第32話 状況把握、再度1日目へ。

89回目の時間。

カムカが開幕早々に「俺は後何回死ねばいいんでしょうか?」と言っている。

僕はその横でマリオンに何があったかを聞いたが、腕に襲われた後の記憶は無いそうだ。


フィルさんとムラサキさんに王の攻撃を防げたかを聞いてみたが、防げた気はしたが僕が死んで跳ばされたからよくわからないという事だった。


若干の手詰まりを感じる。

仮にフィルさんの防御で僕達が生き残れたとしても次の攻撃に耐えられる保証もなければ、連発されればフィルさんの後ろから出る事も出来ない。


この二回、色々な戦い方をした事で僕達の能力は上がったと思うが、何回戦っても今の王に攻撃が届く気はしなかった。


カムカが僕を見て「どうするよ?」と聞いてくる。

僕が考えているとフィルさんが気を使って「何が問題だか考えてみない?」と言ってくれた。


さっきの右腕を狙った時に感じた問題を僕は考えて「攻撃力不足だ」と言う。


フィルさんは防御専門で槍は持っているが防御に集中してしまうと殆ど使えない。

それに槍はアーティファクトではない。


カムカは筋肉と擬似アーティファクトでカサ増ししているが、アーティファクトはA級だ。


マリオンは亡霊騎士の鎧は確かに強力だが、擬似アーティファクトの塊…。

専門性のようなものが足りない。



だが、1番の問題は僕だ。

僕の剣は一の村を襲った兵士から奪ったアーティファクトにガミガミ爺さんが毒竜の鱗で強化してくれただけの剣。

アーティファクトとしてはB級だ。

「火の指輪」にしても奪ったものでB級だ。



僕は今考えていた話をしながら「僕の攻撃力が一番足りない」と結論を言う。

この結論にカムカが「ならどうするんだよ?」と聞いてくる。


僕自身の考え、「もし、僕1人なら、毒竜や亡霊騎士と戦った時みたいに何回も跳び続けて勝つ為の何かが見つけられるかも知れない…」と言ったところで最後まで言う前にフィルさんから「それはダメ!」と拒否をされる。


フィルさんが心配そうに「キョロくん、今まで何回跳んでいるの?」と聞いてくる。僕の記憶通りなら89回跳んでいるので「………はちじゅうきゅ…」と言いかけた所で「そんなに跳んでる!ダメよ。たとえ跳んだとしても、もっと少ない回数で済むように考えよう」と言われてしまう。


だが最悪は僕が何回も跳んで勝利の筋道を見つけるのが一番だ。

だがその事は口にしない。口にして止められるよりかはギリギリまで今のまま戦おう。


カムカが「そうだぜ、な?」と言ってフィルさんの考えに賛成する形で僕を説得しながら「王都を目指してみるとか、別の可能性を探すとか、S級の武器を授かった奴を探して仲間にするとか…」と言った言葉に僕は一つの可能性を見出した。


僕が「それだ…」と言うとカムカが「んあ?」と言って僕の顔を見る。僕はそのまま「聞いて、フィルさん、カムカ、マリオン」と言う。


「どうしたの?」

「僕は今から1日目まで跳ぶ。<成人の儀>で僕にはトキタマの他にアーティファクトを授かれる可能性があったんだ。もしかしたらその中には武器があるかも知れない」


無いかもしれないが、今確実なのは僕が強くなる事だ。


「別の土地に行ってS級の使い手を見つけるのも悪くないけど、今この段階で一の村の皆は手遅れになっているかも知れない。

ここに来るまでの5日間にS級の使い手を探す余裕は無かったから、今確実なのは<成人の儀>に跳んでもう一度授かる事だと思う」


僕の提案にカムカが「そんな事出来るのかよ?」と聞いてくる。

「わからない。でもやらないよりマシだし、何より、1日目から最短最速で城を目指せば王は兵士のアーティファクトを吸収していないから今よりは弱いはずだから悪い考えではないと思うんだ」


