第42話 究極の腕輪を授かった事で、想いを告げた女性たちに訪れた変化。

一の村の風呂場に到着した僕は泣いていて横に居たリーンが驚いた顔で「キョロ?大丈夫?どうしたの?」と聞いてくれた。


僕は涙を流しながら「トキタマが旅立ってしまったんだ」と答えるとリーンは周りを見てから「トキタマちゃんが?」と聞き返す。

僕は解脱が完了した事とトキタマから「究極の腕輪」を贈られた事を伝えた。また泣いた僕をリーンは優しく抱き寄せてくれて「よしよし」と言いながら頭を撫でてくれた。


リーンは穏やかな声で「トキタマちゃんは悲しいけど、キョロから不死の呪いが消えたのは良かったね」と言う。リーンの言う通りトキタマの事は悲しいが不死の呪いが消えた事は良かった。


なので「うん。トキタマにはもう頼れないけど、これでリーンの魂も無事に返せるよ」と僕が言うとリーンは「え?何を…」と驚いた顔で聞き返してきた時、僕は「【アーティファクト】」と唱えていて、「究極の腕輪」で「誓いの指輪」の効力を無効化した。

僕はリーンの前に指輪が付いた掌を見せて「これでこの指輪は無効化出来たよ」と言う。


リーンは驚いた顔で自分の指を見て「え!嘘?私はそのままでも良かったのに」と言ったが僕は「良くないよ」と言う。僕の為にリーンの魂が減っていい道理はない。


リーンも「でも、私はキョロと一緒の魂で良かったの。ううん…一緒が良かったの」と言って引き下がらない。

このままでいい話ではないので「…じゃあ、全部が解決した後でもう一度よく話し合おう」と言うとようやくリーンは「うん…我慢する」と言って納得をしてくれた。



「僕は今から先に進むけど、リーンは付いてくる?」

「ん?一緒には行きたいけど今は待つ。もう、トキタマちゃんが居ないならキョロの足を引っ張れないし」


リーンには申し訳ないが危険からは遠ざけたい。

僕が「…わかった」と言うとリーンは「ちゃんとすぐ帰ってきてね」と言って僕にキスをしてきた。


唇が離れて息のかかる距離にいるリーンに「じゃあ、行ってくる」と言うとリーンは優しく「うん。キョロの思う通りになるように願っているね。私待ってる」と言ってくれた。


リーンが離れた所で僕は光の剣を射出する。飛んでいく剣に意識を集中させてフードの男の周りの兵隊を全て峰打ちで気絶させるとそのまま毒竜のところまで飛ばす。

「究極の腕輪」のお陰で問題なく高威力の剣を飛ばせる。今までと違って辛くない。

そのまま毒竜を倒して剣を戻す。


剣が戻ってきたが普段よりも時間がかかっていたからだろう。リーンが心配そうに「キョロ?」と聞いてきた。僕は「ん?兵士は気絶させたよ。それでついでに毒竜も倒してきた」と時間がかかった説明をした。


「え?三の村まで剣を飛ばしたの?」

「うん。腕輪のお陰で問題なく使えたよ」

僕が笑いかけながら話すとリーンは「キョロ…どんどん凄くなっていくね」と言った。


そんな事ないと言おうとした時、リーンが「ねえ、ひとつ思い出したけど「支配の王錫」はどうするの?キョロが持ったら悪魔化したりしない?」と聞いてきた。僕は「究極の腕輪」を見せながら「それなら腕輪の力でアーティファクトの複数持ちも問題無くなったんだ。だから大丈夫だって言われたよ」と説明をする。


リーンは残念そうに「そっか、そうなると本当に私はお留守番だね」と言う。

確かにリーンの立場からすれば何も出来ないのは面白くないだろう。

僕が「ごめんね」と謝るとリーンは「いいよ…」と言ったまま俯いてしまう。


そのまま「でもフィルさんは凄く綺麗で優しそうだし、ジチさんも優しくて料理が美味しくてさ…、マリオンは良くわかんないけど…」と言った。


戦いの話かと思ったがそのままフィルさん達の話が出てきたので僕が「リーン?」と聞き返すとリーンは「私、キョロに選んでもらいたいな」と言った後で「ずるいねこう言うことして」と困った顔をする。


