リスタート!!

ななくさ

リスタート!!

『ぶっちゃけ彼女ほしいー』


元恋人この言葉が事の発端だった。ここから俺が壊れていった。


オレの名前は神藤律(じんどうりつ)。普通の高校2年生。それなりに高校生活をエンジョイしていたし、恋人もいてみんなには悪いけどリア充!でもそれは昨日までの話。今は絶賛病み期の非リアだ。オレに一体何が合ったのか...。それを今から語っていこう。


スマホでゲームをしていたら恋人の霧崎碧斗(きりさき あおと)から連絡きたのですぐ既読した。


碧斗『なんかクラスに彼女いるって人多くない?』


欠かさずすぐ返信する。


オレ『そうか?そんなこと言ってるの数人だけだぞ。』


碧斗『えー、今はいなくても元カノいるーって言ってる人ばっかりなんだけど。』


オレ『まじかよ』


オレ『まぁ、オレには碧斗がいるから。』


それに対して碧斗はハートマークがいっぱいのスタンプを送った。オレのことを好きでいてくれてるんだな。心が自然と温かくなってきた。これだけで明日も頑張れそうだぜ!


碧斗『クリスマスリア充とかいいなー』


いいなーってお前はオレとリア充だろ?今更何言ってんだが...。


オレ『クリスマスは俺とリア充するんだろ?』


このときのオレは肯定的な返信を期待していた。「そうだね」とか「もちろん」とか。で、この後はクリスマスの話題で盛り上がると思い込んでいた。でも返ってきた返信は


碧斗『ぶっちゃけ彼女ほしいー』


え、何を言ってんの?オレがいるのに。

俺は今まで経験のしたことないような混乱に陥った。


オレ『どういうこと?』


碧斗『そのままの意味だよ?』


オレ『???????????????』


オレ『じゃあオレのこと好きじゃなくなったってこと?』




まさかとは思って聞いてみた。そんなことなんてあり得ないはずだ。昨日デートしようって言ったら「僕もしたいな」って言ってきてくれたのに。


碧斗『そういうこと。元の関係に戻りたい』


このメッセージを見て視界がにじんだ。友達に戻るの?碧斗に嫌われる様なことをしたり喧嘩だってしたことない。好きじゃなくなったと言われる筋合いなんてないはずだ。意味がわからない。オレは好きなのに。この涙が碧斗への愛だろう。自分でもこんなに好きだったんだなと少し驚いている。


オレ『なんで?いつから?』


碧斗『もう冷めたからだと思う。同性を恋愛対象として見れなくなった。たしか2ヶ月ぐらい前からかな。言いづらくて本当の気持ち我慢してた。』


同性を恋愛対象として見れなくなった....?そんなの本当に好きなら関係ないだろ。同性を恋愛対象として見れなくなったって言うのはただの言い訳でオレへの恋心がなくなったんだろ?それに2ヶ月前って...。色々な感情が渦巻いて自分でもわけがわからなくなった。


オレ『ならこの前のデートの約束は遊びだったことかよ?』


碧斗『そうかもね』


...もう耐えきれねぇわ


オレ 『あっそ。ならいいわ。今までありがと。ばいばい。』


碧斗『ばいばい』


オレ『こっちの身にもなってくれよ。』



既読だけついて何も返って来なかった。


好きなのはオレだけだったんだ。まだ好きでいたい。けど遊びとか言われたらもう絶縁したい。今まで理解できなかったけど、好きと嫌いが混ざるってこういうことなんだな。正反対なのにどうして混ざるんだろう。連絡消そうかな。

さようなら。


次の日の放課後

あー今日部活かー。碧斗がいるから行きたくねぇ..。顔見たくねぇな。ギリギリに部室に行こう。しばらく教室で自習してるか。


自習後

...あっぶね。部活が始まる2分前じゃん。オレのクラスは1階なのに部室3階だからかなり遠い。急がねぇと!オレは廊下を全力で走り階段を駆け上がる。息が切れるが遅れたら顧問に激怒されるから体力なんてどうだっていい。


キーンコーンカーンコーン


あ、部活の始まりのチャイムだ...!そして部室は目の前!ギリギリセーフだ!オレはチャイムの終わりより先に部室に入ることができ、顧問の叱責は避けることができた。


出席確認が終わり活動時間だ。オレが入っている部活は映画研究部という部活で映画を鑑賞したり映画を自分達で作ったりするんだ。今の活動は映画作成。オレと碧斗は動画編集係で2人で共同作業しなければならない。昨日喧嘩したのに共同作業とか気まず過ぎるだろう!どんな顔すればいいんだ?きっと冷え切った空気の中で活動するんだろうな…。ばいばい(意味深)とか言っちゃったし..。


「律、大丈夫?もう作成始まってるよ。」


「え!?あぁ、ごめん。」


なんでいつもどうり話しかけるかなー?あんなに言われたら普通気まずくて話しかけずらいってなるよな?反省してないわけ?