「確かにそうだけど、そんなに跳んで大丈夫なの?」

フィルさんの心配そうな表情に僕は「大丈夫。今こそ跳ぶ時だよ」と言ってニコリと笑ってみせる。


フィルさんが僕の考えを受け入れてくれたところで僕は「でも、一つだけ気になる事もあるんだ。カムカ、お願いを聞いてくれないかな?」と言う。

カムカはガッツポーズで筋肉を見せながら「おう!何でも言ってくれ」と言う。


「僕が1日目に跳ぶと言うことは、亡霊騎士…マリーとマリオンの事も、毒竜…フィルさんの事も解決前に戻ってしまうんだ。僕は今まで通り、三の村、四の村の順番で進む。カムカは僕が<成人の儀>をしている間に少しでも先に進んでおいて欲しい。そして四の村で落ち合いたいんだ」


僕の懸念はまたフィルさんとマリオンに苦労を強いてしまう事。

それを告げるとカムカは「おう!任せておけ」と言ってくれたのでそのまま毒竜の毒は炎で相殺できる事、亡霊騎士のアーティファクト砲も炎で跳ね返せる事を説明した。

そして最後に「亡霊騎士は先に村長から制御球を取り返す方が良いかもしれない。毒竜は角を必ず持ち帰って」と言うとカムカは「わかった」と言ってくれた。


カムカと話し終わった僕はフィルさんを見つめる。

僕うの視線を感じてフィルさんが「キョロくん…」と言って僕を見る。

僕が「ごめんねフィルさん」と言うとフィルさんは首を横に振って「ううん、仕方ない事だわ」と言ってくれた。


「それでもフィルさんにまた苦しい思いをさせてしまうのが嫌なんだ、だけど今はこれしか思いつかなくて…」

肩を落としながら話す僕にフィルさんが「何でも背追い込まないの。キョロくんは頑張ってくれている」と言ってくれるので僕は「ありがとう」と返した。

それでも僕自身納得できずに申し訳ないと思っていると「申し訳ないと思うなら、カムカより先に私を助けに来て」とフィルさんが言う。


凄いことを言われたなと思った僕は「出来るかな?」と聞くと優しく微笑んだフィルさんは「あら?自信ないの?」と聞いてくるので、僕は「僕が<成人の儀>をしている間に、カムカは二の村から始められるからね」と言った。


「私はキョロくんなら出来る気がするわ」

「ありがとう。頑張るよ」

僕が頑張るというとフィルさんはもう一度優しく微笑んでくれた。


僕は次にマリオンを見る。

「マリオン、ごめん」

「仕方ないって、今のままじゃ勝てないんだし、アンタが私を助けたんだからアンタの決めた通りに従うよ。ま、私としてはあの楽しげなアンタをもう一度見たかったけど、それすると危ないみたいだし。私もお姉ちゃんと一緒で、アンタを待っているからさ。早く助けに来てよね」


「うん、わかった」と返事をした僕は「じゃあ跳ぶよ」と声を掛けて跳ぶ。


「トキタマ!」と呼ぶとトキタマは「はーい!」と言って来た。

跳ぶ場所は勿論…あの場所だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



90回目の時間。

[8日目朝]

跳んですぐ、フィルさんは身体に異常がない事に驚きながら周りを見て「え?ここって…」と言い、カムカが「ペック爺さんの家じゃねえか」と言った。


僕が最初に跳んだのは今朝ペック爺さんの家を発つ時。

ガミガミ爺さん、ペック爺さんとマリー、そしてジチさんに事情を話した。


「…悪魔ねぇ…、それでキヨロスくんが1日目に戻ってやり直してくると…」

「うん。その為に持てるだけ持って跳べるだけ跳ぶつもりだから寄ったよ」

僕の言葉に「何するつもりだい?」と言ってジチさんが訝しむ。


「ジチさん、一つ謝りたいんだけどいい?」

「何だい?」


「多分、僕が跳べる中に三の村のおじさんとおばさんは含めないと思うから…また最初からになっちゃうんだ…」

ジチさんは「なんだそんな事かい?」と言って笑い飛ばしてくれた。


「また最初から仲良くなるから大丈夫だよ。それにフィルやドフ爺さんは覚えているんだろ?何の問題にもならないよ。それよりお姉さんはキヨロスくんが心配だよ。何でもかんでも背負って跳ぶなんて無理しなくて良いんだよ?」