リーンは肩を震わせて泣いて「私ね、さっきまではあの3人に負ける気はしてなかったの。もし、キョロが私じゃない誰かを選んだとしても、嫌になってやっぱり私がいいってなったらトキタマちゃんの力で私の所に戻ってきてくれるって思っていたの…」と言う。


僕が返事も出来ずに聞いていると「でもね、トキタマちゃんが居なくなったのを聞いたら、他の3人は選ばないで欲しくなったの。負けるのが怖くなったの。やり直せないって気づいたら怖くなったの」と言って僕に泣きついてきた。

少しだけそのまま泣いたリーンは一度だけ僕を強く抱きしめてから離れると「ごめんね。何度もごめんね。今は全部終わらせることが大事だもんね」と言った。


僕はリーンから毒竜の角、マリオンのブローチ、制御球を受け取ると「瞬きの靴」でフードの男の所へ瞬間移動をする。


なんか泥棒の予告みたいだと思いながら「今度こそ「支配の王錫」を受け取る」と言う僕にフードの男は「はい!お待ちしております!」と言って城に戻って行った。


フードの男が消えた事を確認した僕は次に山小屋へ行く。

山小屋に入ってフィルさんのベッドを目指すとフィルさんはまた青白い顔で僕を待ってくれていた。「フィルさん。お待たせ」と声をかけると弱々しい声で「キョロくん…」と返事をして微笑んでくれるフィルさん。


僕はその場で腕輪を発動させる。

フィルさんの身体はムラサキさんを使った反動だから腕輪の効果はてきめんだった。

急に身体が軽くなって顔色もよくなったフィルさんは「なに…これ?」と驚いているので僕はトキタマの事、トキタマからの贈り物の事、そしてムラサキさんの解脱について話す。


僕の話を聞いていたフィルさんが「キョロくんってば本当に凄いね」と言って驚いてくれていて、話を一緒に聞いてくれていたガミガミ爺さんが「小僧、完全解決出来るんだな?」と僕に聞く。


僕は「うん、大丈夫」と頷いた後で「僕が誰も殺さない事。これ以上この件で誰も殺させない事。それが完全解決に必要な事だったんだ。僕の家族、友達、村の人、そしてリーン。みんな僕が人を殺すと笑顔になれない。兵隊が誰かを殺す事も、殺された人とその家族が笑顔になれない。ようやくその事に気付いたんだ。だから僕は「支配の王錫」を受け取る事にしたよ」と説明をする。


だが今はどうしてもその事を考えると前の時間では一緒に居たトキタマが居ない事が気になってしまい「ただ、トキタマが解脱して居なくなったんだ…」と言ってしまう。

ガミガミ爺さんは落ち込む僕を見てやれやれといった感じで「あの鳥が居なくなって寂しいのもわかるけど、俺は小僧が不死の呪いなんてもんから解放されて嬉しいぜ。前みたいにやり直しは無いんだからよ、何するにも気を付けろよな」と言ってくれた。


