10話.[これまで通りね]
「ふぅ、成里は困った存在だ」
「あくまでいつも通りですよ?」
「まあ、結局玲美のことが好きだった、なんてことはなかったからよかったがな」
あくまで先輩といるときの私を見たいだけだからなあ。
もしそういうのがなかったらいま頃、離れているところだと思う。
さすがにずっと近くにいてもらえるような魅力がないから。
そういう点では先輩の方もいつかは……ということになってしまう。
だけどもう五年になるわけだから~みたいに楽観視する自分もいるのだ。
「だが、距離が近すぎないか?」
「いつもあんな感じですから」
最近になって急に変わったとかそういうことは一切ない。
純はあくまで純らしく私のところに来てくれているだけだ。
変わってしまったら調子が狂ってしまうから同じままでいてほしい。
こっちも先輩ばかりを優先しようとしないから、同じような感じで相手をさせてもらうからこれまで通りね。
「私は嫌だがな」
「そうなんですか?」
「これまでとは違うのだ、そんなの当たり前だろう。これまでは玲美が私のことを好きでいることなんて分かっていなかったから普通に対応できていたが、こうして付き合ってからは同じように対応できるわけがないだろう」
意外だ、元々ひとりでいた人だったという話だからどうでもいいとまではいかなくても気にしない人かと……。
でも、こちらとしてはその方が安心できるかもしれない。
多分興味をなくしたら一瞬だと思うから気をつけた方がいい。
さすがにこういう関係になってくると離れたがっていることを知ってはいそうですか、そう片付けることは簡単にはできないから。
「別に成里と一緒にいるのはいいのだ、だが、玲美も距離感に気をつけてほしい」
「分かりました」
「まあ、言ってしまえば私の相手もしてくれればそれでいい」
「喜んで相手をさせてもらいますよ」
「ああ、よろしく頼む」
ただ、先輩は別に私のことが好きというわけではないよね? と考えてしまった。
あくまで私が頼ったからであって、他の子がしていたとしても同じように感じていたわけだから調子に乗っていては駄目だ。
あくまで先輩の優しさだけが目立つ結果となっている。
「不満があったら遠慮なく言ってくださいね!」
「不満は先程言ったことだな」
「それなら大丈夫です」
あくまでこれからもずっと同じ距離感でいるだけだ。
これまでもずっとそうだったんだからできないわけがなかった。
また、純が変なことをしてこようとするわけがないから安心してほしかった。
88作品目 Nora @rianora_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます