第8話 これからの話。

しばらくするとナックが息を切らせながら戻ってきて「ダメだ!村長に見つかった!!」と言うと、リーンがガッカリとして「えー?」と言っている。



「全部はダメだったけど、2個だけなら持ってこれたんだぜ?」

「なんだ、そうなら言ってよ!さすがナックね」


ナックが持ってこれたのは指輪と弓だった。

「これがアーティファクト?」

「大変だったんだぜ!兵士の荷物とか全部ひとまとめに倉庫の中だったから一つ一つ確かめたんだ!」


「え?…ナック…それって?」

「おう!全部1つずつ使って見た!さっきの静電気より痛くて声が出ちゃってさ、それで村長にバレちゃったよ」


「嘘…」

「本当だよ、すげえ痛くてさ。まだ手がジンジンしてるよ!」


何という気合い、何というガッツ…

確かめる方法は一つしかないとはいえ、痛いのがわかっていてやるのは勇気がいる。

それを平気でこなしてきて笑っている…


これだからナックは凄い。


「じゃあ、一個目使ってみるよ」

「おう、よろしく頼むぜ!」

赤い宝石の付いた指輪を握りしめた。

指にはめるのが正解かも知れないが、万一注意点が「死ぬまで指から離れなくなる」とかだと困るので握ることにした。

それに静電気が起きた時に装着しているのは怖い。

僕はナックではない。


「【アーティファクト】!」


僕の目の前に握りこぶしくらいの火の玉が出てきた。

「お!出来た!!」

「凄い!!」


「これは、やはり火の指輪か…」

赤い宝石だったので火だと思っていたがその通りだった。

昨日の火のアーティファクト使いが持っていた指輪、僕が使えると言う事はどうやら未成長だったようだ。


取れなくなると言う事もなく普通に僕の手を離れた。

恐らくB級だと思うけど、能力と注意点がわからないのは怖いな。

そう言えば、僕は何も気にせずに剣のアーティファクトを使っている。

注意点は何だったんだろう?もう使ってしまっているし成長もさせてしまった。

今のところ僕の身体に違和感はない。本当何だったんだろう?

神の使いに会いたいな。


続いて弓を手に取る。

「キョロ、気を付けてくれよ。そいつは指輪の時より痛かったからさ!!」

ナックが今更怖いことを言い出した。

しかし、ここで辞めたらせっかく持ってきてくれたナックに申し訳が立たなくなる。


僕は弓を構えてみる。

そう言えば矢筒がない。

倒した兵士も矢を持っている兵士と持っていない兵士が居た。

…見分け方はそこだったのか。


これで矢がないと発動できないアーティファクトだったら諦めよう。

万一矢が出て怪我でもさせたら危ないので2人の居ない方向に弓を向ける。

「【アーティファクト】!」


バチッ!!!

さっきの比ではない光り方をして物凄い衝撃が僕の手を襲う。


「うわっ!!?」


「大丈夫?」

「平気か?」


2人が駆け寄ってきてくれた。


「うん、これは成長済みのアーティファクトだったみたいだ。僕には扱えない」


「そうなると今使えるのは指輪ね…」

「もしかしたら倉庫の他のアーティファクトなら未成長のものもあるかもしれないけど、行くのはマズいよな」


「うん、ありがとう。僕自身使い道はわからないけど用心の為に持っておくことにするよ」


空を見ると陽が傾き始めていた。

「2人とも今日はありがとう。もう、今日は帰ろう」

僕は帰路についた。


弓のアーティファクトは明日こっそり返しておこうという話になった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



夕方、ナックのお父さんが帰ってきた事を村長の所に行っていた父さんが教えてくれた。


やはり二の村は焼かれていたそうで、そうなると次はまたこの村に兵士がアーティファクトを奪いに来るだろう。夕飯の後で男性陣は村長の所に行って今後の話をするらしい。

僕も行こうかと父さんに聞いたが父さんは「子供たちにばかり任せられない」と言ってくれた。


夜遅くに父さんが帰宅した。

話し合いはあまり進展が無かったようで困った顔をしていた。

母さんが「私たちの事をあまり考えすぎないでください。ちゃんとどんな決断でも従いますから」と父さんに言っていたのが印象的だった。



[3日目]

