第50話 女神降臨。

カムカから解毒のアーティファクト使いに関しては確約を貰えた。

ただ条件があって、アーティファクト使いの安全が第一な事、後は期限が4日しかない事、そして最後は意味不明だったが、奈落に投棄されているアーティファクトを片っ端から集めろと言うものだった。


アーティファクトを集める理由はカムカすら聞いていないらしいが何に使うと言うのだろうか?


テツイの方はカムカの仲間に対しての言質を取ってきた。

奈落の攻略と言うのが大きいらしい。

ただ、こちらも結果を出さなければマズイと言う事だ。



だが、そんな心配も要らないくらいの結果だった。

地下10階まで一気に潜った。

カムカは1人で何でも倒してしまうし、俺の出番もカムカが気を使って譲ってくれたくらいだ。



あ、途中でまたテツイにやられた事があった。


それは地下8階での事、毒ヘビと戦っている時にカムカが「ツネツギ!一度盾を出して攻撃を受け止めろ!剣ばかりではダメだ!」と俺に言ってきた。


まあ、毒ヘビに関しては俺とカムカですぐに倒したのだが俺が引っかかったのはそこではない。


「盾?何だそれ?」

「え?お前のアーティファクトって「勇者の腕輪」だろ?それ、剣と盾が出せるぜ?」

この言葉に返事をしない俺にカムカは「もしかして知らなかったのか?」と聞いてくる。


……またか?


俺は不機嫌を隠さずに「おい?テツイ?カムカが言っているのは本当か?お前はまた知っていたのに言わなかったのか?」と聞くとテツイは「え?え?」と言いながら焦っている。


もうこの段階でわかる。「言う必要がないと思ったor言ってませんでしたっけ?」だ。


俺は待つことなく「後でナオイ会議な」と言い、テツイは「えぇぇぇぇっ!?」と悲痛な声を出す。ナオイ会議は最近テツイが足を引っ張るごとに、夜ナオイの所で反省会をしている事を言う。


ちなみに盾は出た。

カムカに殴り試してもらったが、ビクともしない。


これがあれば俺の左腕は怪我を負わなかっただろう。

そう思うとムカムカしてきた。


地下10階をくまなく探索したが、解毒のアーティファクトは出てこなかった。

出てきたのは疲労回復とかそう言うアーティファクトばかりだったがとりあえず目標数の30個は取った。「祝福のナイフ」や「火の指輪」、それ以外の武器なんかのアーティファクトも取った。


時関係のアーティファクトもあったがテツイが使えそうなものは無かった。


コイツは本当に…


夜はナオイにカムカを紹介してからナオイ会議を執り行った。

盾の話にナオイは滅茶苦茶怒っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


もう、夜になってしまった。

ジチやリーンさんはシモーリから何を言われたのだろう?

本当に一日中誰もこなかった。

おかげでずっとキョロくんといる事ができた。


途中、3回ほど何処かに通信球で連絡を取っていた。

そのうち1回はうちのお爺ちゃんが相手だった。


キョロくんが「行く前に一度話した方がいいよ」と言うので明日から四日間だけイーストに行ってカムカを助ける話をした。


夕飯後は早寝をした方がいいと言われたので言う通りにした。

その代わり「一緒に…寝よ?」と言って添い寝を要求してみたらキョロくんは快く受け入れてくれた。


私はキョロくんの手を握りながら「明日から離れ離れはいやだな」「一緒に行けたらいいのにね」と、そんな事ばかりを言い、キョロくんは優しく「うん」「そうだね」と言って相槌を打ってくれる。


キョロくんの腕に抱き着いて身体の中の音に耳を澄ませていたら私はいつのまにか寝ていた。

起きるとまだ夜明け前で、キョロくんは身支度を終えていて「フィルさん、起きた?そろそろ起こそうと思っていたんだ」と言ってきた。キョロくんはいつも早起きで何でかを聞いたら御父様と狩りに行くのは早朝だから慣れたそうだ。


