Ⅲ[滅闘]

猫拍子壱兵衛指揮伍長は最近寝不足に悩まされている。

原因は明確である。

伍長であるしいくつかの部隊で伍長をと勤めれば特例で個室をも与えられる。

少しばかりの約得が寝台の広さでもあった。二人くらいは肩を並べて

休めると言うのは何時何時に命消し去る事ある兵士に取って愛しい人と肌の暖かさを確かめ合うのは幸せだろう。

もっとも壱兵衛は其の機会は最近まで恵まれなかった。

運が巡って来たと思えばそれも又不運とも言える。


すぅすぅと胸を膨らませて隣で寝息を立てるの戦機人兵ASH弐ⅱ。

豊かな胸と大きな尻を持つ女性型の戦機人兵である。

もっとも戦機人兵は眠りを必要とはしない。

誰かの寝所に偲ぶのは当人いわく女子力を上げる為の其の一点のみだとも言う。

更に言ってしまえば女子力向上に貢献させられているのは壱兵衛だけでは

ないらしい。

兵務帰りに兵舎に帰るとそこに弐ⅱがいるのは三日に一度。

自分の所で下手物料理に腕を振るうのは一日だけで後の日は別の漢か女の所に

脚を運んで居るらしい。


それでも相手が人種人類でなくても思ってくれる人が居るのは喜ぶべきで有る。

ASH弐ⅱでなければ。

[お帰りなさい。壱兵衛伍長。食事にするか?シャワーにするか?勿論一緒にだぞ。

それとも私・・・と言うのは嘘だ。まだお試し期間だからな。練習中なのだ。]

簡易キッチンのコンロの前で鍋に具材をぶち込みお玉を振り回しながら弐ⅱが

微笑む。

「その格好は・・・?」目を丸くするのも当然だろう

[うむ。新婚妻の最終兵器。裸エプロンだぞ。好きか?黄色の花柄だぞ。

好きだろ?この変態伍長め

ちなみに今日は瑞典國特産のシュールストレミングをたっぷり使った甘口カレーだ。

楽しみだろ?なにせ苦労して取り寄せたんだ。輸送部隊の輩が噂程じゃあないと

思ったらしくてな。

冗談混じり一缶開けて観たそうだ。

もっともその後余りの匂いに機内の全員が気をしない輸送機は墜落したんだ。

わざわざ回収してきたんだ。私が・・・手間を掛けたんだから

食べてもらわないとな」

壱兵衛は沈黙する。完全に・・・。

弐ⅱがグツグツの煮込む鍋の中には悪名高くも悪臭漂うはずの

シュールストレミングが甘口カレーとしてぐつぐつ煮える。

確かあれは余りの臭さのために食するのも命の危険と言われる食材であったはず。

民間では航空機での輸送は禁止されているはずだ。

それと知って輸送隊に運ばせるとはどういう神経しているのだろう。

墜落した輸送機の隊員の救助にもあったたのだろうが其の原因が弐ⅱが作ったと

成れば話は別だ。

しかもそれを甘口カレーに仕上げると言うのはこれ又どういう神経なのか

最後にそれを自分が食し胃に収める事に成るとは思わなかった。


管制官といえともシステムが動いてなかれば手持ち無沙汰と成る。

目の間の監視パネルの画面に映るのは平常時の数値が連々と流れ点滅するだけだ。

余りの暇すぎて頭の中で妻と戯言を描きながら脇のテーブルのドリンクカップに

手を伸ばす。


[・・・自主覚醒強制ハッキング開始・・・]

[・・・システム掌握・・・]

[・・・第一拘束具強制弛緩開始・・・]


「えっ。何だ・・・?熱っ」

戦略殺生兵器天司型機人アプ・ヨルウェルスの監視管制官は慌てカップを遅し指に

熱傷を覚える。

全てのシステムを掌握してる戦略思考AIの動向を監視する画面が真っ赤に染まる。

「何やってんだ。警告だせ。早く。警告を」

一瞬前まで自分と同じ様に適当にサボり携帯で美少女サイトを覗き込んでいた

同僚が怒声を上げる。

それほどの事態か?と疑いなからも警告発令の紅いボタンに拳を叩きつけた。


Woooooooooooooooooooooo

基地全体に煩くも猛る警告が轟く。


[・・・燃料強制注入圧力・・・50%・・・60%・・・70%・・・85・・・]