ジチさんが優しく心配するように聞いてくれるので僕は「やれるだけやりたいから」と返す。


「そう言うと思ったよ。で、ここにはそれだけの為に来たのかい?」

僕はここには、マリオンのブローチと制御球を貰いに来た事を告げる。


ペック爺さんが制御球を出してくれて僕はマリオンのブローチを預かりながら「マリオン、これで君とはまた会える」と言うとマリオンは「そうだね。よろしく頼むよ」と言った。


「みんな、僕は跳ぶよ。そしてまたこの皆で会えるように頑張る」

僕の言葉に皆なも口々に頑張ると言ってくれた。

こうして準備が出来た僕はトキタマを呼んで時を跳ぶ。



91回目の時間。

[5日目昼過ぎ]

三の村の広場に出た僕達、フィルさんが周りを見て三の村と気付くと僕を見て「ここは…」と言っているので、僕が「皆でお昼ご飯を食べた後だよ」と言うとフィルさんが不思議そうに「なんで?」と聞いてくる。


僕はフィルさんの質問に答える前に「ガミガミ爺さん、毒竜の角を僕に」と言って、まだお風呂に使っていない毒竜の角をガミガミ爺さんから貰うと僕はそれを折った。


ガミガミ爺さんは僕が折った角を見て「小僧…何を?」と聞いてくる。

僕はガミガミ爺さんの疑問には答えずに折った角の半分をフィルさんに渡す。


訝しげに角を受け取ってくれたフィルさんに「僕の力でどこまで出来るかわからないけど、僕はフィルさんに渡した角も一緒に跳べるように頑張る。跳んだら身体が辛いはずだから、もし手元にあればすぐに飲んで」と説明をする。

一秒でも早く毒竜の毒からフィルさんを助けたかった僕が考えた苦肉の策。

角と僕を見たフィルさんは「キョロくん…」と僕の名前を呼んでが泣いてしまう。


「もしダメならゴメンね。僕がこの残りを持って行くまで待っていて」

「だから、何でも背追い込まないでいいのに」

そう言ってフィルさんが泣きじゃくる。


泣いているフィルさんを泣き止ませるのは難しいので僕は「ガミガミ爺さん、ゴメンね。後の事お願いするね」とガミガミ爺さんに後の事をお願いするとガミガミ爺さんは「おう。小僧…無理すんな。誰もお前を憎んだりしねえからよ」と言ってくれる。

ガミガミ爺さんの優しさにはこういう時は本当に救われる。


僕は頷いて「ありがとう。フィルさんが泣き止んだら僕跳ぶよ」と言った。

その時フィルさんが「キョロくん…」と僕を呼ぶ。

「何?」と振り返った僕の前にフィルさんの顔があった。

美人は間近で見てもやはり美人だ…と思った時に僕の口にフィルさんの唇が当たっていた。

数秒だと思う。フィルさんの唇が僕から離れると目の前には真っ赤な顔のフィルさん。


そのフィルさんは真っ赤な顔で目には涙をためて「キョロくん大好きよ。私はそうやって頑張る優しいキョロくんが好き。私はキョロくんが来てくれるの待っているから」と言ってくれた。


僕はどんな顔をしていただろう。

フィルさんがまさか僕にそんな事を思うなんて……ガミガミ爺さんの視線が怖い。

僕が色々考えているとジチさんが「あららー、いいのかなー。これから一の村に跳ぶのにそんな緩んだ顔をして」と言って嬉しそうに僕を見る。


「フィルはキヨロスくんとのキスで頑張るぞって感じだけど、キヨロスくんはその顔で一の村に帰るのかー、しかも<成人の儀>ってその子も居るんじゃないかしら?」


…冷たい汗が背中を流れる。

僕が固まってしまうとガミガミ爺さんが「おう、姉ちゃん。そんなに冷やかすもんじゃねえ?フィルだって一の村に小僧のいい子が居たって構わないって思ったからしただけで、小僧だって別に誰と仲良くなるなんて決まって居る訳でもねえ」と言ってくれる。


