性能になるかも知れないとの事だ。
そう言いながら目前に14階への階段が迫ってきた時、「疲れた」とマリオンが猛毒ガエルを倒した後そう言った。
そして彼女は背中の筒を開けて拾ったばかりのアーティファクト「火の指輪」と上の階で拾った「時の指輪」を入れる。
しばらくすると筒から蒸気が出てきて「お腹いっぱい」と言ってニコニコしていた。
彼女の鎧には擬似アーティファクトが満載されていて、そのエネルギー源は各地の「大地の核」らしいのだが、イーストの「大地の核」は弱り切っているのでエネルギーが不足するらしくアーティファクトを取り込んでエネルギーに変換すると言う事だった。
マリオンは「これで私もカムカとずっと居られるよ」と言いながらカムカの腕に抱きつく。
12…いや10歳くらいの女の子なのだが…カムカって守備範囲広いな。一体カムカは何歳なのだろう?
奈落の方と言えば、10階を過ぎても規則性は変わらず、テツイとナオイは分からなかったがカムカ達に地図を見せると規則性にすぐに行き着いてくれたのでこれから先の階段探しが捗ると思う。
一応書いておくと規則性は☆型で五芒星とか魔法陣、あれを左の点から一筆書きした時の順番だった。
10Fを左上に見立ててマップを回転。→11F右上→12F左下→13F真ん中の上→ だったので、マップの右下を目指したら14階への入口があった。
14階は無茶苦茶な場所だった。
13階までの規則性は階段や部屋の構成以外の出てくる魔物やアーティファクトは全くのランダムだった。
どう言う事だ?
とりあえず救いなのは階段の位置が変わらず五芒星な事と部屋の配置が同じ事だ。
さっさと15階の階段を探してしまおう。
目の前には10階に出てきた鋼鉄アリクイの大群が居た。
マリオンが「下がって」と言うと左腕を前に突き出して「【アーティファクト】」と唱えると左腕からは光の玉が出て大軍の半数を蹴散らしていて俺は思わず「すげぇ…」と言ってしまった。
マリオンは「無理…ごめん」と言うと座り込んで背中の筒にアーティファクトを3つ入れる。
その間、フィルさんはマリオンを守る。
そもそも一番守られるべきお妃様(自称)が防御職っていうのはどうなのだろうか?
残った大軍を俺とカムカでチマチマ倒していく。
半数以上を倒した頃、その横を軽やかにすり抜けて階下を目指す男がいた。
テツイは男の顔を見て「冒険者サンバグ…」と呟くと俺に向かって「ツネツギ様!奴は有名な盗掘家です。珍しいアーティファクトは盗られてしまいます!」と叫んだが、目の前にはまだ鋼鉄アリクイが10匹は居る。
どうやっても無視して進めば大怪我を負う。
フィルさんの加入で防御力、マリオンの加入で攻撃力は上がったが相変わらず回復はナオイの擬似アーティファクトしかない以上、目の前の敵は無視できない。
「無理を言うな!」と言う俺の怒号にテツイはすいませんと謝る。
その時、カムカが「合わせろツネツギ!」と言うと俺に向かって鋼鉄アリクイを蹴り上げる。
合わせる?
俺は昔バラエティ番組で見た髭の芸を思い出して剣で串刺しにする。
確かにこれなら早い。
そのまま2匹の鋼鉄アリクイをカムカが蹴り上げて俺が突き刺す。
一度剣をしまい、また剣を出す。
そしてまた3匹を串刺しにする。
残りの鋼鉄アリクイは復活したマリオンとカムカが普通に倒してくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺たちは急いで階下に行く。
15階の入り口にサンバグは居た。
サンバグはいやらしい笑顔で「へへっ、さっきはどうも」と言うと15階を指さして「でもこの階はロクなもんはないし、16階の階段は見つけましたがね?ありゃあ無理ですわ。巨大な竜が何匹も居ましたよ」と言うと帰って行ってしまった。
ロクなもんが無いとは言え「疲れが取れない…」と言ってヘトヘト顔のマリオンが居るのだから「火の指輪」でもいいから見つけてマリオンに渡さなければならない。
俺達はそう思って探索を始めた。
確かに地下15階は今までのどの階とも違う。
まずは魔物が出てこない。
そしてアーティファクトも落ちていない。
そして妙に小綺麗で、まるで城の一部のようだった。
お陰で階段はすぐに見つかった。
だが変だ。
妙な違和感があるのは気のせいか?