[・・・第一拘束具強制着脱・・・これより第弐拘束具強制着脱開始・・・]

[・・・戦略殺生兵器天司型機人。自由意志覚醒まで3秒・・・]


「待て待て待てっ。自力で拘束具外すって・・・どういう事だ。」

「口じゃない。手を動かせ。粛清コマンドをぶち込め」

隣の漢に言われて初めて其のコマンドの存在に気づく。

もどかしくしか動かない自分の指に怒りを感じるも粛清コマンドを打ち込む。


[・・・自爆強制粛清コマンド無効化完了・・・尚、これより管制官の

手動操作介入を拒否します・・・」


「え?」っと声を上げた一瞬に操作パネルに電磁サージが走り機器が弾ける。

「なにが起こってるだ?」

「お前。馬鹿だろ。絶対馬鹿だ。嫁の尻ばかり追いかけて居るからだ。

気づけ早く。・・・天司体が自我を持ったんだ・・・覚醒するぞっ!!!」

自分が技術者に向いてないとこの時初めて気づく。

常々不足の事態への認識力と対処する此処が心構えが足りないと思い知らさえる。


[・・・第弐拘束具強制着脱完了・・・]

[・・・燃料注入補充率250%・・・]

[・・・射出口強制開放・・・]

[・・・白鋼両翼展開完了・・・]

[・・・射出装置起動・・・]


[・・・戦略殺生兵器天司型機人アプ・ヨルウェルス・・・発進]



天高く白鋼の両翼を広げ蒼空を切り裂き白雲の尾を引き

天司型機人アプ・ヨルウェルスが舞い上がる


【天司型機人アプ・ヨルウェルス・我願い其故に我と成す・・・

我。此処に具現せり・・・】



[守り切れなかった・・・]


その日の午後。本来の駐屯地はな別の偵察基地に戦闘から

帰投したASH弐ⅱが泣き崩れる。

[五五ⅵ・・・仲間も護り切れなかった・・・]

偵察基地の仲間の前で胸に崩れ溶けた五五ⅵの遺骸を抱き抱え弐ⅱが泣く。

有りていに言えばASH達戦闘機人兵は涙と言う物を流さない。

それでも白灰色の物言わぬ仮面の瞳が涙を流す弐ⅱの姿を誰もが見たと感じる。

[五五ⅵだけじゃない・・・。仲間が溶けて消えた。皆っ。皆逝ってしまった]

四肢から動力と言う力は全て抜け落ち地面に膝を付いていても溶けて

半身となった五五ⅵの体をきつく胸に抱きしめ離そうとはしない。

この日の強行偵察任務に赴いた部隊の内戻って来たのは弐ⅱと破壊され溶け遺骸と

なった五五ⅵだけで在る。

弐ⅱも外装のほとんどを灼かれ梳かれて内部機器が露出している。

そのような状況で遭っても上級指揮官は弐ⅱに報告を求めなかった。

どのような状況で何が起きてどうなったか?

図らずみ遠島のこの地に置いても上級士官は事細かく知っていたからである。

それも語弊があるのかもしれない。望まずとも図らず。

あの惨事は余りに大きな厄災であり偵察基地内に置いても逐一報告される状況など

嫌が負うでも目と耳に入って来たのだ。

「戦闘機人兵・・・ASH弐ⅱ。今は休め。ゆっくりとな。

偵察型の方は機体再生局に廻してやる。其の兵の働きが無ければ詳細は不明だった」

[有難う。上官殿。頼む・・・どうか頼む・・・]

上官の下知を受け駆け寄り五五ⅵの遺骸を引き取ろうとする技研兵は手を焼く。

理解はしているのだろう。

それでも技研兵に五五ⅵの遺骸を弐ⅱは手放すのを強く拒む。

[せめて輸送機迄運ばせてほしい・・・頼む]

