ゴブリン戦争
第22話 魔法剣士、ゴブリンを探す
俺とキアがお婆の家で留守番をしていると、シータとサラが大きな皿を持ってやってきた。
大皿2枚分の料理。1人1皿って事か?明らかに量が多いだろ。
「2人ともこの量食べたのか」
「うーん色んな皿が出て来たから結構食べたけど、多分その皿分は食べたと思う」
とサラが言った。
「サラ、二日酔いは?」
「不思議なんだけどね、リリアナの料理食べてたら二日酔い抜けていくんだよね」
「それ凄いな、料理で二日酔いを治すって」
「リリアナの手料理は色々なスパイス使ってるからそのせいじゃないかな」
と、シータ。
スパイスか。マシューは一体どうやってスパイスを揃えたんだ?そんなにスパイスを揃えるのに、街じゃ揃えられないだろ?そもそも一二カ月の間に、あれだけ家具も食器も整っているって何故なんだ。
みたいなことを呟くと、それを聞きつけたシータが
「アレックスはサラとキアの小屋を作ってたから知らないんだと思うけど、マシューの家、荷物を持った丘人が何人もやって来てたよ。多分、その人たちがマシューの家に家具や調度品何かを運んでたんじゃないかしら」
と答えた。えー。そうなのか。知らなかったのは俺だけなのか、もしかして。
「私も偶然見掛けたから判ったんだけどね。マシュー、丘人の中ではかなりの有力者らしいよ」
へー。じゃぁもしかして、マシューが住んでいたという川辺村も本当だったら活気のある村だったのかも知れないな。
などと会話していると、キアの精霊がキアの手元に戻り、ダンスを1踊りすると、すう、と消えた。そして、意識がキア自身に戻った。
「キア?」
「なんです、アレックス」
受け答えで、キアの意識が戻っているのが確認できた。
「首尾はどうだった?」
「そうですねぇ。まずゴブリンの複数の
キアはそこで一度言葉を切り、飲み物を所望した。ポットの中で温くなったカラム茶をキアに渡すと一口、二口と口を湿らす様に飲んだ。
「それから、少し奇妙な事が。トロイジャンから100名程の騎士からなる1隊が出発しました。隊を率いるのは年若い将のようです」
トロイジャンと言うのはイエナ大公領の公都の名前だ。勿論、止ん事無い人々が住んでいる。
俺は率いる将に何となく嫌な予感がしたので、将の姿形を訊ねた。
「茶色い髪に、明るい茶色の瞳、顔立ちからは裕福そうな家柄を、頭には白金のサークレットを身につけていました。纏っている鎧は装飾の施された美麗な物でした」
アイツだ。あのあほうがまた事態を引っ掻き回しに来た。
あれの名前はディモトロスという。イエナ大公の三男で冒険好きな、俺に言わせれば大馬鹿だ。何か厄介事があると、進んで首を突っ込み散々引っ掻き回して、最後は親父のイエナ大公にケツを拭かせる。本人には悪気はない……と思いたい。
思えばアイツとの付き合いも10年位にはなるんだな。
今回もゴブリン如き、正規の騎兵100人で蹴散らせる、とか思って出陣したんだろうな。どこでゴブリンの話を聞きつけたのか知らんが。
事あるごとに「
そう、何で俺がやつに詳しいかと言うと、アイツと俺はごく小さい頃はいじめっ子といじめられっ子の関係だったからだ。
成長するにつれて疎遠になっていったが、アレの引き起こした幻獣絡みの騒動を一度解決してやった事があって、褒賞を貰いにトロイジャンに行ったのだが、再び顔を合わせたディモトロスはすっかり尊大になり、自分の実力をかなり高めに評価していた。
従軍したら多分、今回もヤツのケツを拭く事になるんだろう。
「その騎兵とゴブリンとの接触は?」
「騎兵は今朝トロイジャンを出発したばかりのようで、まだ接触していません」
「トロイジャンとその塔の距離は?」
「距離ですか?うーん」
「わからない?」
「精霊は現世の距離を測るには適していませんから。でも50リーグより近いことはないはずです」
アイツ強行軍するかな?いや、ゴブリンを舐めていたら強行軍などしないだろう。となれば、こっちは3日以内に接触できれば良いわけだ。はぁ。
まずは大公から連絡が有りそうだが、その時点でヤバイ状況になっている可能性が高いんだよな。
だから早めに用意して、出発の時間を見定めないと。
「仕事になりそうだ。一応、出発できるように準備しておいてくれ」
と3人に伝えた。
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