俺は振り返り13階までの地図と14階にテツイに書き殴らせた地図、それと目の前の景色を見比べた。
立ち止まる俺にテツイが「どうしましたツネツギ様?」と聞いてくる。
俺は「変な気がする」と言うともう一度15階を見直す。
テツイは先に進みたそうだったがカムカは「そう言う感覚って大事だぜ」と言って一緒に見てくれる。
暫く歩いて俺はようやく違和感の正体に気づいて「あ!」と声を出してしまった。
休んでいるマリオン達の元に戻って俺は「壁が多いんだ!」と言って気が付いた壁に向かって進む。
上の階ではこの場所にはアーティファクトが廃棄されていた部屋のような場所が有った。
だが、この階にはそれがない。
ようやく納得の行った俺は「だからサンバグはこの階には何もないと言ったのか…」と言いながら壁をゴンゴンと殴ってみると一箇所だけ音が違う事に気付く。
横に居るカムカに「カムカ、頼めるか?」と聞くとカムカは「よし来た!任せろ!!」と言って躊躇なく勢い良く壁を殴ると壁は音を立てて壊れた。
壁の中には想像通り空間があった。
全員が通り過ぎた頃、カムカが吹き飛ばした瓦礫は消滅して壁は元に戻っていた。
思わず「自動ドア?」と思って口にしたくなったが誰も自動ドアを知らないので我慢をした。
壁の向こうの空間は部屋だった。部屋は密室だが、空気はカビ臭くないし空気は淀んでもいない。
部屋に入ってすぐに「カムカ…」と呼んだマリオンがカムカに向かって「アーティファクト見つけた…貰ってもいい?」と聞いている。
部屋の端に置かれたテーブルには、火、水、氷、雷、風、解毒、回復、時の指輪と腕輪が3個ずつ置かれていた。
「沢山あるから一個なら良いんじゃねえか?」とカムカが言うとマリオンは「一個ずつでもいいかな?」と言って全種類を一個ずつ補充してしまった。
まあ、もし不具合が出たらどれも上の階にあったと思うからそれを拾おう。
そんな事を思っているとフィルさんが別のテーブルを見て「これは?」と言っている。
そこには手紙があった。
「私ではない私へ」と言う書き出しの手紙は「もう1人を起こしたら万一の事態に供えて16階への階段に隠したアーティファクトを取って私に戻りなさい」と書いてある。
なんか変な文章だと思って手紙をマジマジと見ていると勝手に奥の部屋に行っていたテツイが「ツネツギ様!」と言って俺を呼ぶ。
その声はお化けでも見たような腰が抜けた人間の声と言えばいいのか上ずっていた。
とりあえず俺たちは奥の部屋に行く。
部屋に入ってカムカが最初に「こりゃあ……なんだ?」と言って驚いている。
部屋の壁一面に大きな水槽があり、その中で女の子が2人プカプカと浮いていた。
気泡が上がる所を見ると寝ているようだが、空気はどうなっているんだ?
「カムカこれ!」
フィルさんが指を指すと服が畳まれてキチンと用意されていた。
ただ、何故かまた3セットある。
服の所に名札が付いていた。
「ノレル」
「ルノレ」
この2人の名前か?俺が名前を見ているとテツイが「なんか目がチカチカします」と言う。
ノレルは青系の服、ルノレは赤系の服だった。
とりあえずこのままにはして置けないのでカムカと協力をして2人の女の子を助け出す。
タオルも探したら赤と青が3セットずつ出てきた。
だから何で3セットなんだ?
とりあえず相手が女の子なのでフィルさんとマリオンがタオルで身体を拭いて起きるまでタオルを身体にかけることにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ノレルとルノレの2人はまだ起きない。
呼吸はしていたので問題ないと思う。
部屋の外がうるさくなってきた。
おそらく14階を踏破した冒険者だろう。
だが、誰もこの部屋には気付かない。
俺たちも言わない方がいいと思ったので帰るにしても人の居ないタイミングで壁を壊すことになった。
どうする事も出来ずに眠るノレルとルノレを見ながら待っているとフィルさんが2人を見て「この子何者かしら?」と言い、マリオンも「しかも同じ顔で色違い」と言って首をかしげる。
俺が「双子だろ?色は知らないが…」と言ってマリオンの疑問に答えるとマリオンが「双子?」と聞き返し、横のカムカが「なんだそれ?」と言い、フィルさんも不思議そうに「ツネツギさんの世界の話ですか?」と聞いてくる。
みんなして双子を知らなかった。
俺は子供が2人同時に生まれた時に全く同じ顔で生まれてくる事があってそれを双子と言うと説明をしたのだが、誰も赤ん坊を見た覚えが無いという。
「あれか?生まれた猫がみんな三毛猫みたいなもんか?」
カムカが明後日の事を言っている。
おかしく思ったので色々聞いて見ると、この世界には命の絶対数があって、それを下回るまで子供は生まれてこないと言う。
なんだこの世界は?