翌朝、朝早くに村長が家まできた。

僕はてっきり弓と指輪のアーティファクトの事がバレて怒られるのだと思い、怒られる前に指輪と弓のアーティファクトを出して謝った。

持ち出した経緯を話すと指輪は僕に預けてくれて弓だけは村長が持って帰る事になった。


村長の話はその事ではなかったらしく、改めて村長が「キヨロスと話がしたい」と言った。

父さんと母さんが村長に同席を求めると村長は無論親なのだからと許可をしてくれた。


テーブルに村長と父さん。その向かいに僕と母さんが座っている。

トキタマは僕の肩に止まっている。


村長が神妙な顔つきで「キヨロス、話と言うのはな…」と言ったところで僕は「兵士の事ですよね?」と聞く。

驚いた村長が「わかるのか?またアーティファクトの力を使ったのか?」と聞いてくるが僕は時を跳んでいないので「いえ、昨日少しだけ父さんから話を聞きました。二の村が焼け落とされていたそうですね」と言った。


村長はくらい表情で「そうなのだ、昨日の夜男性陣で話し合ったのだがあまりいい話にはならなかった…」と話し始めたので「どんな話ですか?父さんも教えてくれなかったんです」と言って話し合いの内容を聞くことにした。


「そうか、多分逃げたというフードの男はまた兵士を引き連れて村に来るだろう。今度は無事に済む保証はない。それで話し合ったのだ。まず一つ目は[村を放棄して家庭単位で逃げて新しい土地を探す]まだ無事な三の村や四の村、王都なんかに行ってもいいだろう。フードの男は我々1人ひとりの顔までは知らないのだから何とか逃げられると思っている」

これは正直普通の考えだろう。フードの男が全員の顔を見ているとは思えないからだ。


「はい、顔が知られているのは主に僕ですね。北側の兵士を倒すときにフードの男に見られている可能性がある。後はもしかしたらナックが見られている恐れがありますね」


ここで村長が申し訳無さそうに「そうなった場合、キヨロスが居ては折角逃げた我々の正体がバレる可能性が高い。キヨロスには八の村か皆の行かない場所に行ってもらう事になる。ナックはキヨロスと一緒に居なければバレないのではないかと言う話になった」と言う。


それは間違っていない。

僕が居ればみんなに危険が及ぶ。


だがこの話に納得できないのは母さんで「そんな!!」と言って村長に詰め寄ると「この子は村を救ったんです。それなのに、それなのに…あんまりです」と声を荒げた。

横に居た父さんが辛そうに「母さん、村長が言ったことではない。男性陣の中でそういう声が少し出ているだけだ。みんなが可能性を考えた中で出てきたことなんだ」と言って母さんをなだめている。


昨日、その発言を目の当たりにした父さんは辛かったと思う。

母さんのように声を荒げたかもしれない。

僕はこの話題を終わらせるためにも「二つ目は?」と聞く。


村長もいたたまれない気持ちだったのだろう。早々に話を切り上げると「うむ、二つ目[村を放棄して全員で国境付近の山に移り住んで一から生活をやり直す]これならキヨロスだけを追い出すこともなく全員で避難をすることができる。ただ、国境の辺りは15年間王のアーティファクトが結界のように国全体を覆っている。いつ流れ弾が飛んでくるかわからない。後は土地が良くないから農作物があまり採れない事や、人里離れた場所なので魔物が出るという問題もある」と言って二つ目を説明してくれた。


