第71話 魔法剣士、狩をする

 俺は大荷物を持って森の中に入った。


 森に入る前、御者に森に入ったら何日くらい待つのか、と聞いたら1ヶ月位だ、と答えられた。1ヶ月したら死んだか、逃げたかした、と報告する予定だ、とも言われた。

 これは1ヶ月以内、出来れば3週間で決着つけないといけないな、と思った。

 さて、どうするか。森に入ってから、しばらく歩いた。それから道標ガイド・ポイントの魔法を使った。イメージは小高い丘になっている場所。

 大体わかった。ここから少し北に向かえば小高い丘があって、更に低木が生えている場所がある。

 行ってみる価値はある。俺はそう思い、進路を北に向けた。道は獣道しかなく、大荷物を持った体にはきついが、藪漕ぎをしなくて済むのは助かった。

 途中で休憩を挟み4時間ほど歩くと目当ての地形に出た。精々15フィート位の低木が散らばるように生えている。ヒポグリフはあんな低木の影で休むのか、と思った。

 住処と思われる丘のてっぺん辺りに、近寄ってみることにした。追跡トラッキングはそれほど得意じゃ無いんだが。

 ヒポグリフの食性は肉食だから、糞も肉食獣のもののはずだ。馬と鷲の合成獣だからって、草食はしないはずだ。しないはず、だよなぁ。

 そういえば、丘人たちも丘陵に好んで住む。なら、生息圏はヒポグリフと被るのではないか?

 もしかしてマシュー達はヒポグリフについて、何か知ってる事があるんじゃなかろうか。しまった、ヒポグリフを狩り損ねた話をした時、聞いておくんだった。

 今更もう遅いな、マシュー達は此処にはいない。

 小高い丘のてっぺんに30フィート位の、周囲の低木よりは高い木が一本、ポツリと立っている。あれがヒポグリフの住処だろうか。

 俺はその木まで行ってみようかと、足を踏み出した。

 丘の上には大型獣の巣らしきものはなかった。代わりに木より随分離れたところに糞が幾つもあった。俺はうっかりその糞を踏んでしまった。折角いいブーツだったのに。俺は迂闊な自分に腹を立てながら丘の周囲を回った。

 丘のてっぺんには巣はないと思ったが、回ってみるとかなり大きな動物が寝ている跡らしきものがあった。ヒポグリフだろうか?

 なら、ここでウロウロしているのは得策ではない。どこか隠れられるところを探さなては。俺は大型の動物の糞と思われる物を一つ拾い、周囲を見渡した。

 手近な所は低木が疎に生えている。上空から地上を眺めたときに完全に隠れられるかか、視界から外れることができるか、と言われると心もとない。もう少し木立が密生している場所がいい。そうなると、丘からだいぶ離れるな。

 うまい具合に丘を見渡せる所に背の高い木立があった。これだけ密生していれば上空から見つけられることはないだろう。それに、丘の監視もできる。

 監視にも、隠蔽にも良い位置だと思った。シータなら木立に登って監視できるんだろうな、と思ったがシータは居ない。

 かと言って俺が木に登って、枝の上で居座りながら監視を続けるなんてことは出来ないし。

 木の根元に隠れながら木隠れハイド・ウッドの魔法に頼るしかない。木隠れハイド・ウッドはどの程度持続できるだろうか。魔法の効果が持続している間に帰ってきてもらいたいものだが。

 俺は先ほど回収した糞を調べた。糞には動物の毛が混じっていた。これで決定だ、この糞をした動物は肉食獣だ。と思ったら何がぽろぽろと落ちた。数粒落ちていた。よくよく観察すると何かの実の種らしい。と言うことは、この糞をしたやつは雑食性と言うことになる。

 そうなると、この獣は熊のような生物となる。目論見が外れたか?まさか熊がこの辺りにいると言うわけではあるまいな?

 その時遠くから風切音が聞こえた。俺は慌てて木隠れハイド・ウッドの魔法を使った。


 なんとか間に合った、これで遠くにいる対象の監視ができる。と、風切音の発生源の方を見てみれば獣が飛んでいた。鷲の半身に馬の半身だ。ヒポグリフ、間違いない。

 しかし、大分大きいぞ、対比物がないから解りづらいが、それでも並のヒポグリフより大きい、とわかる。


 いや、本当にヒポグリフか?おいおいおい、ありゃ何だ?

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