五五ⅵの遺骸を手放す事は今生の別れではないと知っていても大事な物を失う事の

恐怖に弐ⅱは機体を震わせる

「好きにさせてやれ・・・」上級指揮官は首を下げ認めてやる。

機人兵は戦の道具である。言ってみれば兵器であり又一つの道具でしかない。

然しASH弐ⅱは違った。彼の權田一々氏直々が調整したヒトノイドで有る。

究極に言えば寧ろ戦闘兵には適さず我ら人種人類に近い。機人達よりさるかに

多種多彩な感情を有し時にはユーモアも時には悲しさも理解し人種と

変わりない感情をも持ちわせている。

それと知って共に戦った友兵の遺骸を簡単には手放す事に強い抵抗が

あって当たり前だろう。

・・・コツコツとヒールの音を響かせ待機し開閉口を開ける輸送機の前に並ぶ箱に

歩み寄る。

溶けて半壊となった五五ⅵの遺骸を名残惜しそうに義体回収用の箱に納める。

五五ⅵの遺骸は上半身しかないから箱の中の殆どは空白となる。

それでもこれ以上傷つかないようにと気を使いハーネスをしっかりと填めて

収めてやる。

[・・・御免なさい・・・しばらく休んで・・・五五ⅵ]

白い装甲も上がれ中身がむき出しになった自身の指を原型を留めもしない五五ⅵの

頬に添え弐ⅱが涙をこぼす。

[戦闘機人兵型・ヒトノイド・ASH弐ⅱ・・・機能停止・・・]

いつもの涼やかで少しだけ低音でかすれた声ではなく補助機能の機械的な声を発しASH弐ⅱは完全停止する。



[敵性・戦略殺生兵器天司体機人・・・殺戮兵器エネルギー充填確認・・・御姉様。

・・・逃げてっ]

弐ⅱの前方で強行偵察型機人兵・五五ⅵが叫ぶ。

それは悲鳴とも強い覚悟を秘める言葉である。

[待て。五五ⅵ下がれ。お前もだ]機人兵で有りながらも何処か女性らしい響きを

持つ弐ⅱの言葉が返る。

[敵・戦略殺生兵器天司体機人・殺戮兵器開放・・・間に合いません・・・そして

私は偵察兵です]

強行偵察型機人兵・五五ⅵもまた特殊な機体である。記録係と言っても良いだろう。

戦場で起こる全ての事を記録する。それが敵の新型であれば尚更だ。

自らの機体を犠牲にしても記録するのが任務で有る。

[五五ⅵっ]

あっと言う間であり真に一瞬と言えるだろう。

地上およそ2㎞と言う宙に白き鋼の両翼を煌めき広げ両手を広げ浮かぶ

戦略殺生兵器天司体機人・アプ・ヨルウェルス

【滅しなさい。溶けなさい。焔に灼かれ。消えて露と成りなさい

・・・双重衝波焔撃】

冷たく何処までも冷たい声がその効果範囲に居る人と機人兵の頭の中に直接響く。

敵と知れず味方としれず兵士と知れず生活営む民然り。


最初に放たれた光膜は腐敗霧雲だ。

それに触れれは体が溶ける。ブツブツと肌が泡立ち皮膚が堕ちる。

骨が見えればそれにも泡が立つ。

[五五ⅵっ]弐ⅱは飛ぶ。前に向かって飛ぶ。

弐ⅱ特有の機能。足首に仕込まれた圧縮ガス弾が弾かれ勢い良く機体が

前へと跳ねる。

[守る。私が守る・・・]グンと跳ねる四肢を唸らせ迷いもせずに五五ⅵの手首を

掴む。

「御姉様・・・]すでに最初の腐敗霧雲に大半の体を溶解された五五ⅵが

弐ⅱの名前を呼ぶ。

[大丈夫。私は守ってやる]