「律。ここはこういうカットにして主人公にフォーカスを当てたいんだけどいいかな?」


無視してやりたいけどもっとこじらせる訳にはいかないし他の部員もいるからここは大人(?)の対応をしよう。


「うん。いいと思うよ。」


「ありがとう。それでさ....」


それから碧斗が饒舌になり、オレは適当に相づちをして聞き流した。そこに笑顔という飾りはなかった。


電車にて

一人でいたいのに何故か一緒に帰ってしまった。最寄り駅が違うため、オレの方が先に電車から降りる。


「じゃ、また....。」


目を合わせないでぶっきらぼうに言った。


「また明日ね」


碧斗はオレに手を振っていたが返しはしなかった。

はぁ、なんであんな普通なの!?ちょっとは悪かったとか思わないの?せめて謝ってよ!心の底に溜まっていた感情が溢れ出して泣きそうになる。オレ落ち着け!ここは駅で公共の場だぞ?泣いたら恥だ!家に帰ったらメッセージ送って強制的に謝らせよう!そうしないと常に碧斗の件でモヤモヤして学校どころじゃなくなりそう…。


オレはとぼとぼ歩いて帰宅した。そして手を洗い、制服を脱いだら自分の部屋に引きこもった。

また連絡先追加してなんか送ろうかな…。


オレ『碧斗にとっては遊びでもオレは一生背負い続ける』


オレの好きな曲の歌詞をアレンジしたものだ。この言葉が響かない人なんていないだろう。コレで放置しよう。


するとすぐ携帯が震えた。碧斗からの返信だ。なになに…?


碧斗『うん』


は?たったこれだけ?オレはこんなに辛いのに、「うん」の2文字だけで済ませるとかオレのことを理解する気は全くないってこと?


オレ『オレ、本当に碧斗に裏切られてショックでさ、信じてたのに。嫌いになりそう。もう許せない…。』


碧斗『嫌いになってもいいよ。』


ぶっきらぼうに言い放つ碧斗が思い浮かんだ。

そこはごめんね、もう裏切ったりしないよ。って返してよ。理想とかけ離れ過ぎてどんどん憎悪が渦巻いてくる。でもこんなにオレを愛してくれた人を嫌いになんてなりたくないしなれないよ...。


オレ『でも好きでいたい。』


碧斗『好きでいてもいいよ。』


一体なんだっていうんだよ。どうしたらオレの言葉は碧斗の心に響くのかな。届くのかな。

オレはその後、君の心を揺さぶるためにヤケクソになりながら愛の心を綴った。だけど返ってくるのは気怠そうな相づちばかりだ。ずっと平行線でなにも変わらない。視界がぼやけていきこっちも嫌になってくる。最後にこれだけ送ろう。


オレ『君がいたからここまで生きてこれた。』


碧斗『え...?』


先程とは違う声色が聞こえてくる気がした。心が少し揺らいだのか..?視界のぼやけも消え、はっきりしてきた。


オレ『君がいなければオレはどうなっていたのかわからない。君はオレの希望だよ。』


これは心を動かすために大げさに言っているわけではない。心からの本当の想いだ。碧斗はオレの人生を変えてくれた。碧斗がいたからオレは今まで笑って日々を過ごすことができた。


碧斗『!?』


オレ『でも今は生きる希望を失っている。だから』


メッセージを送る時間間隔を少し空ける。そして


オレ『一緒に生きよう?リスタートしよ?』


既読がついた。どんな返信がくるのか気になって、鼓動が高鳴る。また前みたいに期待ハズレの言葉だったら...。こんなのもう嫌だよ..。オレは苦しいほど想ってるのに報われないなんて。もうあの頃には戻れないのかな..。リスタート出来ないのかな...。


碧斗『...そうだね。共に生きよう。リスタートしよう。』


オレ『...!これからもよろしくね。』


碧斗『よろしく。友達としてだけど。』


あ...。そっか。恋人としてリスタートは出来ないんだ。希望が完全に消えたようでまた視界が潤んできた。


碧斗『期待に答えられずごめんね。』


…!

その言葉を待ってたよ。雫は引っ込んで、心にのしかかった重い何かが一気に消え去った。言葉ひとつでこんなにも救われるんだ…。そういえばさっきまで感情的になりすぎてたかもな。オレも謝ろう。


オレ『オレの方こそ自分の考えを押し付けてごめん。碧斗が友達に戻る事を望んでいるなら友達になるよ。だけど』


碧斗『だけど…?』


オレ『絶対また好きにさせて、恋人としてリスタートしてみせるよ。』


碧斗『その時はまたよろしくね。』


オレ『それは期待してもいいって事か?』


そこにあの頃のオレはいなかった。

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