僕が「うん」と返事をするとガミガミ爺さんは「ちょっと用意してくるからよ」と言って僕とフィルさんを残して外に出て行ってしまった。


用意なんてなにも無いだろうに…と僕が思っているとフィルさんが「キョロくん…」と話しかけてくる。

僕は呼ばれた理由は身体の事だと思い「身体辛い?やはり角を飲む?」と聞く。


「ううん、大丈夫よ。心配してくれてありがとう。……そのね、「誓いの指輪」の事なんだけど…」


魂の話だと分かった僕は「誓いの指輪」を見せながら「うん、「究極の腕輪」の効果で僕の魂はすり減らなくなったから、「誓いの指輪」の効果は無効化したよ」と説明をした。


「リーンさんは?」

「そんな事しなくていいって言っていた」

一瞬嬉しそうな顔をしたフィルさんはすぐに「そうよね。せっかくのキョロくんとの繋がりなのに取られたら嫌よね」と言った。


「フィルさん?」

「私も、キョロくんの為なら魂でも何でも捧げて良かったのよ」

本当はそんな事をして貰うのは嫌だったけど気持ちはありがたいので「うん…ありがとう」と返事をする。


「でもキョロくんはそう言うの嫌うから、きっと知ってしまったら何としてでも阻止すると思ってたわ」

「究極の腕輪」で無効化をした事を言っているのだろう。


「ごめんね」

「いいのよそれでも」

フィルさんはそう言うとベッドから出てきて優しく微笑みながら僕に抱きついて来た。


肌着に近いフィルさんの感触に困ってしまうが毒が抜けて温かくなったフィルさんに安心していると「ねえ、キョロくんはこの戦いの後の事って考えてる?」と聞いてきた。

僕は戦いの後と言われても一の村に帰る事くらいしか考えていなかったので「ううん、まだよくは…」と答える。


「もう終わりが近いのに?」

「うん、あまり実感がなくて」


「そうなんだ…。終わった後には…私を選んでほしいな。ずるいよねこれから戦うのにこんな事を言って」

「ううん、そんな事ないよ」


「リーンさんは何か言ってた?」

「…僕がそれを言うのはダメかなと思う」


リーンの事は言ってはいけない。

勿論リーンやジチさん、マリオンにフィルさんの事を言うのも間違いだと思う。


「そうだよね。ごめんなさい。でもね、トキタマちゃんが居たら、もし私以外を選んでもやり直して貰えるって思っていたの」


…フィルさんがリーンみたいな事を言い出した。

僕はそんなに卑怯者に見えたのかな?


僕の考えを察したのかフィルさんは「別にキョロくんがとりあえず全員を選んでみるような人じゃないのは知っているのよ、知っているけど…もう跳べないって聞いたら、私を選んで貰えない気がして…今どうしようもなく不安なの」と言ったまま力を入れて抱きしめてくる。


「私ね、さっきの時間でリーンさんがキョロくんに抱きしめられながら移動したのを見て羨ましかったの。私ならムラサキさんも使えるから、戦いでももっと役に立つのにって思ったの…………ヤキモチね」

その後流れた沈黙に僕が「フィルさん…?」と声をかける。


フィルさんはもう一段強く僕を抱きしめられた後で「こんな話をしてごめんなさい。行きましょう」と言ってあっという間に鎧を身につける。


鎧の音が聞こえたからかガミガミ爺さんが「終わったか?」とやってきた。


「うん、お爺ちゃんお待たせ」

「じゃあ行こうぜ?小僧頼む」


「うん、ちょっと試したい事があるんだ。付き合って」

「んあ?」


僕は「瞬きの靴」の効果範囲を広げてみた。

まず最初に毒竜のところへ行く。

目の前に急に毒竜が現れてフィルさんが「きゃっ!毒竜?」と言って驚く。


突然の毒竜に「ああ、頭か?」と言うガミガミ爺さんに返事をしないで僕は毒竜全部を自分の持ち物と認識してみた。


出来る確信が何処かにある僕が「行くよ」と言うとガミガミ爺さんが「おい!頭忘れてんぞ?」と声をかけるが、その次の瞬間には三の村の入り口に毒竜の死骸と僕達が居た。

うまく行った事で気分が良かった僕は「出来た!」と言う。


「出来たじゃねえよ。小僧、何してんだよ!」

「前の残り僅かな僕の魂と違って、今はこの腕輪があるからやれるかなって思ったんだよね」

これでおじさん達が山まで回収に行く必要がなくなるので僕が満足そうにしているとフィルさんが「キョロくんはどんどん凄くなるのね」と言う。


「そうかな?」

「そうだろうよ、ったく…誰か呼んで始末頼まねえと…」


ガミガミ爺さんがそう言っていると「今度はピッタリね!」と言ってジチさんが現れた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