そもそも大破壊だって相当数の人間が死んだはずだ、それなのに子供が生まれない?
なんだ?
答えに困った俺が「いや、マリオンはどうなんだ?」と俺が聞くとマリオンが「私は人形だから」と言う。
ますます理解が追い付かない。
俺は双子の話から逃げるように別室に移動しながらマリオンの人形発言について聞くと、マリオンはペックと言う爺さんが孫を模して作った人形でペック爺さんが作ると魂が宿るかのように生きた人形が生まれると言っていたが、どこが人形なんだよ立派な人間じゃねえかよ。
とりあえずようやくこの世界に順応しかけた俺の常識を覆す内容に驚いてしまった。
そうしていると青い方、ノレルが起きてこちらにきた。
服はキチンと着ていた。
「あなた達、誰?」
第一声がそれかよ。
聞きたいのはこっちだ…。
この世界のことは疎いのでカムカとフィルさんとテツイにノレルの相手を任せる。
3人とも頑張ってアレコレ聞き出している。
そうすると「よく寝たよ〜」と言って奥から出てきたのは赤い方、ルノレだ…。
ルノレは服をキチンと着ていなくて胸がはだけていて目のやり場に困る。
ノレルがルノレに対して「ルノレ、服を着て」と言うと「あはは、そうだね。てっきりノレルちゃんしか居ないと思って服は後回しにしたら人が沢山いたね」と笑っている。
マイペースさに困った俺が「マリオン、ごめん頼める?」と言うとマリオンはルノレの腕を引いて奥に行き、少ししたら服を着たルノレが出てきた。
「おはよう。お兄さん達は誰?」
またそれかよ。
とりあえず全員で座る。
名前だけの自己紹介をする。
ノレルは物静かでルノレは能天気だ。
俺が「何があったか教えてくれる?」と聞くと2人して、「私ではない私がこの奈落を作った」「それで私が〜、アーティファクトを捨てにきたの」と言い始める。
「私ではないでしょ?私ではない私でしょ?」
「でも私だよ〜」
2人の説明は要領を得ない。
だが、奈落のアーティファクト「迷宮の入口」を発動させて奈落を作ったのも、アーティファクトを奈落に廃棄したのもこの2人だと言うことはわかった。
ここでテツイが「でも、記録では奈落の製作者は製作後に病で命を落としたと書いてあります。アーティファクトの投棄者も記録では奈落から戻らなかったと…」と疑問をぶつけるとルノレが「そうだよ、奈落を作るように言われていた人はもうすぐ死ぬのがわかっていたから、凄く複雑な奈落にして入った人を全部殺すような奈落にしたがっていたから私が変わったの」と言うとノレルが「ルノレではない。私ではない私だ」とツッコミ「そして私ではない私が奈落にアーティファクトを投棄する仕事を受けた」と説明をした。
まだ言葉が続きそうだったノレルの説明だったがテツイが「そんな!」と言って口を挟む。
「奈落への投棄を受けたのは、13年前に国で最高のアーティファクト使いだったルル様です。ルル様は国がアーティファクト不要に舵を取ったことに悲観されてアーティファクトの投棄に立候補されて、奈落からは戻りませんでした。今ももしご健在ならば49歳のはず、あなた方はどう見ても20歳くらいではありませんか!」
確かにどう見ても49には見えない。
申し訳ないが裸を見て肌ツヤは俺達と変わらなかった。
ノレルは頷くと「そう、私ではない私は、国がアーティファクト不要になる事を憂慮した。いずれまたアーティファクトを求める日が来る事を信じて奈落に篭ったのだ。この場にお前達がいると言うことはまた国はアーティファクトを求めたのだろう?」と言い、ルノレが「やっぱりねー。私は凄いんだから」と言って二ヒヒと言う笑い声で笑うと、またノレルが違うと突っ込む。
フィルさんが「大体わかったけど、2人はこれからどうするの?」と聞くとノレルが「私は私ではない私に戻る」と言い、ルノレも「うんうん」と頷く。
マリオンが「それってこれ?」と言って例の手紙を見せるとルノレが「そうそれ!」と答えてノレルが「行かなきゃ」と言った。
そんな2人に対して俺は提案をした。
「君たちではない君が言う通り、この国は再びアーティファクトを必要としていて。俺たちは最深部…30階にある「創世の光」を持ち帰る必要があるんだ、一緒に来てくれないかな?」
俺の提案にノレルは「別に構いません」と言い、ルノレは「いいよー」と言ってくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
