第20話 魔法剣士、仕事の話をする
翌日、サラとキアが起きてお婆の家に顔を出した。
サラは酷い顔をしていた。二日酔いらしい。反対にキアの方はサラよりは良く、表情が穏やかだ。まぁ、何時もの事なのだが。
とりあえず、サラとキアに飲み物を出した。キアの方には爽やかな香りのするカラムの皮を煎じた物を、サラの方には飲みづらい薬効のあるハーブを煎じた物をだした。
「アレックス、この飲み物、なんか変な匂いがするんだけど」
「二日酔いに効く薬湯だから飲んどけ」
とサラに言った。
「苦っ」
苦いだろうな。そういう煎じ薬だからな。二日酔いになるまで飲んだツケだ。
「私の方は、柑橘の良い香りがするんですけど」
「カラムという柑橘の皮を天日で干したものを煎じている。良い香りがするだろ」
サラは暗い表情で薬湯を飲んでいる。飲んでおけば午後から少しはマシになるだろ。キアがサラを介抱するのは、嘗てはよくある光景だったな。シータは面倒だと思ったらしく逃げていた。
「それでな、昨日の仕事の話なんだけど」
「なんだっけ、それ?」
全く覚えていないサラ。こいつ酔っ払うとあらゆることを忘れるな。誰に口説かれても覚えていないんじゃないか?
「ゴブリンの巣を探す話でしたよね、確か」
キアは酔わないのか、何時も話している内容を覚えている。ある意味、キアの方が恐ろしい。
「昨日は巣と言ったけど、違うかもしれない。砦を探すことになるかも」
と俺は2人に言った。サラは気がついていないかもしれない。
「そんなに大規模な
ゴブリンは基本的に
何故なら戦利品(何なのかは考えたくないが)を山分けするとき、大変な混乱が起こるからだ。こういう大混乱は理由が何であれ、ゴブリン達に身の危険が迫っている時にも起こる。
「今回は複数の
「まあ。その色々は気になりますけど。それでアレックスは複数の
「この近辺なのか良くわからないんだが。多分、ここから、二三日、遠くても四五日の所に有るんじゃないかと思っている」
「その根拠は?」
「俺たちがゴブリンと遭遇した位置だな。勿論、このゴブリン達の中には無関係の群れがいたかもしれない」
キアは昨日話したゴブリンと遭遇した位置と日にちを頭の中で地図と照らし合わせているらしい。
「エンヤ」
とキアが呟いた。すると、精霊が召喚され、キアが古語で何事か精霊に指示すると精霊が消えた。
「精霊に何をしたんだ?」
「カディスの森東部を中心にゴブリン達を探す様に命令を。私これから暫くエンヤと繋がりを維持しなければならないから話しかけないで」
俺はわかった、と頷き、サラのほうに目を向けた。だめだな、今日は使い物にならないだろうな。
取り敢えず水を汲んだコップを渡した。ものすごい勢いで水を吸い込んだので、2杯、3杯と渡した。
「取り敢えず、今キアが言ってたことが判ったか」
「判った。……多分」
ふーむ。今込み入った話をサラに言っても理解させるのは無理だな。薬湯が効いてくるまで暫く待つか。
昼ごろシータが森から帰っていた。雉や鹿などを狩っていた。
「鹿か。良く狩ったな。と言うより良く担いできたな」
と、シータの背中に担がれている獲物を見て言った。
「鹿をね、解体するのに時間かかっちゃって。革と頭を残してきたので後で取りに行くから付き合って」
俺は烏どもが啄んでいるのではないかと思っているのだが。
解体し終わってない半身が残っている。これも解体するか?
シータにどうするのか訊ねたら、マシューの所へ持っていくのに半身残した、とのことだった。そうだな、ちょうど昼だし、マシューも家に居るだろう。持っていってやろう、とシータに言うと何だか嬉しそうに俺を見るのであった。
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