私が「まだ起きてないから起こして」と甘ったれたら優しく抱き起こしてくれて「おはよう。起きて」と言ってくれた。

部屋の外に簡単だが豪華な朝ごはんが置いてあった。


それを食べた後、キョロくんはシモーリを呼んで「ちょっと出てくるから後よろしく」と言っていて、それを見た私は国境まで瞬間移動で送られたら離れ離れかと少し寂しくなる。


そんな時、キョロくんが「フィルさん、行くよ」と言った後、景色が流れた。

たどり着いた先は四の村で私が「え?ここって?」と言っている間にキョロくんはペックお爺さんの家に入っていく。


リビングにはマリオンちゃんとペックお爺さんの2人がいて「おはよう」「相変わらず早いね」と言って手を振ってくる。


私は「おはようございます」と言ってキョロくんの方を見る。

キョロくんは少し照れ臭そうに「道中心配だからマリオンに護衛を頼んだんだ」と説明をしてくれるとマリオンちゃんが「カムカに会えるなら行く」と言って私の紫の鎧とお揃いの濃紺の鎧を着てデザイン違いの兜を机の上から手に取った。


私はここで濃紺の鎧に見知らぬ部品が追加されていた事に気付いて「あれ?それ何?」と聞くとペックお爺さんが「これ?今ねドフと一緒にこの鎧に新しい機能を追加していたんだよね。カムカくんが旅立ってからマリオンがションボリしてたからさ」と言ってマリオンちゃんの頭を撫でるとマリオンちゃんは「これでカムカに会えるの」と言って嬉しそうに微笑む。


知っていたキョロくんは「擬似アーティファクトやアーティファクトをマリオンの燃料に変える機械だって、「龍の顎」の話をしたら作ってみるって言っていたんだよね」と私に教えてくれるとペックお爺さんを見て「後頼んでいた奴は?」と聞くとペックお爺さんはニコニコ笑顔で「急だったけど出来てるよ」と言って通信球よりふた回り程小さな球を出してきた。


「これは?」

「名付けるなら映像球…かな?僕の瞬間移動って見たことない場所には行けないから今回もキチンと送っていけないからペック爺さんに相談したんだよね」

ペックお爺さんはニコニコと人差し指を天に向けて「物は試しだけどさ、これで映像を見れば瞬間移動出来るんじゃないかなって思ってさ」と話をする。


「まあ、そうじゃなくても姿が見られれば緊急時に光の剣を飛ばせるかなって思って、ほら…やっぱりフィルさん1人でって心配だし、カムカにも持たせた方が今後何かと楽かなって…」

私は照れて説明をするキョロくんを見てそこまで心配してくれている事に嬉しくなった。


「マリオン、カムカの話だとイーストは大破壊とか言う事件で「大地の核」が弱っているらしいから気をつけてね」

「うん、その為の新装備だからなんとかなると思う」


話の区切りが良くなったところでキョロくんがじゃあ行こうと言い私達はサウスとイーストの国境まで瞬間移動をした。

ここはキョロくんが王様になって最初に視察した場所だから瞬間移動が可能で、兵隊達はシモーリから話を聞いていたのだろう。驚きもせずに私達に敬礼をして仕事に戻る。

今は雷の結界も今は止まっている。


国境の門が開いてここでお別れになった時、キョロくんは覗き込むような目で私を心配そうに見つめて「フィルさん、マリオン、気をつけてね」と言ってくれる。

私は「早く帰ってくるね」と言うとキョロくんに抱きつく。


そのまま私が「行ってきますのキスをしてもいい?」と聞くとキョロくんは優しく頷いてキスをしてくれた。目を瞑っているから顔は見えないが「見せつけるわね」とマリオンちゃんがボソッと言うのが聞こえてくる。


キスが終わっても抱擁は終わらない。

長い抱擁。

まだ終わらない。


名残惜しんでくれて私は嬉しいけど、先に進まないとカムカとの待ち合わせに間に合わなくなるので私は「キョロくん?」と声をかけるとキョロくんは「やっぱり心配だ」と言うと私の腰に左腕を回す。