五五ⅵの手首を引き止めるも自分も腐敗霧雲の中に体を晒す。

前に出た勢いはすぐには相殺出来ない。素早く体制を入れ替え崩れ溶けていく五五ⅵの体を強く胸に抱きしめる。

弐ⅱの外装もすぐにブスブスと泡立ち腐敗を始める。

自分の四肢も何処まで持つか計算もつかない。

すぐと背後に焔波が迫る。躊躇してる暇はない。

だがしかし。胸に抱いた五五ⅵの他にも腐敗霧雲に咽まれ四肢を溶かし苦しみ悶える仲間の姿が瞳に焼き付く。

[来てくれて有難う。御姉様。でも・・・行って下さい。私を置いて・・・]

[出来るわけない。守る。絶対に。]

短く怒声を吐き出すと弐発目のガズ弾を排出する。

ドンと四肢が大地を蹴って弐ⅱの四肢が跳ねる。

今度こそは腐敗霧雲の外へと向かって。


弐発三発と連続で踵からガズ弾を弾きだし弐ⅱは飛ぶ。

五五ⅵの溶けた半身を胸に抱き跳ねる。

すぐと後ろと其の背に弐発目の焔が迫る。

数千度を超える焔が餌を求めて猛り全てを飲み込んで行く。

溶けて爛れ半壊と成った人と機人の体を熱と焔が燃やし尽くす。

四回目の跳躍で左踵の機能が止まる。

ブスブスと左の足が泡立ち溶解が進んで機能が失われる。

[クソ・・・届かない。あとすこし・・・後すこしなのに・・・]

左脚の機能が消失しバランスが崩れれば方向が変わる。

それが変われば天司体の兵器被害範囲がもうすぐであっても

結局、焔波に咽まれて蒸発するだけだ。


(背部該当跳躍弾全弾発射・・・衝撃に備える事を推奨)

[えっ?]聞き慣れた声が聞きなれない言葉を吐き出す。

その途端、弐ⅱの背中の外装が弾け飛ぶ。むき出しに成った背中から音が弾ける。

ドンっ。

耳に音が届く前に衝撃が弐ⅱの四肢を押し出す。

それは一弾の弾であった。急速に視界が狭まり腐敗霧雲のなから弐ⅱの機体を

遠ざけていく。

焔波さえも追いつけず遥か彼方でたゆり溶けて消えていく。


弐ⅱ自身も知らぬ存ぜんぬであった背中の跳躍弾。

そのおかげで自身は生き延びたかもしれないが、胸に抱く五五ⅵはその半身が

溶け果て遺骸と成る。

「すまぬ。守れなかった・・・守ってやれなかった・・・五五ⅵ

・・・兄弟姉妹達・・・」

自分が生きていると言うことより逝ってしまった仲間への想いを胸に抱き弐ⅱは

いつまでも大地に膝を突き流せない涙を枯らし悶え苦しむ。


[終了せりて・・・絶終成り・・・滅却したりて消滅然り・・・]

腐敗と熱波の跡は漂うがすでにないもなくなった大地に天司体がそっと脚を

付け降りる。

漂う草木も無ければ腐り溶けた人の手首一つもありはしない。

[ああ・・・これこそが・・・正義成り・・・]


[何故?私がCカップなのだ?それは許されない事だぞ。この変態紫ビキニ野郎]

「だから何度も言ってるだろ?弐ⅱの体は修理中なんだってば。

だから紫ビキニは辞めてあと変態もつけないで・・・恥ずかしいから。」

まだ半身だけの状態で有りながら意識を覚醒させた途端に弐ⅱが吠える。

「Cカップとは何だ。私の尊厳がなくなるだろ。せめてDにしてくれ。」

上半身だけの状態で吠える弐ⅱに今は腕がない事を藻武山義肢官は密かに感謝する。

「あのね。ヒトノイドの部品って手に入りににくいだってば。特注品だし。

あと高いのとっても。飽く迄も仮の義肢だから。我慢してくれよ。弐ⅱ」

手がないから殴れない代わり噛み付くかの勢いで弐ⅱが吠える。

[良いか?藻武山紫ビキニ技官殿。

私ことASH弐ⅱはヒトノイドとしてもプライドがある。

それにだな。私の胸が小さくなると10人ほどの彼氏彼女が悲しむんだぞ。

それにこの殺伐とした戦場の一輪の華他の兵士や士官。

付いては基地内の全員が眼福としてるのだぞ?いわばアイドルだな。

その可憐で美人なアイドルの胸が小さくなったらどうする?