ただ僕は正直この案は受け入れられないと思った。理由は色々あるのでそれを説明してしまう。

「山の暮らしは難しいですね。それに農作物があまり採れない土地ではナックのアーティファクトが力を発揮できません」


この言葉に母さんが必死になって「私たちならいいのよ、キヨロスと一緒に居られるのだから魔物も食べ物が豊かではないのも我慢できるわ」と言ってくれている。


村長は「そして三つ目だ…。[このまま村総出で兵士をと戦う]仮に前と同じ規模の兵士が来ても何とか戦えるのではないか?そう言う者も現れてはいる。だがそれはキヨロス、お前のアーティファクトの力があっての話なのだがな」と言って僕と「兵士の剣」とトキタマを見た。それを聞いた僕は、頷くと「それも想像していました」と伝える。


このやり取りで「そんな…」と言った母さんは遂に泣き出してしまった。

その横に居た父さんが「キヨロス、お前はどう思う?」と僕に聞いてくる。


「この村を一度救ったのはお前だ、私はお前には決める権利があると思う。別にお前の責任云々にしたい訳ではない、決断をお前に押し付ける訳でもない。だが、私は村を救ったお前が決めればいいと思っている」

はっきりと言った父さんの言葉に村長は黙っている。


僕が答えないで居ると母さんは泣きながら「いいのよ、無理しなくていいの。怖い思いをして戦うなんてしないでもいいの。ずっと一緒に居ましょう?あなたは私の子なんですもの、親子はずっと一緒に居ていいのよ。母さんはどんな土地でもお父さんとあなたがいてくれたから大丈夫だから。ね?」と言った後で僕を見て微笑んでくれている。


確かにこのまま父さんと母さんと3人で生きていくのもいいと思う。

村の全員で逃げ延びて山でひっそりと暮らすのもいいと思う。

全員バラバラになって新しい人生を歩むのもいいと思う。


だが、僕は呪われている。

フードの男の言う通りならば僕は死ねないらしい。

逃げ延びた所で家族を村の人たちを看取って僕は1人ぼっちになる。


それならば別の道を探したい。


せめて家族には幸せになってもらいたい。

村の人たちも兵士に怯えるような暮らしはしてほしくない。


僕が考えていると「僕はお父さんの考えが正しいと思いますよー」と言ってトキタマが口をはさんできた。


村長はトキタマに「トキタマ様、それは一体?」と聞く。村長ってトキタマに様を付けているのか…。

トキタマは「お父さんは一度、兵士たちと戦ってみてダメだったら戻ってきて逃げる指示を出す事を考えているんですー」と説明をする。トキタマは心が読めるのか?僕の考えをまた察している。


村長はありがたいという感じで「おお…戦ってくれるのか?キヨロス」と聞く。僕は「うん、それで勝てれば父さんも母さんもみんなも今の暮らしを捨てないで生きていけるよね?」とみんなを見ながら言う。


父さんが涙を浮かべて「キヨロス…」と僕の名を読んで僕を見ている。

僕は父さん達を安心させたくて「また全員が無事に生き残れるように頑張ってみるよ」と言って微笑むと母さんが「あなたって子は…」と言って抱き着いてきた。


話がまとまった所で村長が「わかった。皆には説明をしておく。何か準備や気になることがあれば言ってくれ」と言う。

僕は「多分、王都までは早くて三日半かかります。今日中にはフードの男は城に到着して準備が済み次第攻め込んでくるでしょう。準備を含めて往復で8日からかかると思います。その間に村の守りを固めて食料などの用意をしましょう」と意見をした。


村長は「そうだな。それでは今日から準備に取り掛かろう」と言うと足早に帰って行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



母さんを落ち着かせている父さんがこちらを見た。

父さんは広場の方を見て「キヨロス、私も村の守りを固める準備をしたい。ここは任せていいか?家の準備を母さんと始めてくれ」と言う。


僕が「わかったよ父さん」と言うと父さんは「では行ってくる」とパンを3個持って父さんは出かけた。


母さんはまだ泣いている。

僕が戦うと言ってからずっと何かを思い出して泣いている。

でも用意をしないといけないから僕は「母さん、少し落ち着いた?」と聞くことにする。

母さんは鼻をすすりながら「ええ、でも本当にあなたがまた戦うの?怖くないの?みんなの為に無理なんてすることないのよ?村の人は誰もあなたを悪く言わないわよ」と聞いてくる。

