第18話 魔法剣士、大工仕事をする
「なんでまた、急に」
俺はシータに言った。
「二人から手紙が来てたの。カーティスのパーティが解散したから、こっちでパーティ組めないかって。私文字読むのが遅いから、アレックスに言うの遅れちゃった」
「いやいやいやいや、トロルの話をしていてなんで今サラとキアの話しになるんだよ」
シータは時々話していると突然別の話をすることがある。そういう時は、旧パーティの皆はさらりと受け流して、あまり驚かない様にしている。今回も「そうか」と言って流せればよかったのだが、言い出したことが余りにも突拍子もなかったため、ついまともに対応してしまった。
「ごめんね。私言い忘れちゃってたから。今度から気をつけるから」
「ちょっとまって。どうして今。サラとキアの話になるんだ」
そこは気になった。何故なら一貫性が無いから。普段のシータはもう少し話の流れを読む。
「ああ。邪悪な魔法師の討伐のパーティを探すなら、私たちがやればいいかなって思ったらサラとキアの事を思い浮かべたから。そんだけだよ」
「いつ頃着くって」
「手紙が来たのが3日前だからあと10日くらいで着くんじゃ無いかな。カディスの森は迂回するでしょうし」
あと二人増えるならば寝床を作らねば。具体的にはベッドが有る小屋だ。
サラのベッドはそう大きくなくて良いだろうし、キアは半エルフでもエルフに近い性質を持っているので休息をとる時には樹木、それも大樹の根本で瞑想することを好む。だからベッドは小さいのが一つだな。
うん、よし、小屋は何とかなりそうだ。
「取り敢えず御婆に相談だな。うーん。相談することが2つになったぞ」
こうして、俺たちは御婆の家に急いだ。
「で、お嬢ちゃん方が二人増えるんだって?それでトロルがなんだって?」
俺たちは勝手に口を開いたから御婆も混乱していた。まずはサラとキアの話をしよう。
「俺の元いたパーティにサラとキアという女性が居たんだが、そのパーティが解散してしまったので、こっちで仕事出来ないかって」
と、そうは間違ってないだろうと思った事を言った。
「本当かい、シータ?」
「うん、サラとキアが来るのは本当。仕事のことは、またパーティを組んで
「シータは正直でよろしい。アレックス、あんた誤魔化そうとしたね」
不味いな。こういう時は謝るか開き直るかだ。俺は開き直るという、御婆の機嫌がいい時でないと出来ない受け答えをした。
「
「開き直ったねえ、あんたの悪い癖だよ。まぁいいさ。2人の寝る小屋はお前が作っておあげ。小さい小屋1つならそれほど手間じゃ無いだろ?」
お婆の機嫌が悪い日だった。
「里の衆にも頼んで良いか」
「あんた1人で建てておあげ」
「……はい」
本当にこの子は困った子だよ、みたいな目で見られた。俺はもう成人男性なのにそんな目で見られるのは屈辱を感じる。
「私も手伝うから、お婆ちゃん良いでしょ?」
御婆は仕方ないねぇ、という様にため息をついた。明確に拒絶していないので、シータが手伝うのは良い、と判断した。
「で、トロルがどうしたって」
それで、俺はトロルが姿を見せたところから戦闘して離脱するところまで、それから俺が考えたことまで話した。
「ふーん。トロルの背中にも同じ様な焼き印があったかね。これは由々しき事態だねぇ。大事になる前に始末をつけて置きたいが……何しろ推測が多過ぎるのが問題だね」
と言うよりも、問題にしているのが俺たちだけって言うのがそもそもの原因だ。
「アレックス、しばらくルーンの授業はお休みだよ。ゴブリンに焼き印をおしる奴を探しな」
そうなるか。そうなるよな。
「小屋はどうする?」
「嬢ちゃん方2人が来るまでに仕上げれば良いだろ」
そうなるだろうなぁ。
御婆との話は、俺の行きたく無い方行きたく無い方に転がっていくのであった。
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