第4話 ダンジョン再建(自分が攻略できるとは言ってない)

くそ・・・くそ!!!!!


壊れたダンジョンの最深部で苛立ちを隠すように歩き回ってしまう。

よりにもよって・・・この我が敵に泣きついてしまった・・・。


「誰か!!誰か!!」


「はい、ここに。」


我々魔物や魔人などは敵にやられても一定期間すればまたこの世界に戻ってくることができる。

だが、それぞれのランクによって魔の世界から戻ってこれる時間が違う。

高くなればなるほど時間がかかる。

魔王ランクになるとそれこそ千年とかかかってしまう。


「おぉ!!お前は生き残っていたか!!」


「恥ずかしながら生き残ることが先決かと思い逃げました。」


今目の前にいる部下は、この世界独特の液状金属が意思を持ったものだが、見た目、質感など瞬時に変えることができる。


「よいよい、生き残っているだけで儲け物だ!!!!」


「そう言っていただけると幸いです。して、ご用件は?」


「今現状、我らの戦力は?」


「・・・魔王様以外には一切言うことを聞かない魔物が10匹ほど。

 あとの自我を持った高ランク帯は人間に降伏したのと、勇者にやられたのと、魔界

 に逃げ帰ったので全てですね。」


思わず親指を口にくわえてしまう。


「ぐぬぬ・・・。」


どうすればいいかと考えると妙案が浮かぶ。


「・・・トラップマスターは健在か?」


「ま、まさか奴に再建を任せるんですか!?」


我ながら天才だ。

思わず笑みがこぼれる。


「もう奴しかおるまい!!

 我の魔物たちは待つことが苦手でダンジョンを破壊しかねんからな・・・。」


「だが、お言葉ですが魔王様。

 トラップマスターに再建を任せると魔王様が罠に引っか」


「はよ奴を呼べ!!!」


「・・・は!!」


ふふふ、あいつにダンジョン再建を任せれば勇者をきっと返り討ちにできる・・・。

くふふふふ・・・・。



魔王に命じられ地上に住んでいるトラップマスターが住んでる場所に向かう。

だが、魔王様は大丈夫だろうか。

こういってはなんだが、いつも罠にかかった獲物を見に行く!!