この感じはまだ落ち着いてないことがわかる。


僕は母さんを安心させたくて「怖いけどやらなきゃ。僕はこのアーティファクトで村の皆を幸せにしたいんだ」と言う。


そう僕がみんなを守るんだ。


そして「母さん、朝ご飯を食べたら準備をしよう」と言うと母さんは「ええ、そうね。わかったわ」と言ってご飯の支度をしてくれた。



食後、しばらくするとリーンとナックが来た。

事情はお父さんたち経由で聞いたそうだ。


ナックが厳しい表情で「戦うって聞いたぞ」と言う。僕が「うん」と答えると横のリーンが「キョロ、あなたそれを見越していたの?」と昨日の話を出してくる。

僕は頷いて「フードの男を逃がした時から嫌な予感はしていたんだよね」と説明をする。


ナックが呆れるような驚くような感じで「それでアーティファクトを試したのかよ…」と言った。リーンと話したかった事もあるから「それもあるけど、それだけじゃないんだけどね」と言うとナックは何も言えなくなる。



僕は「出来るだけ戦うからさ。大丈夫とか安心しては言えないけど、僕頑張るからさ」と伝えて納得させようとするとナックは「俺も戦うぜ!」と言ってリーンも「私も!その為に練習したんだから」と言う。


正直ナックは何回も戦えないしリーンも今は平気でも何回も跳ぶ事についてこられる訳ではない。僕は「2人ともありがとう。もしもの時があるから万一に備えて逃げ出す準備もしておいてね」と言って微笑むとナックが呆れながら「お前がそんなに弱気でどうするんだよ」と言ってリーンは「この前みたいにうまく行くわよ!」と言った。

「そうだね。頑張るよ」と言う僕の言葉に納得すると2人は帰って行った。



僕は帰って行く2人を見ながら「もしもの時はまた2人に頼る事になると思う。そのための準備はしてきたつもりだ。後はフードの男が現れてからだ」と呟く。



2人と入れ替えで父さんが帰ってきた。

今日の準備は切り上げて、ご飯にしてもらおう。


父さんと母さんはあまり村の話をしなくなった。

あくまで僕の日常が壊れないように気を使ってくれているみたいで申し訳ない。



4日目・夜明け前

トキタマが「お父さん!起きてください!起きてください!!」とうるさく僕を起こす。


僕は寝ぼけながら「どうしたのトキタマ?」と聞くとトキタマは「敵です。敵が来ましたよ!!」と言った。


寝ぼけた頭に一気に血が巡る。

何で敵襲が起きる?フードの男は立ち去ったばかりで城に着いたとしても戻ってくるのは不可能だ。


僕はその気持ちをぶつけるようにトキタマに「どうして!!?まだ4日目だ、後4日あるんじゃないのか?」と聞くとトキタマは困ったように「僕にはわかりません。でも沢山のアーティファクトが村の周りに集まっています」と言う。


…集まっている?


この部分が気になった僕は「トキタマ、非常事態だから簡単に聞くけど、どこにどれだけ居るとかわかるのかい?」と質問をする。これが使えるのならかなり有効だ。


トキタマは「はい、村のアーティファクトの数は把握しているのでそれ以外のアーティファクトの数を数えました!」と胸を張ってえっへんとやっている。


非常にありがたい力だがもしかすると最初の敵襲の時にもわかったのかも知れない。

僕はちょっと肩を落としながら「はぁ…聞けばよかった。どこら辺の場所までわかるんだい?」と聞くと「大体村はずれくらいまでです」と教えて貰う。


僕はトキタマにわかったと言い、急いで父さんと母さんを起こす。

父さんと母さんも突然の事に驚いている。

急いで身支度を済ませて貰い、父さんと母さんには順番に村人を起こしてもらって避難誘導をしてもらう事にする。

僕はトキタマに一番近いアーティファクトの反応を聞く。


「家の裏に2つ、そこから少し離れた所にもう1つありますー」

「後は総数だ、全部でいくつある」


トキタマは村中を見回しながら「1…2…3…26ですー」と言った。

この前より10も多い…。無傷で勝てるのか?