「そうだねぇ。それもそうだね。じゃあ、キヨロスくんがお姉さんといい仲になっても問題はないわけだ」

そう言いながらジチさんが僕の頭に腕を回して僕の顔を覗き込む。


「前にも言ったけど、お姉さんはキヨロスくんがどうしてもって3回くらい頼み込んできたらOKしちゃうかもよ」

大人の色気という奴だろうか?僕は更に身動きが取れなくなって固まっているとフィルさんが「ちょっとジチ、やめなさいよ」と言って止めに入ってくれる。


そのタイミングで僕は話をそらすためにも「それよりジチさんは今までどうしていたんですか?」と聞く。


「んー、おじさんとおかみさんに挨拶をね。また初めましてからになるけど迎え入れてねって言ってきたんだよ」

ジチさんは悲しい気持ちを出さないように努めている様子だ。

僕が謝ろうとして「ジチさん、ごめ…」と言うと最後まで言う前にジチさんは「フィル!キス!!!」と言い、フィルさんは「え?ええ?」と驚く。


ジチさんが突然フィルさんにキスをしろと言い出した。

「キヨロスくんが変な事を言ったら、フィルにキスさせるからね!あ、それともー、お姉さんの方が嬉しいかな?」

ジチさんがニヤリと笑う。

…このままここに居たら良からぬことが起きそうだ。


僕は早々に跳ぶ事にする。

ガミガミ爺さんにもう一度「じゃあ、また」と声をかけるとガミガミ爺さんは「おう、また昨日な」と返してくれた。


「変な言い方ですね」

「だな、普通じゃないな」

そう言って僕たちは笑う。

年の差なんて関係ない。

僕にはこんなにも沢山の仲間や友達が出来た。

それを失わない為にも僕は跳ぶ。


「フィルさん、ジチさん。僕跳ぶよ」

そう言うとキスの話でじゃれ合っている2人はこちらを向く。

「待ってるね」とほほ笑むフィルさんと「追いかけるね」と笑うジチさん。


僕は2人の笑顔を見ながらトキタマを呼んで時を跳んだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



92回目の時間。

[1日目]

目の前で神の使いが僕に「キヨロス、何回目ですか?」と尋ねる。

そう、僕はこの時間に跳んできた。

トキタマはタマゴのままだが、中にちゃんと居るのが僕にはわかる。

僕が「92回目です」と答えると、神の使いが悲し気な表情で僕を見る。


「そんなに跳んだのですか」

「はい、どれも仕方のない事です」

まあ、覗きとかはどうでもいい気もするけど…。


「それで、なぜ貴方はここに?」

「もう一度<成人の儀>をさせてください」

<成人の儀>をしたいと言う僕に神の使いは「それは出来ません」と言う。


「何故ですか?」

「普通の人間にアーティファクトの複数持ちが出来ないからです」


「でも、僕は今三つのアーティファクトと一つの擬似アーティファクトを持っています」

そう言って僕は剣と指輪と鎧を見せる。


神の使いは僕の装備を見て「何があったのか教えてくれますね」と言うと背後から「私にも聞かせて」と言われる。


振り返るとそこにはリーンが居た。

僕は久しぶりのリーンを見て懐かしい気持ちで「リーン…」と言うとリーンは「ちゃんと跳ばしてくれたね。キョロ、ありがとう」と言って微笑んでくれた。

神の使いはリーンもある程度知っているのであればこのまま話しましょうと言った。



僕は約8日間の出来事を話した。

最初の3日はリーンも知っていたが、残りの5日間はリーンも知らない事だったので僕の横で驚いていた。勿論、リーンの知らない不死の呪いの事は避けて話をした。


リーンは僕の話を聞きながら「あの時、何回も跳んだのはそういう事だったのね」「そんなに跳んで大丈夫なの?」と言っては表情をコロコロと変えながら驚いている。


トキタマの事、使用に魂が必要な事はトキタマに聞かれていても問題は無いと判断して説明をすると神の使いは「「時のタマゴ」の事は「紫水晶の盾」から聞いたのですね」と確認をしてきた。