皆が悲恋に暮れ基地全体の指揮がさがるんだぞ?お主。責任取れるのか?]

白灰色の仮面を真っ赤に染めて弐ⅱが力説する。

「たっ。確かにそうだ。って?なんで10人も彼氏彼女が居るのか?いつの間にか?

そっ。其の中に俺は入ってる?出来るだけ要望には答えたいけど

・・・問題も多いんだ。」

鍔が飛んでくるとも思える距離で吠える弐ⅱをなんとか説き伏せようと

藻武山は奮闘する


[問題ってなんだ?部品をお揃えるだけじゃないのか?

それよりEにしてくれ。威厳に陰るのだ]

「今出来る事は少ない。それでも出来るだけの事はさせて貰うよ。

構ってもほしいしな。

最も簡単には行かない。あの翼持ちを狩るつもりだんだろ?ASH弐ⅱ?」

[彼奴は狩る。必ず。その為に今は耐える。然し胸の大きさは譲れない。]

胸の大きさがそんなに大事か?とも思いつつも拘りは大事とも思い直す藻武山。

然し問題はそこだけではなかった。弐ⅱの機体四肢はヒトノイドで有る。

通常の機人兵とは違いすぎる。ヒトノイドの調整を行えるものは少ない。

この基地にはいないだろう。

メンテナンスは出来てもその性能を高める必要が在るとすれば尚更だ。

藻武山はたしかに変な趣向を持つ漢ではある

。出来れば人知れずであっても今は公然と知らている。

藻武山の義肢官としても腕は玄人の息を遥かに超える匠人クラスの物でもある。

その藻武山でさえもヒトノイドとして更に其の敵天司体を狩ると成れば

それでも手には余る。

「なんとかなると思うわ」ひらひらと糸針器を手の中で回しながら

神羅管制官がやってくる

[久しぶりであるな。神羅管制官殿・・・自慢の胸がまぶしいな。]

機体を失い半身となった弐ⅱが羨ましさを隠さずに嫌味交りで告げる。

「ライバルが傷心してるのを嬲る趣味はないの。

張り合いがない毎日はつまらないのよ。

それより吉報よ。ヒトノイドの先駆者は来なくても精錬人形の匠人が来てくれる。

変わった人だけどもなんとかしてくれるはずよ」

[そうなのか?それでEにしてくるか?そうであろうな。]

満足に動かえせないであろう体を揺らし弐ⅱが嬉々として悦ぶ。


「この御方がちょっと変わったわ精錬人形技師のオレンッジュさんよ」

これ見よがしに胸下で腕を組み態々と強調した仕草で弐ⅱと

義体制作作業所に藻武山を案内する

其処には弐ⅱも又藻武山も見たことのない種族の技師が突っ立っている。

「■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇」当然話す言葉も違い分かるはずもない。

[これはこれはご丁寧に有難う。オレンッジュ・オルン・オルリン殿]

一瞬の間を空けたにしろさすがヒトノイドである弐ⅱだ。

姿かたちは違えと人種人類。否、それが亜人特有の言語で遭っても弐ⅱは

容易く理解し話もする

[こちらのオレンッジュ殿は所謂。亜人の小餓鬼族だそうだ。

めったに人前に姿を表す事は極端に少ないと言う話では有るが

今回は態々脚を運んで頂いて有難う]

