第7話 魔王の社会見学(都市編)

教会を後にし、都市へと向かうことにした一同。


「魔王ちゃん、私に抵抗しなくなってきた?

 これいいよね?え、いいよね?」


少しは勇者のことを見直そうと思った我がバカだった・・・。


「ダメに決まってるでしょう。まったく・・・。」


聖女が呆れたように言う。


「てか手を出さねぇって約束したじゃねぇか。」


「魔王ちゃんが可愛すぎるのがいけないんですぅ~。」


「まぁ、可愛いのは認めるけどよ。」


聖女と魔王ちゃんが相変わらず手をつなぎ、その後ろに闘士、最後に勇者だ。


話をして歩いていると、いよいよ街らしくなってきた。


「これは・・・。」


「あら、魔王ちゃんは初めて?」


街に入ったのはいいものの、統一されていないというか、ありとあらゆる家が乱立している。


普通の家、石造りの家、気の家、レンガの家、お城みたいな家、窓を閉め切っている家、一つとして同じものがないくらいの勢いだ。


「まぁ、これも勇者の計らいでな?

 色んな人(女子、女性、メス)がいたほうがいいということで、どんな人や魔物で

 も共存してるんだわ。

 その結果、街がこんなになっちまった。」


街行く人を見ても、確かに人間だけでなくありとあらゆる種類の魔物、魔人、怪人、魔獣が行き来している。

遠くから馬に乗っている鎧の騎士が近づいてくる。


「お、おま!!!!」


おかしい。

我の2つ目のダンジョンを任せていた騎士がなぜ、こんなところに!!


「勇者様が見えたんで報告しようと思ったら魔王様じゃありませんか。」


口をパクパクしている魔王ちゃんに勇者が説明する。


「あぁ、いや、単純に私にやられるか、街を警備するかどっちがいい?

 って聞いたの。

 中身見たことないからもしかしたら女性かもしれないし・・・。

 デュフフフ・・・。」


「こやつは中身なんてn」


言い終わらないうちに聖女が魔王ちゃんの口をふさぐ。

闘士が魔王ちゃんに近づいて耳打ちする。


「そういう事実を知っちまうと、騎乗騎士が殺されかねねぇぞ・・・。」


「す、すまぬ・・・。」


「よし、着いた!!」


勇者が突然大声を出す。


「なんだ?この店は?」


「あら、この街で一番いい仕立て屋じゃない。」


「あぁ、魔王ちゃん、どんまい。」


闘士が憐みの目を向ける。


よく分からない魔王ちゃんは勇者と聖女と闘士とともに店の中に入る。


カランカランと心地よくベルが鳴る。


「あら、いらっしゃい。」


中にいたのはざ、母性の塊と言ってもいい見た目、顔付、背の高さの女性。


「ママ~!!!!」


「はいはい、いつも甘えん坊さんね。」


真っ先に抱き着く勇者を当たり前に抱きしめる。


「親子なのか!?」


「あら、可愛い子ね。

 違うわよ、親子じゃないわよ。」


「おい、もうやめてあげろよ、魔王ちゃんが宇宙顔になってんぞ。」


「それはそうと、何しに来たの?」


「ママにこの子の洋服作ってほしくて。」


「あら、そういうことね。

 じゃぁ、さっそく採寸するわね。」


「あー、アタシは外に出てるわ。」


「私も外にいますね。」


ぽけーとしている魔王ちゃんの上からたくさんの蜘蛛がわらわらと降りてくる。


「ぬ、我の体に何をする!!」


「魔王ちゃん、大丈夫、採寸だよ。」


「そう、この子たちが採寸兼、糸を作ってくれるのよ。

 それを私が洋服にするの。」


「ほう・・・?」


よく分からなくなっている魔王ちゃんだったが、採寸はすぐに終わり、宿を探すことにした。


「1週間かぁ・・・楽しみだなぁ・・・。」


「変なデザインにしてんじゃねぇだろうなぁ・・・。」


「そこだけが心配ですね・・・。」


「なんで私の信用0なのさ!!!!」


「そりゃぁ・・・」


「ねぇ・・・。」


グゥゥゥ。


3人が魔王ちゃんを見つめる。


「・・・。 わ、我のお腹の音では」


グゥゥー。


「何か食べに行こうか。」


何か美味しい食べ物屋はないかと一同は向かう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る