突然の事に私が「え?」と言っているとキョロくんは兵士達に「もしもシモーリが迎えにきたら2時間以内に戻ると伝えて」と指示を出すと私を抱きしめたまま高速移動を始めた。


直後に聞こえてくる「マリオン!ついてこられる?」の声に合わせて後ろを振り向くとマリオンちゃんも遅れる事なく付いてきて「誰に言っているのよ?」と返している。

そして並走すると「アンタのやりそうな事くらい想像つくわよ」と言って今度はキョロんくんが「そう?」と返している。


私だけが話について行けずに「え?え?え?えぇ?キョロくん?」と言うとキョロくんが「ギリギリまで一緒に居たかったんだけど…、ダメだったかな?」と言う。

その顔は本当に心配してくれている顔で本当に嬉しさが溢れてくる。


「え?すごく嬉しいけど、これシモーリにも怒られないかな?」

「まだ朝早いし大丈夫だよ」


高速移動はアーティファクトの力で前に進むので走るのとはまた違う。滑るような感覚だ。


前の時間でリーンさんはこうやってキョロくんの腕の中で悪魔と戦った。

それを聞いてかなり羨ましかった。

今、私がそれをして貰っている。その事が嬉しくて仕方なかった。


しばらく走るとキョロくんが「マリオン!もう少し速度上がる?」と聞きマリオンちゃんは嫌そうに「出来るけどやりたくない」と言って自分の手を見て「「大地の核」が弱いんだよここ」とぼやく。


キョロくんは「そうか」と言うと右手でマリオンちゃんを抱きかかえて速度を上げるとあっと言う間にイーストの城が遠くに見えてきた。

キョロくんは徐々に速度を落として止まると「じゃあここから先は見張りが居ると困るから帰るね。帰りはここまでなら確実に瞬間移動できるから迎えにくるからね」と言うと私にキスをして消えてしまった。


マリオンちゃんは「変わらず非常識」と酷評して居たが、私はギリギリまで一緒に居たいと言ってもらえた事と抱いたまま高速移動をしてもらえた事で幸せ一杯だった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


まだ日の出間もないと言うのにフィルさんから連絡が来た。

小屋に居ても通信球の声がよく聞こえた事を疑問に思ったらもう奈落の入り口に居るという。

多分、キヨロスが何かやらかしたに違いない。


俺は眠い目をこすりながら奈落の入り口に行くと、良く目立つ濃紺と紫の全身鎧が見えて俺に気付いたフィルさんが「カムカ、来ましたよ」と言う。


キヨロスが居ないとピシッとした感じになるフィルさんが朝日を背にして俺を見る。

絶世の美女と言ってもおかしくないフィルさんが奈落の入り口に立っているので早朝にもかかわらず番人や冒険者が色めき立っている。


俺の登場に周囲からは「おい、アイツが男か?」「くそ」とか聞こえてくるが、この人はサウスの王様の自称第一夫人様だよとは口が裂けても言えない。


呆れる俺に「カムカ!!会いたかったよ!寂しかったよ!」と言ってマリオンが俺に抱きついてくると今度は別の意味でのどよめきが起きた。


…あれ?


俺は抱き着いたマリオンに違和感をおぼえて「マリオン?なんか雰囲気違くね?」と聞くと抱き着いたままのマリオンが「カムカ凄い!」と言って嬉しそうに力を込めて抱きしめてきた。話を聞くとペック爺さんに頼んで手足を新調してもらって少しだけ背が伸びたそうだ。


マリオンは成長できないのを気にしていたが、そうやって大きくなれるのなら良かったと思う。


俺は奈落を見て「これが奈落?」「もう行く?」と言う2人に「とりあえず早過ぎだよ、一度こっちに来てくれ」と言って俺はツネツギとテツイの所に2人を案内する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