ジチさんは僕達を見て「あれ?リーンちゃんは?あれあれ?お姫様抱っこは?」と言っているので僕は簡単に今までの事を話す。


僕の説明を聞いたジチさんは「ふーん、トキタマくんが居なくなって、代わりに無効化してくれる腕輪ね、それのおかげでこんな大ごともやってのけたと…」と毒竜の死骸を見て呆れ返っている。


その時フィルさんが「キョロくん、私は一度家に荷物を置いてくるね」と言ってこの場を離れようとする。そしてジチさんとすれ違う時、「今度はジチの番よ」と言った。


そのまま歩いて行こうとするフィルさんにジチさんが「ちょっと待った!」と言って呼び止める。



「ジチ?」

「お姉さんは何も言うことはないわよ。前にも言った通り、キヨロスくんがどうしてもって3回頭を下げてきたら考えてあげない事も無いだけ、そりゃトキタマくんが居ればお試しでもお姉さんを選ぶ可能性はあったけど居なくなったんだし。勝ち目なんて無いでしょ?」


ジチさんまでとんでもない事を言い出した。

僕は一体どんな風に見えるんだろう?


僕がそんな事を思っている間にジチさんは僕を見て「まあ、あれよ。もしお姉さんを選んだら、キヨロスくんが狩をしてお姉さんがお店屋さんを開くって言うのはやってみても良いわよね」とはにかみながらお店の話をしてきた。


ジチさんはそのまま僕の返事を待たずに「はい終わり!さっさとカムカを連れて行くわよ」と言った。


ジチさんらしいなと僕は笑ってしまう。

ガミガミ爺さんはおじさん達に毒竜の後始末を頼んだついでに、そこに居たからと言ってカムカを連れて帰ってきた。


ガミガミ爺さんが僕を見て「小僧、さっさと行こうぜ」と言うので僕が「うん」と返事をするとカムカが僕を指さして「え?キヨロスが俺との再会を喜ぶ時間とかは?」と聞くとガミガミ爺さんは「ねえよ」と言う。



カムカには申し訳ないが先を急ぐ。

トキタマの事とかはみんな揃ってからの方が一度で済むので今は言わずに済ませたい。

フィルさんが荷物を家に置いてくると僕は四の村に行く。

今回は目の前にマリーは居なかった。

居てくれたら話が早くて良かったんだけどな。


ガミガミ爺さん達にマリオンを任せて先に村長の家に瞬間移動をして、制御球を奪ってきた。

やっている事は泥棒と同じだけど、まあこれはペック爺さんの物だから問題ないだろう。


四の村に帰って制御球をペック爺さんに渡すとペック爺さんは「本当に早いね」と言って笑う。

今回のペック爺さんはシチューを火にかける所だったらしい。


僕は笑っているペック爺さんに「マリーを呼んでください」と言うと奥からマリオンが出てきて「私じゃないの?」と言いながら僕を睨みつける。


僕は起きたマリオンに「マリオン、おはよう」と声をかける。

マリオンは「おはよう」と言った後でもう一度「なんで私じゃなくてマリーなの?」と聞いてくる。


僕が「何回も説明するのも大変だから先に皆を集めたいんだよね」と言うと「ふーん…。アンタなんだか雰囲気が変わったね。あの子は?」と聞いてくる。


マリオンは機嫌が悪そうだ。

あの子…トキタマかな?とも思ったがリーンの事だと思って僕は「リーンは一の村で留守番しているよ」と言う。


マリオンは「そう」と言った後で僕をジーッと見ているが何も言わない。

変な沈黙が流れる。


沈黙に耐えかねた耐えかねたペック爺さんが「え?もう呼んでいいの?」と僕に聞く。

僕が頷いて「お願いします」と言うとペック爺さんは制御球に声をかける。


ペック爺さんが「呼んだからすぐに村の外に居ると思うよ」と言ってくれたので僕は村の外でマリーが出てくるのを待つ。


マリーを待っているとカムカとガミガミ爺さんが後から走ってくる。

「小僧、お前がやるとマリーを殺しちまうだろ!小童と変われ!」

「そうだ!俺に任せろ!!」

必死な顔で僕を止めようとするガミガミ爺さんとカムカ。


酷い言われようだ。


僕は「多分大丈夫だから村から出ないで見てて、危なそうだったら変わってもらうから」と言いながら「万能の鎧」の付与機能を「自動防御」「自動反撃」「自動反撃」の組み合わせにした。


