第2話 魔王(慢心)
「魔王様!!魔王様!!」
ダンジョン上階の魔物が慌てた様子で駆け寄ってくる。
見たところ傷も深い。
「どうした?」
威厳にまみれた声で部下に質問をする。
魔王たるものこうでなくては。
「いよいよ勇者が攻め込んできました!!
すでに序盤のダンジョンは攻略され、中階層も持たないかと!!」
まぁ、このダンジョンしか残っていないことを考えると他のダンジョンは制圧されたと考えるのが妥当だろう。
「仕方ない。こやつを出向かせるとしよう。」
玉座に座る魔王の後ろから突如現れた魔人。
浅黒い体に浅黒い羽根。
目は真紅で憎悪と殺意に満ちている。
「ま、まさかそいつを勇者にぶつけるんですか!?!?」
上級魔族の部下ですら恐怖で立てなくなるほどの魔人。
そう、最上級魔人。
「ふん、俺様を呼ぶたぁかなりピンチみたいだなぁ?魔王よ。」
こいつだけはため口で話すのを許可している。
「仕方なかろう。勇者がいよいよ攻めてきたからな。」
「ふん、なら待っとけ。数秒で片を付けてやる。」
そういうと最上級魔人は目に見えぬ速さで上階に向かっていった。
ふん、このダンジョンをこの速さで移動するとはさすが勇者といった所か。
だが、この俺様が向かう以上、そううまくはいくかな?
最上級魔人は勇者に会うまでにそんなことを考えていた。
「あ、下から何か来ますよ?」
「え!?ほんと!?ロリかな!?!?!?!?!?!?」
「んなわけねぇだろ、ここまで来てもあんた風に言やぁ、オスばっかじゃねぇか。」
かなり強めに殴られる。
「ほんっと相変わらず容赦ないね!?」
ふざけあっていると、下の床から何かが突き破ってきた。
「ロリ!?」
「いや、驚いた時の発声がそれってどうなのよ。」
「普通に魔人ですね。」
あぁ?なんだこいつらか?
褐色女の方はまだ見るからに強そうだが・・・。
あぁ、もう一人は聖女とやらか?
やたらと魔力がたけぇ。
だがもう1人は?
「ロリじゃない・・・。」
は?
うなだれやがった・・・。
「いや、そりゃ上手くいくわけないだろ。」
おいおいおい、俺様を目の前にして何の冗談だ?
「まぁ、この人はいつも期待してますからね・・・。」
「おい、俺様を無視してんじゃねぇよ。」
ちとイラついちまうぜ。
「あぁ・・・?」
な、なんだこの凄味は。
何も感じない奴だと思っていたが・・・。
まさか・・・。
「あーあ、怒っちゃった・・・。」
「まぁ、うちらの勇者様はすぐこうなっちまうからな。」
な、こいつが勇者だと?
冴えなさすぎだろ・・・。
「ちぃ!!!!」
魔弾を放つ。
勇者に直撃し、爆発と煙が立ち込める。
並大抵の奴じゃ持ちこたえられない攻撃だが・・・。
「なんでロリじゃないのよ・・・。」
効いちゃいねぇ・・・。
「眷属召喚!!」
手下どもを全員呼び集めたが今度こそどうだ?
「ロリが・・・いないじゃん!!!!!」
な・・・声だけで全員消し飛んだだと・・・?
こんなバカな・・・。
これはだめかもしれんな・・・。
「ふふん、もうそろそろ勇者を倒したころか?」
階上から激しい戦闘音が聞こえてくる。
勇者がコテンパンにされているのが目に浮かぶ。
ふっふっふ・・・。
いい気味だ。
我が父上が先代勇者に敗れた時から人間を支配下に加えるとこの胸に誓ったのだ。
彼なら間違いなく倒してくれるはずだ。
突然の轟音に思考が吹き飛ぶ。
上の階の床下に張ってあった結界毎ぶち破ってきた・・・。
その正体は・・・。
最上級魔人を殴り飛ばしている30代女性。
あまりの恐怖に腰が抜けてその場に座り込んでしまう。
「あれ、こんなところに魔族のガキじゃねぇか。」
後をついてきた褐色女が言葉を発する。
・・・ガキではない。
誇らしい魔王の血筋を引き継いだ正統なる魔王だ。
「あらあら、ほんとですね。でもこれってまずくない?」
「あぁ、確かにな。」
恐怖心を必死に押さえつけ、2人に向けて魔力を放とうとする。
「おい、ガキ!!あぶねぇ!!」
褐色女が叫ぶ。
何?
危ないだと?
ふん、この魔王に勝てるものなど・・・。
後ろからすさまじい気配を感じる。
恐る恐る振り返るとそこには比べ物にならないほどの力を持った人間が立っていた。
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