カムカが「早いなぁもぅ!」と言いながら出かけて少ししたら物凄い美人と可愛い子を連れて帰ってきた。

可愛い子はカムカの腕に抱き付いて「カムカ、カムカ」と嬉しさを隠さずに名前を呼ぶ。

カムカもまんざらではないのか嫌がらずに腕を鉄棒がわりにして女の子と遊んだりして居る。


美人さんはフィルと名乗った。

カムカから委細は聞いていたので細かくは言わない。

カムカではないがテツイにフィルさんの正体が伝わってそこからトラブルになっても困る。


可愛い子はマリオンと言っていた。

カムカが言うには解毒の意味ではフィルさんを俺に会わせたかったと言っていて。

それ以外ではマリオンが居てくれて良かったと言うので理由を聞いたら詳しくは奈落で話すらしいが俺と会わせたかったそうだ。


とりあえず朝メシを食べたら一目散に城に行って御代の解毒だ。

俺たちの朝メシ。

虹色カラスのサンドウィッチを見て、マリオンとフィルさんが嫌そうな顔をしている。


フィルさんの「あの…なんでわざわざ虹色カラスを?」と言う問いにテツイが御代のように毒を盛られる可能性から手作りの必要がある事、だが皆が普段から食べる食材には毒が仕込まれる可能性があること、そして何より安くて量がある事を力説していた。


フィルさんは合点が行った顔で「え?じゃあ毒の心配が無ければいいの?」と聞いてくるので俺は「そんなもん。そうなれば俺だってこんな極彩色で普通の味の鳥肉なんて食べませんよ!でもね、妹を救うまでは俺まで毒にやられるワケにはいかないんですよ!!」と半ばヤケで言う。


…呆れるフィルさんとマリオン。

これが普通だよな…。


それなのに「食えるだけ感謝だぜ!鳥肉は筋肉になるんだから喜べ!」と言ったカムカがおかしいのだ。

俺の顔を見て「じゃあ、一緒に食べ物屋さんに行きませんか?」と言うフィルさんの提案にカムカが「そっか!フィルさん居れば問題ないな!」と柏手を打って喜んだ。



フィルさんのアーティファクトには毒を検知することも出来るそうなので、食べ物屋で出てきた料理をチェックしてもらった。


一品だけフィルさんのアーティファクト、「紫水晶の盾」が反応したが毒と言うより食品衛生がアレで腐っていただけで、後は全部美味しく食べられた。


俺はガラにもなく「美味い!!ご飯って美味しい!!極彩色じゃないお肉サイコー!」と言って喜んでお腹いっぱい食べた。

その横でテツイが不服そうに「虹色カラスも悪くないのに」と言ったので「俺は今日からフィルさんがいてくださる間は全部お店にくる。お前はあの小屋で1人わびしく虹色カラスを食っていろ」と言っておいた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


俺達は腹がいっぱいになったのでいよいよ城に向かう。

何はともあれまずは御代の無事を確保する事が第一だ。



城に入るとテツイの案内でウノのもとに向かう。

カムカの話ではないが、コイツの致命的な気の利かなさは、もしやわざとでスパイなんかをしている可能性を考えてしまう。


顔に出ていたのか、マリオンが俺の横に来て「大丈夫。この程度の城なら私とカムカが本気出せばあっという間に滅ぼせるから」と言った。

カムカはまだしもこの子が?とも思ったが、妙に達観していて信じてしまう。


ウノは早朝にも関わらずすぐに出てきて「ツネツギ様、おはようございます。いかがなされましたか?ミシロ様でしたら今もお休みですが?」と言うとカムカがすかさず前に出る。


「朝早くからすまない。この2人が俺のサウスでの仲間、フィルとマリオンだ」と言ったカムカの声に合わせて2人がウノに会釈をする。


ウノは援軍が美女と少女とは思わなかったのだろう、すこしガッカリ顔したような呆れるような顔だが丁寧に「はぁ、これは遠路はるばるようこそおいでくださいました」と挨拶をした。


ウノの表情を見たカムカが「このフィルは解毒のアーティファクト使いだ、フィルが居れば消せない毒はない。ツネツギの妹を治す」と説明をするとウノが「おや、お仲間は奈落攻略の為とテツイから伺っていたので許可を出したのですが、まさかミシロ様の為となると…」と言って因縁をつけようとしてきたので割り込んで一言文句を言ってやると思う俺をマリオンが止める。