少しすると土埃を巻き上げながらマリーが走ってくる。

僕はマリーの速さに合わせる形で高速戦闘を仕掛ける。

マリーが僕に殴りかかるが、自動防御がそれを防ぎ、自動反撃が攻撃をする。


攻撃の内容は悪くないが、やりすぎては困る。

僕はもう一つ考えていた戦い方に切り替えることにした。


「万能の鎧」の付与機能を「自動防御」「身体強化」「身体強化」の組み合わせにした。

そうして再度高速戦闘を仕掛けるとマリーもそれについてくる。

僕は速度を徐々に上げる。


多分マリーの最高速だろう、マリーが付いてこれなくなってきた。

ここで僕が宙に跳ぶとマリーも追いかけてくる。


僕はここでもう一つの制御球を取り出して機能停止の指示を出した。


勢いもあってそのまま宙を舞うマリーを僕は抱きかかえて受け止める。

加速と重量による物凄い衝撃が僕に来るが、僕が緩衝材になってマリーを受け止める。

多分、剣で切りつけたり、拳で殴るよりもダメージが残らない方法だと思う。

これは本当ならトキタマがいる時に試してみたかった方法だ。

僕はそのままマリーを抱きかかえたままペック爺さんの所に連れて行った。


四の村を歩いていると後ろから、「なんだよそのやり方」「普通にやれねぇのかお前は…」と注意が入る。

反論しようかと振り向くと、カムカとガミガミ爺さんがジト目で僕を見てくる。

僕と目が合うと「なんだよ」「全部1人でやりやがって」とさらに言われる。


何か、最近当たりが強くないかな?


僕は何も言えずにペック爺さんの家に戻ると「ただいま」と言って扉を開ける。

扉を開けるとみんなが一斉に僕を睨む。


睨まれた意味が分からない僕が「何?」と聞くとマリオンが「どうしてお姫様抱っこ?」と言って恨めしそうにマリーを見てくるので「まあ、今回はそういう終わり方をする戦い方をしてみました」と言って微笑むとマリオンは呆れてため息をついた。


「やりすぎて殺していないでしょうね?」

「大丈夫だよ。息はしてると思うよ」


僕は鎧を脱がせるのを皆に任せている間に二個目の制御球をペック爺さんに返しながら「両方とも機能停止をしておいてくださいね」と言って治療の準備をしているマリオンから「回復の指輪」を借りる。


急に「回復の指輪」を取られてマリオンが「何すんのよ?」と聞いてくるので「僕が使うんだよ」と言ってそのままマリーに回復の力を使う。

僕が今まで回復の力を使えなかった事をマリオンは知っているので「え?ちょっと…」と驚いて僕を見ている。


擬似アーティファクトに「究極の腕輪」が反応をするか心配だったのだが、問題なく反応をしてくれたので疲れることもなく一気にマリーを回復してしまう。

どの位で治るかはわからないがマリオンと同じ時間より少し長く回復の力を使った僕は「コレで良し」と言って終わらせるとマリオンは「嘘でしょ?」と言って唖然とした顔をしていた。


僕はマリーがまだ寝ているので説明を控えたかったのだけど、もう一度トキタマが居なくなったこと、代わりに「究極の腕輪」を贈って貰った事。今は魂の消費を気にして戦う必要がなくなったことを皆に説明した。


僕の話にカムカは「かぁ~、そういうことまでやれるようになっちゃっていたのかよ」と言って驚いた後で「まあ、呪いが無くなったことは良かったけど、もうやり直せないのは厳しいかもな」と心配してくれる。