僕は「兵士の剣」を持ちながら部屋を出ようとして忘れ物に気付くと「おっと忘れものだ」と自分に話しかけるように言う。

僕は部屋のテーブルに火の指輪を置いておいた。

屁理屈かもしれないが「2個目のアーティファクトを持って跳べない」のなら跳ぶ前と後は手から離しておくことにした。


火の指輪はひもを通して首にかけている。

これで準備は出来た。

僕は家の裏手に回ってみる。


まだ夜明け前なので暗くてよくわからない。

トキタマに距離を聞くと「ちょっと先、茂みの中に隠れているです」と言う。


よし、ここは僕が生まれ育った村だ、暗くても何とかなる。

即座に3人を倒して次に行く。少しでも数を減らすんだ!!


僕は「兵士の剣」に意識を向けて「【アーティファクト】!」と唱えて茂みに向かって斬りかかる。この攻撃は不意打ちだったので1人の兵士は斬り殺せた。


この流れで行けば勝てると思った僕は「次だ!」と言って2人目に斬りかかる。

だが2人目の兵士は「【アーティファクト】」と唱えて僕の剣を防いだ。


物凄く重い衝撃に思わず吹き飛ばされそうになる。


相手の武器も剣。

正直、僕の剣は我流。

兵士はきちんと訓練を受けているので正面から向き合うのは少し自信がない。

前回は15回もやり直した事で相手の動きを覚えてしまっていた恩恵も大きい。

今回は初見の相手で動きが想像もつかない。


僕は思わず「これは何回跳ぶ事になるんだろうな…」と呟いてしまうと近くを飛んでいるトキタマが「何回でも跳んでくださいね」と明るく言い放った。



3回跳んでようやく兵士2人を満足のいく形で殺せた。

前回の兵士とは明らかに動きが違っていて、僕はとにかく翻弄され続けた。


1回目と2回目は、戦いの音と時間が経った事で村のみんなが異変に気付きザワついた事で兵士達の一斉攻撃が始まってしまった。


今回も火のアーティファクト使いが居て、家屋に向かって次々に火を放ってきたことで村が焼けて手詰まりになってしまい僕は2人を倒した所で跳ぶ事にした。


あのまま居ても火にまかれてしまって戦闘どころではなかった。

出来る事なら全員の装備を見たかったのだがそんな余裕は何処にもなかった。


今回はほとんど音を出さずに倒すことができた。

特筆すべきは火の指輪がかなり役に立ち、相手の顔に火の玉を発生させて苦しんでいるうちに喉か心臓を突く戦法にした。


2人を倒して息を整えた僕は「トキタマ、次の1人の位置!」と聞くとトキタマは「左斜め前、木の裏です」と位置を教えてくる。

かなり細かい情報は有益だ。

僕は相手に悟らせる事なく、一気に距離を詰めて倒す。



僕は気づかれないように歩く、奇襲をかけるためだ。

近くに行けば木の裏に気配があることがわかる。


木の左側に火の玉を放って右に飛び出してきたところを斬りつけることにした。

後一歩で剣が届く範囲まできた。

息を整える。


不思議なことに息を整えると急に虫の音が気になってきた。


何だろうこのプレッシャーは…

なんでもいい、時間が惜しい。

意を決して、攻撃をしようとした時。


木の裏から「よくやるものだ」と声がした。

この声には聞き覚えがある。この声はフードの男!?


こんな序盤から遭遇することになるとは思っていなかった僕は攻撃のタイミングを失ってしまった。

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