と、陽気にダンジョン上階に向かうのはいいものの、いつも途中の罠に引っかかって泣き出す始末・・・。

だが、魔王様の命だ。

逆らうわけにはいかない。


「お、あったあった。」


遠目に湖畔に建てられた一軒家を見つける。

だが、問題はここからだ。


「トラップサーチ。」


私とて上級魔物だ。

罠を見破る魔法くらい使えるが・・・。


結果は異状なし。


「やはり罠に関しては凄まじいな・・・。」


こんなの罠があるに決まっている。

罠を仕掛けていないと誤判断させるフェイクスキルにして、トラップマスターのユニークスキル。

他の奴や人間が所持している話も噂もさも聞かない。


何が起こるか分からないため、慎重に上空から接近していく。

だが、こんなに警戒をしていても、意味は無かった。

うなじ部分に何かが刺さる感覚があり、意識が無くなってしまう。


目が覚めるとトラップマスターの顔が視界一杯に入り込む。


「・・・相変わらず(物理的)距離感が掴めてないな。」


「あ、新しい、わ、わ、罠に引っかかったね。」


顔が近いと言っても常にオーバーサイズの服と仮面をしているため、性別の区別がつかない。

まぁ、俺みたいに性別が無いやつもいるが。


「あぁ、まさか背後からだとはな。」


「あ、あ、あ、あれは新作。特定の地点を踏むと、は、は、発動するんだ。」


文章の音に含まれる母音が「あ」だと上手く言葉を発せない時がある。


「その座標はどうやって・・・いや、いい。

 種明かしは罠師としてやってはいけないからな。」


「君が来るなんて、珍しいね。な、な、、何かあったの?」


「あぁ、魔王様がお呼びだ。」


ベッドから起き上がり、壁一面のありとあらゆる罠を見渡す。

相変わらずため息が出るほどものすごい技術力と発想力だ。


「え、でも、わ、わ、わ、私が罠を仕掛けたら、

 まま、ま、魔王様が引っかかるんじゃ・・・。」


肩をすくめる。


「あぁ、全くの同意見だ。

 だが、それを申す前にもう決めてしまったらしい。

 我々の魔王様はもうすっかり乗り気だ。」


「そう・・・。

 た、たた、た頼られるのは嫌いじゃない。」


「何か持っていくものは?」


「勇者相手だと・・・特に必要ないかな・・・。」


「物理的に仕掛けないのか?」


「だ、だって勇者にはよくわからないけど、かかか、加護のスキルが付いてる。

 物理的なわわ、わ、罠を仕掛けたって無駄。」


新作を披露したかったのか、明らかに落ち込む様子を見せる。


「そうか、なら向かうぞ。」


「うん。」


「門よ開け。」


魔王様の元への直通のワープゲート。

魔王様が許可をしてくださったから、こうしてすぐに戻ることができた。


「魔王様、お連れしました。」


ダンジョンは各階の床下はさらに強力な結界が施されているのが分かる。

さらに勇者に破壊された部分もほぼほぼ補修が終わっていた。


「おぉ!!待っておったぞ!!」


たったったと笑顔で駆けてけてくる魔王様の様子を見るとまだまだ子供だなぁと思わざるを得ない。


「お久しぶりです。ま、まま、魔王様。」


「うむ、うむ。よく来てくれた!!

 今、我のダンジョンは見ての通りひどい有様だ。

 すぐに直してくれ。

 我は一切口出しせん。自由に作ってくれて構わん。」


「あ、あ、あの魔王様。」


「なんだ?」


「ま、前作った時はま、ま、ま、魔王様が引っかかりましたがその点はいかがなさい

 ますか?」


魔王様の顔が泣き顔に代わる。

あ、でも、まだ耐えてる。


「そ、それは・・・その・・・だな・・・。」


「あー、俺はこれで失礼しますね。」


魔王様が下を向いてしまった。

あまりこういった所を見られたくはないだろう。

退散するに限る。


「まま、魔王様?」


「うぅ・・・。」


魔王様が顔を上げてくださらない。

でも、トラップダンジョンに作り替える以上、どうしても考慮しておかないといけないことだ。


「わ、我にだけ分かるように出来はせんか?」


小声で頼まれる。


「・・・勇者にばれる可能性があ、ああ、あ、ありますがいいですか?」


「うむ・・・。」


下を向いて手遊びをしている。

よっぽどプライドをへし折ってしまったのか・・・。

反省しなくては・・・。


「では、わわ、罠を仕掛けていきますね。」


外組が完成しているダンジョンの各階に罠を仕掛けていく。

当たり前の罠じゃダメだ。

一歩先のことを考えて罠を仕掛ける。


全ての階に罠を仕掛け終え、報告する。


「ままま、ま、魔王様。終わりました。」


「うむ!!して・・・あの件は・・・?」


スイッチを差し出す。


「これを押せばわわ、わ、罠が光ります。」


それを受け取り何やら新しいバッグに取り付ける。


「ま、ま、ま、魔王様、そのバッグは?」


赤くて四角いものを背負っている。


「これか?ふっふっふ・・・。

 これはな、中にたくさん物を入れられる上に、ここに引っ掛けられる金具もついて

 おる。

 今もらったこれをここにつければ・・・。」


「おお、可愛らしいですね!!」


「であろう!!であろう!!!!

 しかもすぐにこれを引っ張れて、両手も自由!!!!」


「素晴らしいです!!!!」


こうして、通常ダンジョンからトラップダンジョンに変わり、

魔王は防犯ブザーを完備したランドセルを背負う女子小学生へと変貌を遂げた。


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