一時的な処置として簡易義肢に換装を終えた弐ⅱが小餓鬼族・オレンッジュの前に

膝を折り手を出しだす。

白灰色の冷たい弐ⅱの手を小餓鬼族特有の四本指を器用に動かし握り

それを返礼とする。

「■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇」

[いや。オレンッジュ殿。私の知る限り藻武山の親類にも先祖にも小餓鬼族も者はいないと思うが言われてみればよく似てるな。確かにチンチクリンで腹が出てる

。変わった趣味も持ってるしな。

・・・いやいや雄色好みではないな。

多分。もしかしたら其の毛があるのかも知れないが・・・

ふむ。性癖はともかく親しみを覚える顔と体躯だとオレンッジュ殿は言っておるぞ。良かったな。藻武山義肢官]

「否・・・親近感を抱かれても・・・確かに気が合いそうだけも

・・・でも雄色好みとか変な趣味とか言わないでくれる?」

それでもやはり人形と義肢体と言う共通の技術に携わる者同士なのだろう。

人種にはあり得ない太くごつい四本の指を藻武山も握り礼儀を通す。

「さて。私の仕事は此処までよ。結構大変だったんだから。

跡は職人同士で仲良くやって頂戴な」

胸もそうであるがそれにも負けずと大きな尻を振りながら神羅が歩きさる。

藻武山どころか小餓鬼族のオレンッジュ。

そして弐ⅱまでも歩きさる神羅の尻に目を奪われる

「あれは・・・けしからん。とてもとてもけしからん」

ぼそりと漏らした藻武山の言葉にオレンッジュも弐ⅱも首を上下に振り

激しく同意する。


「■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■???」

[うんうん。オレンッジュ殿。其のとおりだな。あの乳の大きさなのに崩れてない

さすが基地随一の美人である。・・・ちなみに夫持ちだぞ

・・・紫ビキニの藻武山義肢官]

「何だと!人妻だと・・・人妻なのにあの乳だと・・・けしからん」

[しっ。大きい声をだすな。ばれるだろう]

「聞こえるはず無いだろ?あの浮虫にはスピーカーついてないし。

映像送信だけだろ。ちなみに今日は勝負下着の紺蒼ビキニだぞ。

弐ⅱがかまってくれるかもしれないかな。」

弐ⅱの新型義肢の制作と調整に辺り小餓鬼族精錬人形義肢オレンッジュは

資料を求める。

オレンッジュは技術云々と言う前にその造形にも強い拘りを持つ

「■◇◇■◇◇■◇◇■・・・」

[ふむ・・・理解する。確かに人種人類の体付きと言うのはわかりにくい。

しかし。任せてくれ。非常に適切で尚且良好な見本素体が身近に有る。

軽度な犯罪行為ではあるが

何。大丈夫だ。ばれなければ良いんだ。其のための技も有るからな。]

まだ仮義肢の為落ち着かないのだろう。

ゆくゆくは本来の体と成る胸の為ならと弐ⅱも張り切る。


飽く迄も弐ⅱの新型義肢の為だと言いはるがモニターに映し出されるのは

ボリューミーな四肢を惜しげなくも晒し暖水を肌で弾く神羅の姿で有る。

要するにシャワーを浴びる神羅。

夫の元に嫁いで五年となるしすぐに子供も授かる人妻で母でもある。

しかしそんな事など嘘の様に美しく端正な顔と豊かな乳房と大きな尻肉の上を

暖水が跳ねる。

「僕が作った浮虫は防水ところか防弾仕様でさえも有るからな。

それなのに僕だけ見せて貰えないのはいささか不公平じゃないか?」

覗き身の機器を提供したもののプライバシーの侵害だからと一人除者にされる藻武山

「煩いぞ。濃蒼ビキニの藻武山義肢官。これは義体制作に必要な資料収集なんだぞ。

遂行な任務で有る。・・・観ろ。あの豊かな胸と先端の色。淡桃で初々しいんだぞ。

細く閉まる腰も膨らむ大きな尻も見事だ。私が女性型で無ければ手を付いて・・・

いや・・・そうであってもあの胸を愛でて嬲るのは出来るな。云々・・・」

「■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■・・・」

くりくりとした目を見開きながら告げるオレンッジュ

[ぬ?後学の為だ。オレンッジュ殿。結構身持ちが固いんだ。神羅嬢は。

幾度かアピールしてみたが頑なに拒む。夫と契を大事にするとか言うんのだ。

でも、其処が言い。いつか必ず堕としてあの乳を・・・]