2人はアッサリと提案を受け入れてくれた。
「ただ、協力はしてくださいね」
「私は私に戻るから!」
条件付きではあったが…だ。
それでも奈落に詳しい人間が仲間になるのはありがたい。
その16階を目指してさっさと先に進もうとした時、ルノレがテーブルを見て「あーっ、私のアーティファクトが足りない!!」と騒ぐ。
マリオンが申し訳なさそうに「ごめん、食べちゃった」と謝るとルノレは「予備の予備が〜」とがっかりしている。
予備の予備と言う単語に疑問を持ったカムカが聞くと、服やタオル、それにアーティファクトも全部「使う用、予備、予備の予備」を用意していたらしい。
ここでノレルが「それでも私が私ではない私に戻る為のアーティファクトは予備の無い唯一無二なので早く取りに行きたいのです」と言うとルノレが「食べちゃった分は仕方ないから…ノレル、自分の分を装備して早く行こう」と言って、ルノレが風、解毒、回復、時のアーティファクトを、ノレルが火、水、氷、雷のアーティファクトを装備する。
これを見ていた皆が「え!?」と声を揃えて驚く。
俺は何が凄いのかと見ているとルノレが「えへへ~。凄いでしょ?」と言って自慢をして、ノレルは「そうたいした事じゃありません」と謙遜していた。
テツイに何が凄いのかを聞くとアーティファクトの複数持ちが出来ると言うのは相当凄い事らしい。
カムカが耳を澄ませ、指で大丈夫だとジェスチャーをする。
今は誰も居ないみたいだ。
カムカが壁を殴ってこじ開けて16階の階段に向かう。
壁を見ると階段の壁に小さな穴が開いている。
どういうものかわからないが確かにここには何かがあったようでノレルが「無い!!」と言い、ルノレが「なんで!!?これじゃあ私でない私になれないよ!!」と慌てる。
マリオンがなだめるように「ここには何があったの?」と聞くとルノレが泣きながら「三角の宝石みたいなアーティファクト」と言う。
先程俺たちが来た時には既に無かった。
この場所に最初に来たのはサンバグだ…その事に気付いた俺が「野郎、何もなかったとか言ってちゃっかり見つける物は見つけていたのか…」と言うとテツイが「転売されては問題です。早く帰りましょう」と言い、皆で14階への階段に走る。
ノレルが走りながら「何処へ行く?奈落の外か?」と聞いてくる。
俺が「そうだよ、大事なんだろ?」と聞くとルノレが「大事だけど、今から奈落を這い上がっていたら時間が足りないよ」と言う。
だがどうしろと言うのだと思っているとノレルが「そういう言う事だ。着いてこい」と言って再びさっきの部屋に俺達を連れて行く。
流石に時間的なものを考えてカムカが「早くしないと売り飛ばされちまうぜ」と慌てるとノレルが「だから急いでいる」と返し、ルノレが「ノレル急いで~」と声をかける。
ノレルは水槽のあった部屋の壁を触ると「あった」と言って何かを触ったのだろう、ガコンという音と共に隠し扉が開き、これにテツイが「えぇぇぇぇっ!?」と言って驚く。
ノレルが「ついてこい。奈落の外への近道だ」と言って隠し扉に入っていくので皆で後をついて行く。
人一人が通れる大きさの隠し通路は螺旋階段になっていて、俺たちはグルグルグルグルと階段を上る。
テツイが「目が回ります」と言うとルノレも「本当、ルノレも目が回るよ」と言ってテツイとルノレが目を回しながらついてくる。
暫く駆け上がるとノレルは「着いた」と言って壁に耳を当てて「人の気配はない」と言うとノレルが壁を触ってスイッチを操作する。
ガコンという音と共に1階出口付近の壁が開く。見覚えのある場所に俺は「嘘だろ…こんな所に出るのかよ」と言ってしまう。今までの奈落探索がなんだったのかと言いたくなる簡単さで奈落の入り口まで戻ってきてしまった。
全員が出るとノレルが壁を塞ぎ「急ごう」と言った。
俺達は急いで飛び出すが、出入り口の門番に阻まれる。
まあ、行きは5人で帰りは7人なので致し方ない。
テツイが「奈落の中で見つけた生存者です。ウノ様にご報告します」と言うと門番はそういう事ならと通してくれた。
だが俺たちが目指すのはウノの所ではなくサンバグの所だ。
門番にサンバグの話を聞くと「上機嫌で酒場の方に向かったよ」と言ってくれた。時間にしたらついさっきの事だと言う。
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