僕が「はい」と答えると神の使いは「それは概ね正解です。私も神の使いとしての権限ギリギリの部分まで話す必要がありますね」と言って話し始めた。


トキタマとムラサキさん、S級のアーティファクトには<解脱>と呼ばれる最終形態を目指すように神によって作られていて、無意識にそこへ目指すようにトキタマなら「跳ぶ」事を求めてくると言う。ムラサキさんに関しては僕のアーティファクトではないので教えて貰えなかった。

ちなみに解脱後の話は権限外と言う事で話してくれなかった。


王の持つ「龍の顎」は神の使いが授けたアーティファクトではない。

他のガーデンで「龍の顎」を見つけた何者かが王に献上をしてしまったのだろうと言う事だ。

ちなみに元々の王には「晴れの玉」と言うA級のアーティファクトが授けられていて、能力は天気を晴れにすると言うものらしい。


「龍の顎」はムラサキさんが言った通り、世の中に混乱を起こす外法のアーティファクトとして中々顕現しないもので、出てしまった時には神の使い「知らせる者」が対応をする事になっていると言う。


知らせる者…神の使いは6人居てそれぞれが「記す者」「見守る者」「知らせる者」「授ける者」「道を示す者」「与える者」と呼ばれている。

目の前の神の使いは「授ける者」で主にサウスで15歳になった子供にアーティファクトを授ける事が仕事だと言う。


「本来なら、「龍の顎」が現れた時に「見守る者」が「知らせる者」に通達し、「知らせる者」が神に通達を出すのです。だが今それが機能していない。何かあったのかも知れません」

この説明にリーンが「それじゃあ、神様は助けてくださらないのですか?」と言って泣きそうな顔をしている。


「なので私が権限ギリギリの範囲までキヨロスに協力をします」

神がダメでも神の使いがどうにかなるのであればまだ心強い。


僕が「では<成人の儀>をお願いします」と言うと神の使いは「それはわかりました。その前に王の話をもう少ししましょう」と言うので僕は「王の生い立ちとかはいりません。変に重い過去で同情心が芽生えると困るので…」と断る。


神の使いは納得をした顔で「そうですね」と言った後で「では戦った時の話を先にしましょう。結論ですが、王はダメージを受けています」と言って話し始めた。


「ただ、取り込んだ兵士のアーティファクトを使って即時回復を行っているのです。キヨロスが言う、足を切り落としても次の瞬間にまた足が生えていると言う事は普通では考えられません。

悪魔の姿の時もアーティファクトの攻撃が通用したと言う事は、身体が人間から魔物に変化をしたことで基本的な防御力が上がったのでしょうが、攻撃自体は通用するのです」


「なら、さっきの時間でも戦い続けていれば…」

「はい、倒せたと思います。ただ、何人分取り込んだのかは知りませんが、話に聞いた攻撃力であればおそらく2~3日くらいは攻撃を続けないと倒せないと思います」


3日は現実的ではない。


「なので、キヨロス。あなたの考え、<成人の儀>で再度新しいアーティファクトを手に入れるのは、理論上は間違っていないと思います。ただ、「時のタマゴ」と同時に装備が出来ればの話ですが」

僕は神の使いを見て「それは大丈夫だと思っています」と言うと神の使いも追求せずに「そうですか」と言ってくれた。


話が纏まった気がしたので僕は「一つ、聞いてもいいですか?」と聞くと神の使いは「何でしょう?」と聞き返してきた。


「僕に「今何回目?」と聞いたのは何故ですか?」

「私は、何年も先にキヨロスが「時のタマゴ」との離れ方を知りたくて私の元に跳んできたのだと思ったのです」


「確かに少し前はそれも知りたかったですね。あるんですか?」

「…解脱させるしか方法はありません」


何となくそんな気はしていた。

僕は無言になると神の使いはそれを察してくれた。


「さあ、それでは<成人の儀>を再度執り行いましょう」

「はい」


僕が一歩前に出るとリーンが「キョロ、気を付けてね」と言って僕に心配そうな目を向ける。

僕は安心させたくて微笑んで「ありがとう。行ってくるよ」と言って神の使いを見る。


神の使いは箱庭を構えて「キヨロス、今回も後戻りをしてはいけませんよ」と言った。

僕は「わかりました」というと光に吸い込まれて行った…。

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