ASH弐ⅱの新型義肢の開発は遅れる。理由は色々有る。

弐ⅱが拘るEカップの胸とその造形。下半身の造形も時間が費やされる。

元々弐ⅱの義肢を開発し調整したのはヒトノイドの考案者權田一々氏その人である。

高齢でもあり仕事も引退できず多忙であった彼の代わりにそれを担うのが

小餓鬼族義肢のオレンッジュ。

しかしオレンッジュは手を焼く事になる。

ヒトノイドに並々成らぬ愛着を持つ權田氏は専用義体では無いかと

言うくらいの細かい仕様書と素体四肢を始め一体分以上の部品を送り届けてくる。

これを現地で組み上げ更に敵性天司体の攻撃に耐えられる様に調整するのは

骨の折れる仕事であった。


[体の方は形になっている。今度の胸は逸品だぞ。なにせ見本が良いからな!]

素体の儘で遭っても嬉しいのだろう。

未だ部品加工の段階だと言うのに弐ⅱははしゃぐ。

「見本?そんな見本なんてどこに有るのよ?」小首を傾げる神羅。

[コホン・・・それは企業秘密だ。おいそれと口にしてはいけない秘密だ。

然しそれ以前に我々は討論しないと行けない事がある。

ちなみにオレンッジュ殿は尻の造形に拘ってるので欠席だぞ。

それも又、大事なのだ。]神羅のシャワーを覗いた事は黙される。

「弐ⅱの機体の事よりも考慮するべきことは確かにあるな

・・・例の羽付きの対抗策だな」

「それはそうだけど。厄介だと思うわよ?何か策でもあるの?藻武山」

「僕が高潔な趣味を持ってるからと言って呼び捨てないでくれ。神羅嬢。

特に策はない・・・然し考察は必要だろう。

義肢が完成しても倒す為の術が無ければ意味がない。

[確かにそうでは有るが・・・周知されてる事もすくない。どうするんだ?]

「それでもわかってる事を整理するのは大事だ。

・・・それを書き出していく・・・長くなるけど・・・」


戦略殺生兵器天司体機人。

彼の者が戦場に出てくるのはある一定の条件が揃った時で有る。

これは敵性勢力が一定の数が集合している場所。

つまりは弐ⅱ達陣営兵士が多く集まる所大抵の場合はそれは駐屯地と

成ることが多い。

又。飛翔して移動する為に現地への到着後の攻撃を行い敵兵を殲滅後に

速やかに帰投する事も確認されてはいる。

これは実際の活動時間は意外と短いと言う事を示している。

勿論推測である。自身の攻撃が済んだ後には遺骸さえもなくなるから其処に

待機する意味も無いのかも知れない。

自身の攻撃に絶対の自身が有ると言う事でも有るのだろう。

次に対処方法と成るがこれは揉める。

天司体は攻撃時に地上から一定の高さにて浮遊する。

それを打つには攻撃する側は天司体の技をの外側から攻撃する必要が有る。

天司体の攻撃葉にも過去の戦闘から割り出せてはいるがそれも正確とは言えない。

出力を抑えて居る可能性も有るのだ。

天司体の攻撃範囲の外から攻撃するにしても問題はある。

攻撃技が発動する前に天司体に接触しなければ成らない。

攻撃態勢に入ってから発動までの時間さえもそれほど長くないとすれば

接近さえも難しいだろう。

かと言って接近すれば腐敗膜と焔爆に機体を晒す事に成る。

紺蒼のビキニを愛用する藻武山も。豊かな胸を持つ神羅にも。

時折頭を巡らせ少し遠くの工房で組み立てられる自分の体を気にする弐ⅱも

結局具体的な対処策を見いだせることは事はなかった。

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HITONOID【戦陶鬼・Doll of war】 一黙噛鯣 @tenkyou-hinato

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