僕がカムカに「うん…。そうだね」と返すと今度はペック爺さんが「じゃあ「誓いの指輪」の件はどうなるの?」と聞いてきた。


僕はその必要が今のところ無くなったことを伝えるとマリオンが「ふーん、そうなんだ」と言ってまた不機嫌そうな目を向ける。


マリオンが不機嫌そうな目をする理由がわからなかった僕は「マリオン?」と声をかけるとマリオンは「折角、お姉ちゃん達が意気込んだのにアンタが台無しにしたんだね」と言ってくる。


「…そうかもね」

「かもじゃない」


即座に言い返してくるマリオンの圧に僕は少し困ったが「うん。でも僕は僕の為に大切な人が傷つくのが嫌なんだよ」と言うとマリオンは少しの沈黙の後で「………じゃあそれで良いんじゃない?」と言った。


「もうあの鳥も居ないんだし、やり直せないんだから慎重になりなさいよ」

「そうするよ」


マリオンと話している間にマリーが目を覚ます。

回復の力は効いていたようですぐに立ち上がって僕に挨拶をしてくれた。


挨拶の切れ目にマリオンが「マリー、ソイツつまらなくない?」と声をかけるとマリーは僕とマリオンを見て「え?そう?マリオンはそう思うの?」と聞き返す。


マリオンはため息をついた後で「マリーにわからないならいいや」と言うとペック爺さんの所に行ってしまった。


そんなマリオンを見てカムカは「荒れてんなー」と思ったことを口にしていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



マリーも起きて無事を確認した。

もう城に乗り込むことが出来る。


僕はカムカに後を任せる為に声をかける。

僕が「カムカ、頼みがあるんだ」と言うとカムカは「どうしたよ改まって」と聞いてくれる。


僕はペック爺さんの手にある制御球を指さして「今回は村長に見られること無く制御球を奪ってきたんだ」と言うと制御球がここにある事より、取ってきた事に対して「そんな事までできるのかよ?」と驚きを口にする。


「それで、またマリオン達に何かをしたら困るから、今のうちにちょっと村長のところに行って殺さない範囲で懲らしめてきてくれないかな?その間に僕は王と決着をつけてくるからさ」

カムカは細かい事は何も聞かずに「ああ、そういうことか。いいぜ」と言って了解をしてくれる。



カムカの了解を得た僕は皆の方を見て「じゃあ、後は前回同様でよろしくお願いします」と言って出かけようとするとフィルさんが「え?また1人で行くの?」と言って僕の所に来る。


僕は皆を見た後でフィルさんの顔を見て「うん、万が一皆が怪我をすると嫌だから…」と答える。


「1人で大丈夫なの?」

「うん、今の僕なら問題なく勝てると思うんだ」

僕の返事にフィルさんが心配で顔を曇らせてくれる。


僕はその顔が晴れやかになるように微笑み返すとフィルさんは「もう、いつもそうやって笑って済まそうとするんだから」と言って困った顔をした後で笑ってくれた。


フィルさんの後ろでジチさんが「じゃあ、平等に行けばマリオンの時間だよね。お姉さん達は邪魔しないから、マリオンもキヨロスくんともう少し話しておいでよ」と言ってマリオンに僕と話す時間を用意しようとする。


だがマリオンは即答で「いらない」と言って断る。

マリオンの理にフィルさんが「なんで!?」と言って驚き、ジチさんも「お姉さん達も全員キヨロスくんに一言ずつ言ったんだよ」と説明するが顔は驚いている。


マリオンはジチさんとフィルさんの顔を見た後で僕を見て「もう、コイツは前のコイツじゃないから。好きだけど前ほど好きじゃない」と言った。

マリオンはトキタマガ居たときの僕がお気に入りだったようで、今の僕はそうでもないらしい。


僕に自覚はないがそんなに違うのかな?


マリオンはそのまま「でも、いいや。死なないでね。ちゃんと帰ってきなさいよ」と言って手を振るとジチさんは「この子、どっか壊れてんじゃないかい?」と首をかしげ、フィルさんが「良かった1人減ったから可能性が増えた…」と言って小さく喜んでいる。


僕は手を振るマリオンを見て「人の心は移ろいやすい」といった言葉を思い出していた。

その点ではマリオンが一番人間らしいのだろう。

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