何で止めるのかと思うとカムカが「そうじゃねえ、奈落攻略が俺の目的だ」となんの問題も無いように言葉を続けた。

想像と違う返事に驚いたのはウノの方だった。


ウノの顔を見てカムカが「逆にあんたらが俺の奈落攻略の邪魔をしているんだぜ?」と言うと眉間にしわを寄せたウノがカムカを見返す。


「あんたらが俺1人に攻略を任せないでツネツギと一緒って言うからツネツギのペースに合わせているのに、ツネツギと言えば二言目には妹だ。しかも妹が心配だからと地下10階で効くかもわからない解毒のアーティファクトを探すと言って聞かない。だから俺は2人を呼んだ」


そう言うとウノを睨むカムカ。カムカの顔には「迷惑してる」と書いてある風に見える。


少ししてウノが「はぁ…」とため息をついて「そう言う理由でしたか、それならば仕方ありませんね。ではついて来てください。ミシロ様はこちらです」と言って先頭を歩く。


ウノの後ろを歩きながらカムカが俺にガッツポーズをしてくる。

あの交渉が演技だとするとカムカはただのマッスル野郎では無いと言うワケだ。

ウノに着いて行き通された部屋に入るとそこは何も無い部屋だった。


俺は「騙された!!?」と思い、剣を出そうとしたのだがカムカが制止する。

ウノが俺とカムカを見て「さすがはカムカ様、お気付きですね」と言いながら部屋に鍵をかける。


そしてウノが「解除を」と言うと部屋の真ん中にベッドと3人の男が現れた。

そのベッドの真ん中では倒れた日のままの御代が横たわっていた。


俺はベッドに駆け寄りながら御代を呼ぶとウノが「ご安心ください。このようにして常に守らせていただいています」と言った。


「部屋自体をアーティファクト「光の加護」で見えなくし、アーティファクト使いは6人居て、全てテツイと同じ「時の指輪」の使い手、全員が交代で一日中ミシロ様の為に時を停止しています」

この説明にカムカが「時を…止める?」と疑問を口にする。


ウノはジト目でテツイを見て「はぁ…テツイ…またあなたは何も伝えなかったのですか?」と言い図星のテツイは「え?えぇっ…」と慌てる。

俺も知っていれば慌てなかった気持ちから「会議だな」と言うとテツイは観念したようで「えぇっ…。……はい」と弱々しく返事をした。


「文字通り、一時的にですが時を止めるんです。切れ間なく時を止める為にこうして数を配置してやり過ごして居ます」


そんなウノの返事にカムカは「治療は無くても時を止めるのはあるんだな」と言った。


そうだ。

このチグハグさは何だ?

カムカの言葉にウノが言う。


「別におかしい事ではありません。国の内情を知る者が、国に無い治癒の力でないと回復出来ない毒を用意しただけです」


確かに、内側を知っていれば可能なのか…


「我々も治癒のアーティファクトを多少は持って居ますし、あれば使います。ただ種類も量も足りていないのです」


そう言ったウノが「さあ、フィル様、ミシロ様の解毒を」と言ってフィルさんを手招きした。


フィルさんが一歩前に出て御代に盾のアーティファクトを構えるとミシロの身体から嫌な緑色の煙が吹き出してきてフィルさんの盾が吸い込んだ。


フィルさんは事もなく「終わりました」と言う。

俺が「じゃあ…御代は?」と聞くと「もう大丈夫ですよ」と言って微笑んでくれた。

美女の微笑みはなんか安心感が違う。


俺は「ありがとうございます!!」と言って御代を見たが御代は起きない。

俺の不安を読み取ったのかウノが「まだ一時停止が効いています。もうしばらくお待ちください」と言った。


数分後「うぅ〜ん」と言う声で御代は目を開けると俺を見て「お兄………すごい顔してるよ?」と驚いた顔をしてきたので俺は喜びを隠すように「これがいつも通りだ」と答えると「そっか」と言って御代はまた寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る